表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アノンの涙  作者: maruko


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/50

15

 ライトブラウンで統一された部屋は、ジュノンそのものの様で、父の匂いのするこの部屋を訪れる度に、アノンは安心感に包まれる。

 穏やかな空気を醸し出すジュノンは、その微笑みを崩す事は滅多に無い。

 巻き戻り前の時に、アノンはジュノンの怒声を聞いたのは一度切りだった。

 それが今日だ。


 そして今日一度だけではなく、部屋越しではあるけれど何度も聞いた。


 ジュノンを怒らせる事ができるミネリタは、ある意味貴重な人物なのだとアノンは思える。決していい意味ではない。


 そんなミネリタの巻き戻り前の所業を、アノンから聞いたジュノンは今頭を抱えていた。


 俯いたままの父が、どう受け止めたのかアノンには分からない。娘の精神が普通じゃないと、おかしくなったと思っているのだろうか?


 アノンは表情が見えないジュノンをじっと見つめていた。


 そしてもう一人項垂れているのはアントンだった。

 父と一緒に話を聞いてもらっていたので、彼もまたどう思ったのかアノンは気になる。


 静寂の中、ようやく口を開いたジュノンは、立ち上がり、対面に座っていたアノンの横に座り直し、アノンを抱きしめながら「父を許してくれ」と懇願した。


「⋯⋯お父様?」


 直ぐに抱きしめられた為、またもやアノンにはジュノンの表情が見えない。だがジュノンの体が震えていた為、アノンは父が泣いているのだと分かった。


「私が、事前にちゃんと道筋を立てていなかったばっかりに、アノンに苦労させたなんて!本当に不甲斐ない父ですまない」


 アノンはその言葉を聞いて、ジュノンが信じてくれたのだと理解して、ホッとすると同時に胸にグッと何かが込み上げてきて、涙がポロポロと溢れた。


 そしてその涙は止まらなかった。


 ずっとずっと我慢と労働を強いられた、巻き戻り前の忙しい日々を思い出す。

 愛した夫と子供にも見捨てられ、誰にも看取られないまま、最期を迎えたあの時。

 ようやく死ねると思ってホッともしたが、悔しい気持ちもやはりあった。


 いつもいつも誰かの為に動いていた。

 領民のため、使用人のため、母の為、そして何故かマチルダの為。


 いつもいつもいつもいつも⋯。


 もう嫌だ!

 いつもアノンは叫びたかった。


 その辛い日々を支えてくれ、愛をくれたはずのライトもまた、最期の時には側に居なかった。

 誰もいないから、恨み言すら口に出来なくて、アノンはその思いが、父に抱きしめられた安堵からなのか、堰を切ったようにあとからあとから溢れる。


 泣きじゃくりながら辛かった日々を話すアノンに、ジュノンは彼女の背中を、トントンと規則正しくリズムを刻む。


 巻き戻り前の事を、はじめに話した時は、冷静に語ったアノンが、今度は泣きながら辛い日々を語るのを、アントンもユナも胸が詰まされて二人も一緒に泣いていた。


 そして、その日を境にアノンの運命は、巻き戻る前とは全く違う人生へと進んでいく。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ