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ライトブラウンで統一された部屋は、ジュノンそのものの様で、父の匂いのするこの部屋を訪れる度に、アノンは安心感に包まれる。
穏やかな空気を醸し出すジュノンは、その微笑みを崩す事は滅多に無い。
巻き戻り前の時に、アノンはジュノンの怒声を聞いたのは一度切りだった。
それが今日だ。
そして今日一度だけではなく、部屋越しではあるけれど何度も聞いた。
ジュノンを怒らせる事ができるミネリタは、ある意味貴重な人物なのだとアノンは思える。決していい意味ではない。
そんなミネリタの巻き戻り前の所業を、アノンから聞いたジュノンは今頭を抱えていた。
俯いたままの父が、どう受け止めたのかアノンには分からない。娘の精神が普通じゃないと、おかしくなったと思っているのだろうか?
アノンは表情が見えないジュノンをじっと見つめていた。
そしてもう一人項垂れているのはアントンだった。
父と一緒に話を聞いてもらっていたので、彼もまたどう思ったのかアノンは気になる。
静寂の中、ようやく口を開いたジュノンは、立ち上がり、対面に座っていたアノンの横に座り直し、アノンを抱きしめながら「父を許してくれ」と懇願した。
「⋯⋯お父様?」
直ぐに抱きしめられた為、またもやアノンにはジュノンの表情が見えない。だがジュノンの体が震えていた為、アノンは父が泣いているのだと分かった。
「私が、事前にちゃんと道筋を立てていなかったばっかりに、アノンに苦労させたなんて!本当に不甲斐ない父ですまない」
アノンはその言葉を聞いて、ジュノンが信じてくれたのだと理解して、ホッとすると同時に胸にグッと何かが込み上げてきて、涙がポロポロと溢れた。
そしてその涙は止まらなかった。
ずっとずっと我慢と労働を強いられた、巻き戻り前の忙しい日々を思い出す。
愛した夫と子供にも見捨てられ、誰にも看取られないまま、最期を迎えたあの時。
ようやく死ねると思ってホッともしたが、悔しい気持ちもやはりあった。
いつもいつも誰かの為に動いていた。
領民のため、使用人のため、母の為、そして何故かマチルダの為。
いつもいつもいつもいつも⋯。
もう嫌だ!
いつもアノンは叫びたかった。
その辛い日々を支えてくれ、愛をくれたはずのライトもまた、最期の時には側に居なかった。
誰もいないから、恨み言すら口に出来なくて、アノンはその思いが、父に抱きしめられた安堵からなのか、堰を切ったようにあとからあとから溢れる。
泣きじゃくりながら辛かった日々を話すアノンに、ジュノンは彼女の背中を、トントンと規則正しくリズムを刻む。
巻き戻り前の事を、はじめに話した時は、冷静に語ったアノンが、今度は泣きながら辛い日々を語るのを、アントンもユナも胸が詰まされて二人も一緒に泣いていた。
そして、その日を境にアノンの運命は、巻き戻る前とは全く違う人生へと進んでいく。




