概念と証明
1400pv超え!読者数も700人を越えました!!ほんっとうに感謝の念が尽きません!これからも、投稿ペースは遅いですが、読んでくださいな!
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「…………………………」
僕は呆然と空を見上げていた。
体操座りをしながら、僕は無心で、何も考えれずに、そこで呆然としていた。
‥…半年。
あの修学旅行から半年たった。あまりにも、濃ゆく、充実したそんな半年だった。
半年前のあの日。2人が気持ちを分かち合えた、あの日から、瞬と凛が唇を重ねたあの日から、瞬たち4人の関係は、日々は、崩れていった。
愛斗と悠太郎の冷たい視線に恐怖しながら、同時に瞬は凛の綺麗な黒い瞳に、吸い込まれ、そして、何とも言えぬ悦びをその視線から感じていた。
そう。あの日を境に、
瞬と凛は今まで以上に親愛になり、
瞬と愛斗達とは敵対するようになった。
もちろん。何度か謝りには行った。だが、もちろん瞬が言っても意味のないことで
「お前は、俺を……俺達を裏切った」
その一点張りで、話を聞いてくれなかった。
分かってるさ。分かってるんだ。理解してるんだ!そんな事!
だから、付き合って最初の2ヶ月。瞬は苦しんでいた。彼女と……凛と目を合わせるだけで、心が悲鳴をあげていた。
そして同時に、瞬の心が、弱い、心が、語りかけてきたんだ。
「裏切り者」
それに耐え続ける生活のなんと苦しいことか。
家の中ですら、息苦しさを感じてあの日のように吐き気に襲われることもあった。
でも、瞬が笑って過ごせるようになったのは……凛のおかげである。こんな瞬でも凛は優しく受け止めてくれた。
だから、泣いてしまった。凛の胸の中で瞬は泣いてしまった。ダサイとか、女々しいとかそんなことも思ったけれど、瞬の心はすでに限界だった。
……気づけば、僕は眠っていたようで凛は瞬を膝枕したまま寝ていた。
この日を境に瞬は徐々に元気になっていったと思う。そして、瞬と凛の関係もより強固なものになった気がする。
それからの半年は本当に楽しかった。家が同じなのだから、毎日出会えるし、遊べるし、休日も一緒にいられる。
楽しかった。本当に楽しかった。
最終的に瞬は凛に依存していくようになった。その依存が良いことなのかどうかはまだ分からないけれど、今の瞬は本当に楽しそうだった。
「…………………………」
また思考に一瞬の空白ができる。
凛との日々を眺める度に思うのだ。
この出来事は全て夢なのでは無いか?
そんな瞬の感情が僕に直接伝わってくるのだ。
まるで、僕がそれを経験しているかのように。実際の自分がそれを体験したかのように。
幻想を掴むような、そんな切なさを感じ始めている自分がいた。恐怖を抱いている僕がいた。
自分という存在と「瞬」という存在を結びつける明確な証拠がないから、僕はただ恐怖していた。
なんで自分はこんな光景を見ているんだろう?
なんで自分はこんな夢を見ているんだろう?
マルクトが言っていた「太陽」へ向かう為に僕は今までなんと無しに見ていただけなのだ。
……もしかしたら見なくても辿り着けるのかもしれないけれど、僕にこの何も無い世界を歩き続ける勇気がなかった。
そんな夢を見続けた結果、僕は記憶の登場人物に愛着を持ってしまった。
「瞬」を「凛」を「愛斗」を「悠太郎」をみんなを、僕は好きになっていた。
白い世界で生まれて、何の「感情」も持ち合わせていなかった僕だからこそ、この感情が無くなることに、みんなを見れなくなることに恐怖を抱いている。
……結局どうすることも僕はできない。
重い腰を無理やり上げて歩いた先にあった、結晶に手を触れることしか僕にはできない。
「深く考えすぎじゃよ。ご主人」
手に触れる直前。マルクトの声が聞こえる。静止の言葉ではないし、僕はその言葉を無視して結晶に触れた。
「え……?」
僕の呟き声が、白い世界に木霊する。
手に触れる結晶が光らなかったのだ。
その結晶にはいつもの輝きが無く、それはただ宙に浮き、踊りながら僕を見下ろしていた。
「どう……して……?」
掠れた声が出る。今まで一度も起きなかったイレギュラーに僕の思考がついていかない。
常識を覆されるとは、まさしくこのことを言うのだろう。もう一度結晶に触れるも、触れる度に僕の体を包み込んでくれた暖かな波の奔流は現れなかった。
「ご主人が、ご主人のことを認めなかったからじゃよ」
後ろを振り返る。先程、予想した通りそこにはマルクトが立っていた……
って、
「ちっちゃい……?」
久しぶりに……記憶の世界で換算するなら半年ぶりに会ったマルクトは、僕よりも身長が低くなっていた。
前見た時は、僕と同じぐらいの身長だったはずだから……一頭身ぐらいの差が……
「ええい!実況するな!!分かっておるわ!」
ーーそうだった。僕の心はなぜか読まれるんだったーー……怒られてしまう。
「我が小さくなったのではない!ご主人が大きく!なったのじゃ!」
僕が……大きく?
「そうじゃ!ご主人はついさっきまで「瞬」と言う存在を、まるで自分かのように思っていたじゃろう?だから、ご主人は記憶を見るごとに自分の体を本物の瞬に近づいていくようにしていたのじゃ!」
……全く言っている意味が理解できない。
僕は「僕」であって、「瞬」である確証はないだろう?
心の中で自問自答……いや、マルクトも聞いているから実質質問的な事をする。
「はぁ……」
あからさまな溜息。僕は何か間違っているのか?
「だから、記憶を見れないんじゃろ!」
え?
マルクトが言った言葉を耳が聞き取って理解するのに数瞬……その数瞬の間に、マルクトは唐突に結晶を投げ渡してきた。
勿論、慌ててキャッチする。
が、相変わらず結晶は何の反応も示さない。今まで以上に無機質な眼をもって、僕を睨んでいる。
「っ!」
僕を包み込んでくれた何かの暖かさはそれに無く、何か拒絶されているようにも感じて、気づけば視線を僕はあげていた。
「我を見るな。その結晶に映る、自分自身を見よ」
その言葉に僕の肩が小さく震える。自分の正体を知ってしまうことへの恐怖心故か、僕の理性は「知ること」を拒否する。
……比べて、僕の本能。心のどこかは「知ること」に妙な安心感を覚えていた。
いや、寧ろ、待ち焦がれていたかのようなそんな感覚。
「ご主人の理性は、この世界にいるご主人そのもので、本能はあの世界にいるご主人そのもの……か」
マルクトの小さな呟きは僕にもしっかりと聞こえた。
言っている言葉の意味はイマイチわからない。けれど……
僕の心は整った。
いつもよりも身近に感じる心の警鐘を抑え込みながら、僕は結晶に目を向ける。
そこに映った少年の姿は……………………
「ティファレトか」
自分の幹にノックもせず入ってくる精霊なんて、ティファレト以外にはおらん。
あやつだけなのだ。我の事を友人のように扱ってくれるのは……
「本当に作戦を……いえ、世界の改変を行うつもりなのですか?」
我の予想は当たり、金色のドレスを纏った麗しい女性が話しかけてくる。
やはり大掛かりな作戦前だからじゃろうか、緊張しているようで声がやや上擦っておる。我が子ながら可愛いものじゃ。
「ああ、長い戦いになるぞ。神さまが創り上げようとしている新世界を壊そうとしているのじゃから」
神が望むあの世界を、我は理解することができぬ。理想郷などと、言ってはいたがあんな歪んだ世界がまともに機能するわけがない。
そも、イレギュラーがおる時点で……
と、これ以上話そうとすると「消されて」しまうな。
「今は、神さまと私達の利害が一致しているけど、いつ裏切るか分からないですわよ?」
「……分かっておるわ」
我々……否、一部の精霊が望む世界がご主人が後悔しない世界であるのに対して、神さまが望む世界は、ある場所で、ある人の為の、ある人好みの新世界創り上げること。
それを達成する為なら、神さまはどんな犠牲もを厭わないじゃろう。
「じゃが、今神さまはこちら側についておる。利用できるものがあれば、利用する。そうでもせん限り我々の願いは叶わん」
神を利用する。
何とも不遜極まりない台詞に、ティファレトが心配そうな顔を向ける。
「心配するでない」
根拠は無いが、こうでも言わないと、ティファレトは心配したままじゃろう。
「我は精霊の王ぞ」
我々精霊は、この世界の中でも高次元な存在である。人間と争わせれば、精霊の1人を倒すことすらも不可能じゃろう。
が、神はそんな高次元な我々よりも更に高次元。いや、ここまできたら次元云々の話ではなかろう。
つまるところ、「格」が違うのじゃ。故に、人は精霊に勝てぬし。精霊は神に勝てぬ。神に逆らえぬ。
……一部を除いての話じゃが。
一言に「精霊」と言っても、その正体は千差万別である。弱い「格」の精霊もいれば、
我や「アイツ」のような「格」の高い精霊もおる。
契約するご主人の心にもよるが……
……世界の改変。神への反逆も冗談のような話ではなくなる。
「マルクト?」
思考の海に溺れていた我をティファレトが引っ張り上げる。
その瞳に映る我の姿を見て……
「大丈夫じゃ。何があろうともな……」
こやつら子供達には、まだ話さぬ方がいいの。
そう思って我は予言する。遠くにある太陽を見つめて、高らかに宣言する。
「……勇者は必ず目覚める」
この言葉がティファレトにどう伝わったかは分からぬが、彼女は少し悲しそうな顔をする。
何があっても勇者は目覚める。そう。例え、犠牲を払ってでも……
それを理解した彼女は、自身の契約者を頭の中で思い描いたのじゃろう。
……故に我も考える。此の先の未来を。
自身の正体に遅まきながら気づいた勇者が、
「瞬」が、どのようにしてこの第三世界を抜け出すのか。
太陽から目を背けて背後を見ると、そこには黒い目が浮いていた。
黒い目は、第四の壁の先で……
嗤っていた。
メモ:???
なあ『削除』。
俺達も出会って……いや、『削除』されて、随分経った……
だからさ……その……恥ずかしいな!こういうのを言うのは……!
えっと……俺達も子供を育んでみないか?
えぁ、そんな真顔で疑問に思われてもな……なんていうか、アイツも!『削除』を育んでいたんだよ。
ほらさ、俺達『削除』を創造したのはいいけどさ、その次のステップにはなかなか足を踏み出せなかったじゃん?それに、『削除』がいないと……やっぱ寂しくないか?
い、いや!違うんだよ!『削除』の事が嫌いなわけじゃない!寧ろ好きだ!
あ……いい……の……か……?
ご、ごめん。やっぱ俺も緊張してる。
うん。俺と付き合って下さい。




