白い記憶(茉莉花の姫)
めっちゃ遅くなりましたが更新しました!!!これからもこれぐらいの投稿ペースになっちゃうかも、、、
ブクマと評価してくださった皆様は神様です!!!
それは突然起きた。
大きな音。ドアが吹っ飛んだ音。叫び声。いや怒鳴り声?
同時に現れたのは、黒髪の少女だった。
髪はすごく長い。だけどかなり上の方で結ばれていて短くされていた。また靴はガラスの靴……などではなくかなり履きやすそうな印象を持った……そんな靴だった。
目付きはかなり鋭く……身長的には同じ年かその周りだとは思うけれどその目のせいでどうしても年上という印象を持ってしまう。
でも、それらすべてに目を瞑れば……いや瞑らなくても彼女はとても魅力的な女性だった。
ゲシッ
痛い!!??
後ろを見る。凛が黒髪の少女よりも鋭い目を僕に送っていた……いや怖い怖い!!
僕が身振り手振りで自分の身の潔白を証明しようと思ったとき。
『繧上◆縺励r縺翫>縺ヲ縺励#縺ィ縺ェ繧薙※險ア縺輔↑縺?o繧』
おそらく共通語だろう。僕には理解できない言葉の羅列が彼女の口から発せられる。
もちろん僕には彼女の言葉の意味なんて全く理解できずにその場にいるだけだった。突然入ってきた、しかも大慌てで。このことから何か急ぎの用事があるんじゃないかと僕は予想したけれど……
『はぁ……いつも執務の邪魔はするなと言っているだろう。セシリー』
どうやら彼女の名前はセシリーというらしい。
目付きこそ鋭いけれど、その黒い目には光が詰まっていて彼女の意志の強さを表現しているようだった。
『縺ェ繧薙〒邇倶セッ隱槭〒縺励c縺ケ繧九o縺托シ』
訝しげな声を上げる。内容はわからないけれど、おそらく僕たちのこともしくは王侯語で話していることのどちらかに対して質問したんじゃないんだろうか。
『昨日、大変な仕事があるといっただろ……まあいい、どちらにしろセシリーも全くの無関係ってことじゃない……』
ちらりとアルタイルが僕のことを見つめる。
……これは僕の考えすぎかもしれないけれど、その時のアルタイルの視線は僕たちみんなにではなく僕単体に向けられているようだった。
『縺セ縺」縺ヲ……譏ィ譌・縺ッ縺ェ縺励※縺溘%縺ィ縺」縺ヲ、霆「遘サ縺励c縺ョ縺薙→繧医??!!邇倶セッ隱槭〒隧ア縺励※繧九?繧、縺昴l縺檎炊逕ア縺ェ縺ョ?』
セシリーの言葉に対して、そうだな。とアルタイルが相槌を打つ。
……それにしても、表情がころころ変わる子だと僕は考えていた。王侯語ではないゆえに何について話しているのかは憶測の域をすぎないけれど、その表情から明らかに何かに興奮していることはわかった。
身長も自分たちとあまり変わらないからだろうか。僕は正直セシリーが羨ましかった。
僕にもあれぐらいの表情や感情があれば……
『とにかく、この場には我々の希望の剣となる御方たちもいるのだ。もう少し淑女らしい行動をとれ。あと、王侯語で話を進めるぞ』
『蜈ア騾夊ェ槭〒縺ッ縺、縺溘o繧峨↑縺???……菴輔°遘倥∩縺、縺ョ莨夊ゥア縺ァ繧り。後≧縺ョ縺九@繧会シ?あーあー……王侯語なんて久しぶりに使うわね。これでいいかしら?』
セシリーがこちらを向く。彼女の目に映った僕たちの中で唯一反応を示したのは僕だけだった。おそらく僕以外のみんなは言語が変わったなんてまったくわからないだろう。
そんな僕たちの表情を見て何かを察したのか、セシリーがアルタイルに何か質問していた。
『あぁ、その通りだ。真ん中にいる黒髪の少年……瞬にだけ王侯語が通じる。だが、なぜか共通語は通じないし、瞬以外は王侯語もわからないようだ』
それを聞いたと同時にこちらをばっと向き直すセシリー。その目はキラキラと輝いていて、その圧力に負けた僕は気づけば一歩後ずさっていた。
『異世界から呼ばれた人間はこちらの言語なんて全く通じないって聞いてたのに、あなただけは王侯語が通じるなんて……あなたってもしかして本当に神の遣い?』
その言葉に流石に苦笑いしてしまう。
僕が神の遣い?もし僕が本当に神の遣いだったら、そんな僕を殺そうとした奴や僕と付き合っている女性は一体何者ということになるのだろうか。
そうやって考えている僕の顔を彼女は素直な瞳で覗き込んでいた。
スナオ。ジュンジョウ。ムク。
ウラヤマシイ。ボクニモソンナカンジョウガホシカッタ。
汚い感情の氾濫。波が波がせり上がる。
この波は飲み込めない。飲み込もうとしてもがいて……息を吐く。
目の前の少女の視線に気付く。純粋無垢な瞳が僕を貫く。
胸まで出た吐瀉物を飲み込み抑える。
そして気付く。
僕という存在の薄さに感情の薄さに気づいてしまう。
飲み込んだ吐瀉物という名の感情が僕という空の容器に積もって……虚しく消える。
何もない。僕の中身は空っぽだ。
―――純粋?
そういう見方もできるだろう。純粋で無垢で何も知らない、穢れなき天使。
だが僕は違う。何にもないのだ。
例えば目の前にいる少女。彼女は純粋だけれど、何も持っていないわけではないだろう。素直な子だからこそ、よく怒りよく泣くはずだ。何も持たない僕とは違うはずだ。
今まで……
凛の熱い情熱を受けたし、
愛斗の憎悪を浴びたし、
悠太郎の底の知れなさをその目に見た。
そして……セシリーの朗らかな、そしてどこか儚い顔を見た。
そんな不安定で脆い人間として当たり前の感情を見続けた僕だからこそわかる。
僕には感情がない。
僕という存在は、どんな人間よりも薄っぺらい存在なのだ。
悲しみはない。ただ事実を確認しただけなのだから。
僕は生きていて生きていないのだ。




