白い記憶(日常と非日常)
めっっちゃくちゃ久しぶりに投稿しましたね……!
1年ぶりですよ!全く!!
この小説自体を諦めたり忘れていたわけではございませんので!しっかり!最後まで!書きます!
この作品を思いついた時はまだ中学2年生だったのに今では高校2年生ですよw
時の流れは早いものです。
「瞬」
背中から声をかけられる。
聞きなれた日本語。聞きなれた声。聞き覚えのあるその声の方向に僕は振り返る。
「君は空っぽじゃない」
断言。
うじうじ悩んでいた僕に悠太郎は喝を入れるように鋭い声でそう言った。
あまりにも力強いその言葉は理屈なんてないのにどこか納得してしまいそうになる力があった。
まるで……まるで、僕の心の内を知られているかのように。
僕の心の毒を取り除こうとしているように。…
事実、僕の中の何かがドロリと溶ける。
だけどそれよりさらに奥、僕の心の奥底はまだそれを否定し続けていた。
「空っぽな人間なんて存在しない。瞬には瞬なりの考えがあって、迷いがあって、行動しているじゃないか」
違う。違うんだ。そんな問題じゃないんだ。
「僕には感情がないんだ」
言わないはずだった。隠しておきたかったはずだった。けど僕はいつの間にか反論していた。
自分自身がその言葉を信じたくないがあまりに。僕の根底が覆る恐怖に耐えきれなくなって。
小学生の体に意識が追いつかなくて。
ぽちゃん…………。
擬音通りの音が床を跳ねる。
文字通り床が呻く。うねる。嘲笑う。飲み込む。
ーー床に波紋が広がる。
音の正体は…水、いや涙。
涙は悠太郎の頬を伝ってまた1滴床が飲み込んだ。
瞬間。また床が笑いだす。
いや錯覚だ。違う。いや違わない。床は笑ってはいない。ただ床が動いているのだ。
おそらくそれも間違っているのかもしれない。動揺している僕と違ってみんなは平然としていた。
「綺麗」
挙句の果てには凛はその涙を綺麗と言っていた。
ーー綺麗?
悠太郎はまた泣いていた。ただ目から溢れた雫は宝石のように美しかった。水色……それよりもさらに透き通った綺麗なパステルブルー。
そんな宝石が溢れては重力に従って床が飲み込んでいた。
「動揺しているじゃないか瞬くん。君は正しく感情を持った人間なんだよ」
そう微笑んだ悠太郎の姿は泣いていることもあり小学生にはとても見えなかった。
『お話は終わったかしら?瞬様?』
明るく朗らかに彼女は会話に入ってくる。
王女様ということで相手の心理状態やそういったものには詳しいはずだ(そうじゃなきゃ国の王女なんてやってけないだろう)
でも彼女は僕の弱点とも言える部分をすぐに見抜いて攻撃してきた……僕はこの王女になんとも言えぬ恐怖を感じてしまった。
だから僕は何事もないように振る舞う。
『……申し訳ございません。この国の王女様ともあろう方の質問を無視してしまいましたね……自己紹介と同時にその質問も答えましょうか、私の名前は清宮 瞬。先ほど質問されましたが自分自身は神の使いでもなんでもなくただの一般人……言っても転生者でございます』
1度場をリセットするためにも自分の自己紹介を行う。先程の崩れていた僕と違って一瞬で物腰が柔らかくなった僕が現れたことにさすがの王女様とやらも驚きに目を見張る。どうやら僕の予想は正しかったようだ。
『お兄様……』
小さい声でセシリーがなにか呟くが、その声が僕に届くことはなかった。
静かな空間ができる。誰も口を開かない、そんな一瞬の隙間ができる。
『妨害が1度入ってしまったが、それではゆっくりと会議を行える場を設けるとしよう』
話はまた戻り、セシリーが来襲する直前の会話に戻る。セシリーの件もあり僕は更に疲れた気分になっていた。そろそろ腰を下ろせる場所に行きたいとも思っていたので話が戻ってきたことに安堵を感じていた。
『ユダ』
アルタイルが誰かの名前を呼ぶ。それに反応したのは横の男……僕が話し始めて最初に反応した2人のうちの一人だった。
『瞬は最初に見抜いていたようだが、彼は俺が認める有能な奴だ……4人を勇者様専用の部屋へ、しばらく時間が経ったら俺の部屋へ招き入れてやってくれ。俺も少し頭を整理してくる』
アルタイルはそう言うと、あとはユダに場を任せる。周りの人達にも早く持ち場に戻れと周りに命令する姿は本当に王の風格を帯びていて……とアルタイルがこちらを見る。
『しばらく休憩してもらって構わない。疲れているのであれば日を跨いでもらっても構わない。みんなで相談したいこともあるだろうからな』
そう言って去った王の後ろ姿を最後まで見届けて……場にもう一度静寂が訪れて、しばらくして周りの人達もアルタイルの出た扉から出て行った。
『瞬』
激動する周りの流れについていけずその場に留まっていた僕達の耳に太く低い声が響いた。
先程アルタイルが言っていたユダという男は……非常に大きかった。
僕達からすれば首が曲がるほどに上を見なければならないぐらいには。
そんなでかい存在が唐突に目の前まで接近してきたことに僕含めみんなの思考がフリーズする。当たり前だ。自分の身長の2倍はあろうかと言うほどの巨体の厳つい顔をした男性に話しかけられるのだ。普通であれば意識すら持つか危うい。
『……そんなに怯えられると流石に傷つく』
静かな重みのある言葉、さっきと同じ人間が発した声なのに明確にそこには「傷ついた」と言わんばかりの感情が含められていて、僕は吹き出してしまった。
唐突に吹き出した僕に彼……ユダは少しムッとした顔になっていた。ここまで感情表現が豊かだと恐怖すらも湧かない。
『ごめんね、ユダさん』
僕は笑いながら謝罪をする。ユダさんも慣れているのかはたまたそもそも怒っていなかったのか、すぐに表情は穏やかなものになった。
「瞬」
次に僕を呼んだのは愛斗だった。その声に応対してみんなの方を向く。どうやら、愛斗だけが僕に用がある訳ではなく、みんな僕に聞きたいことがあるようだ。
いや、聞きたいことがある。程度では済まないだろう。
いまさっきから会話をしている僕だけはこの世界の言語がわかるのに対して、彼らは生粋の日本人。故に今までの会話の流れを知りたいのだろう。
「よく分からないことだらけだし、ここの人達はなんて言ってるかわからねえし、お前しか頼る相手がいないっていうのも不服だが……今はお前しか頼る相手がいないってことだよな?」
最近の愛斗の様子を知っている僕にとってはその言葉は衝撃だった。愛斗が僕を頼るなんて。しばしの間の硬直の後にようやく僕は言葉を紡ぐことが出来た。
「その……僕がなんでこの世界の言語がわかるのかって理由とか聞かないの?」
自分から地雷を踏んでいくようで怖かったけれど、質問してしまう。
それに対して愛斗は少しむっとした表情になった後に、
「お前のことだからどうせ後で教えてくれるんだろ?どうせ今説明されても理解できる気がしねえし、なにより……」
愛斗はそこで話を止めて、右腕を左腕で守るように重ねて、
「異世界とやらを楽しみたいからな」
何か含みがあるような言い方だったけれど、彼のニヤリとしたその表情を見るのがとても久しぶりなような気がして、なにも文句が言えなかった。
「凛?」
ふと凛の方を見ると浮かない顔を浮かべている彼女がそこにいた。
異世界という意味の分からない世界に来ているのだから、そんな表情になるのも当たり前だ。とは言え大好きな人のネガティブな表情は見ていていい気分ではない。
彼女を笑顔にさせたくて、話しかけたのだが、
「え!?どうしたの?」
そんな大きな声を返されて驚いてしまった。普通の声量で話しかけたつもりだったのだけれど、そんなに驚くようなことかなぁ……。
悠太郎はどこか遠くを見ているし、愛斗は何か思いついたのかにやついているし、凛は心ここにあらずということで、ここに異世界転生二回目の僕。
この場にまとも人はいないようで、今から再度話し合いが行われるというのに、不安が尽きない僕だった。
紋章の出現を確認。
ゲブラーとビナーの活発化確認。
ティファレトは未だ目覚めず。
○○○も沈黙を貫いたまま。




