アニメーター失踪届け(中)
ダンジョンとは長年の研究で空間型のモンスターであることが分かった。
その生態は体内で死んだ生き物や物質の魔力を消化して自分自身を広げることにある。
ダンジョンの中は生き物にとって理想的な環境が用意されている。
つまり体内に生態系を作りその循環で成長するという事だ。
そしてダンジョンはより効率的に生態系のサイクルを早める為に人間を利用するようになった。
その為に獲得した特性が”価値の収集と複製”である。
ダンジョンは魔力を喰らう。魔力はこの世界では元素の一つの様なものなので時間と共の全てはダンジョンに消化される。
例えばとある戦士がダンジョンの中で死んだとする。
その戦士の死体は装備品と一緒にダンジョンに取り込まれる。
しばらくするとダンジョンはそのうちの装備品を自分の体内の何処かに2つ配置するのだ。
それはモンスターの素材でも、金貨でも、鎧でも、ほぼ何でも複製が可能な様であった。
ダンジョンが価値とする物に関しては未だに諸説あるがとにかく、ダンジョン探索は金になる。
宝を求めて入ってくる人間とダンジョンの中のモンスターを争わせること。
それがダンジョンの戦略なのだ。
車を走らせてからしばらく経ち太陽が傾き始めた頃、僕達は郊外にあるダンジョンについた。
駐車場に車を止めて受付へと向かう。
「大人二人です」
「それではギルド証の提示をお願いいたします」
僕は財布からギルド証を取り出して提示した。
「ありがとうございます。それでは良い冒険を」
ダンジョンは基本的に国が管理している。
ここの場合は王都の騎士団のどこかが管理していたはずだ。
基本的にはそれぞれのギルドで発行されたギルド証で身元を確認して中へと入る。
別にダンジョンへ入ることに対して許可が必要な訳ではないのだが、大量の行方不明者を出さない為と犯罪への利用を防ぐ為の措置からそういう法律が出来た。
「本当にダンジョンに入るのか?俺今丸腰なんだぞ!?」
着の身着のまま連れ出されたダクセンだったが彼に拒否権はない。
「とりあえずここで家賃分は回収しますから、しのごの言わないでください」
渋々とダンジョンの中に入る。
1階は大きな広間となっており、賑わっていた。
元の世界で云うところのショッピングセンターみたいなイメージだろうか。
高い天井に壁沿いには様々な店が並んでいる。
大抵はダンジョン探索に必要な物を売っている店だが、中には軽食屋や果てはマッサージ店。
鑑定屋なんかもある。
「おい!シン坊じゃねーか!久しぶりだな!!」
豪快な声と共にやってきたのは、立派な白ひげを蓄えた年寄りのドワーフだった。
「お久しぶりですダタルク卿。今日はこちらにいらしてたんですね」
「まぁ散歩みたいなもんだ!そんで後ろのお前は・・・」
「今一緒に仕事をしているダクセンさんです。丁度良かった、このフロアで前衛を募集している新人っていますか?」
ダタルク卿は数十年前の魔王軍との戦争で北の山岳ドワーフを率いていた実力者である。
既に現役から退いたと聞いていたが、趣味で深くないダンジョンで初心者の指導をしているみたいだった。
「あぁ?そーだな・・・。あそこの魔法使いと僧侶の二人組みとかだろう。なんだシン坊新人の面倒でも見るために来たのか?」
新人向けの装備屋で慣れない手つきでカバンの中身をかき混ぜている二人を親指で指しながら質問してきた。
「僕じゃなくて、引率してくれるのはこっちのダクセンさんの方です」
「オォ俺が!?」
それまで隣で固まっていたダクセンは急に話を振られて驚きの声を上げた。
「そうかそうか。なかなか逞ましい兄ちゃんだ。あんたなら安心だな」
バンバンとダクセンの背中を叩くがダタルク卿は力加減が苦手な人なのでダクセンはそのまま咳き込んでいた。
その間に僕は二人の冒険者の元へ移動した。
「どうも初めまして。僕はこういう物なのですが・・・」
流れるような所作で名刺ケースを取り出して、二人に差し出した。
人は流麗な所作で差し出された物を拒む事は出来ないのでそれぞれに名刺を受けとってしまっていた。
「あ、あ、ギルドの人ですか・・・!!ガリューってあのガリューですか!?」
「何?聞いた事ないわね?有名なギルドなの?ヴァンリわかんない」
「小さな頃お前も好きだったじゃん!魔女見習いルティ!」
「なっ!バカネーク!外でそんな事言わないでよ!」
確かに魔女見習いルティは名作だ。と僕は心の中で相槌を打った。
ひょんな事から大魔法使いの見習いとなった少女のルティが仲間達と成長していく物語だ。
「知ってくれているみたいで良かった。ちょっと二人に相談があって声を掛けたんだ。
見たところ魔法使いと僧侶だよね?良かったら知り合いの前衛を一緒に連れて行って欲しいんだ」
「確かに前衛は欲しいけど・・・」
ネークと呼ばれていた僧侶の青年は隣でふくれっ面の魔法使いを見た。
「ヴァンリはどっちでもいいわ!ネークが決めなさい!」
「ちなみにその人って女の人ですか?」
ネークの質問にそっぽを向いたままだったヴァンリだったが、
「いや、普通の中年男性だよ」
僕の返答に何処か安心した様子だった。
「それじゃあ3人とも良い冒険を!それとダクセンさん頼みますからね」
そうして二人の初々しい冒険者と一人の債務者は下の階層へと旅立った。




