最悪なのは環境だけじゃない
第1章
第2節 最悪なのは環境だけじゃない
今日は4月1日、入学式でお偉いさんの退屈な話を聞かされたあと自分の配属された6組の教室へ向かう。未だに自分が6組に配属された理由がわからないで考えながら歩いていく、入寮した日に配属先を通知されかれこれ三週間になるがずっと考えている。なにかの手違いだろうと思っていたが、残念ながら全く通知は来ないのだ。
そうこう考えているうちに教室の前に着いたのだが…
「ボロ過ぎだろ」
クラスメイトだと思われる男子からそんな言葉が聞こえたのも無理はない。まるで寺子屋といえば想像がつくだろうか、教室内は一面畳、ボロボロな木製の机、見たところ冷暖房器具なども見当たらない。真夏にここで授業を受ける姿は想像もしたくない。
「お前らなにを突っ立っている。さっさと席に着け。」
ガチムチな男性教師が野太い声でそう言った。周りを見るとぞろぞろと教室へ入り、適当な席へ座っていく。それに続き適当な席に着く。
「全員席に着いたな、早速だがHRを始める。今年度から3年間貴様らの指導をすることになった小川だ。よろしく頼む。授業担当は物理だが一応必須科目と保健は指導ができるので遠慮なく質問してもらって構わない。」
あの教師ガチムチのくせにかなり頭が良さそうだな。
「また高等教育管理組織が採用しているIA制度やアバターシステム、特別履修制度については入寮からの研修期間において説明がなされているので省略する。その他詳細はは既に配布されているルールブックを参照すること。以上だがなにか質問はあるか?…無いようだな、それでは解散とする。」
簡潔な説明を終えたガチムチはそそくさと教室を後にする。みんな思い思いに話し始めたが研修期間でろくに友達もできなかったので学校から支給されたスマホをいじっていると、大柄な男が黒板の前に立っていた。すると自然に会話がなくなりみんなの注目が1人の男に集まる。
「改めて自己紹介は必要ないと思うが、一応クラスリーダーの神崎大雅だ、よろしく。唐突だが聞いてくれ、実はこのクラス分け少し違和感がある。」
「違和感ってなにー?」
当然の疑問を投げかける女子
「みんなも知っての通り俺たちひとりひとりには査定値というものが付いている、加えてランキングもな。」
こいつの言う査定値とは生徒の評価を学校が数値化したものだ。
「俺の査定値は725でランキングは学年2位だ、どう考えたって1組じゃないとおかしいと思うんだが」
「なんだよー自慢かよ」
「そうじゃない、研修期間ずっとお前らを観察していたが何人かいるんじゃないか? 俺と同じ考えのやつが」
男子の煽りを気にも止めず話しを続ける。
「そうだな俺の予想だと3、4人は査定値600を越えているやつがいる、そいつには後で話があるからHRが終わったら食堂に来て欲しいんだ。とりあえず伝えからな、今日のところはこれで解散とする。」
神崎はそういうとガチムチと同じようにそそくさと教室を出て行った。おそらく食堂へ向かったのだろう。
「さてと、」
3週間考えても出なかった答えをやつは持っているのだろう、そう確信して俺も食堂へ向かった。
食堂に到着すると既に数人集まっていた神崎の言う通り俺も含めて4人集まったようだ。
「これで全員だな、他にはいないだろう」
「ねえ神崎くんさっきの話本当なの?」
少し気の強そうな女子が質問をすると
「ああ、これで信じられるか?」
と言って支給品のスマホの画面を見せてくる。そこにはたしかにさっき言っていた査定値とランキングが表示されている。
「たしかに、ほんとだったのね」
「とりあえず話の前に自己紹介だな」
「ならうちからね、早乙女音羽、部活は所属予定無し査定値とかも言った方がいい?」
「そうだなよろしく頼む」
「査定値は610でランクは20位よ」
早乙女さんは自己紹介を終えるとなぜか俺の方を見てきた。これは次はお前がしろってことかなと思い自己紹介をしようとすると
「さっ…さ相良伊織です!」
相良と名乗った可愛らしい女の子が自己紹介を始める。
「私も部活動には入らない予定です。そっ…それと査定値は705でランキングは4位です。よろしくお願いします!!」
めっちゃ緊張してるな、面接の時とか大丈夫だったのかといらん心配をしてみる。
「すごいじゃない!神崎もそうだけど伊織もやるわね」
「そ…そんなっありがとうございます!」
かわいいなあ相良さん
「次は僕だね、名前は小野潤、査定値は590でランキングは24位だよ。」
なんかとても鼻に付く喋り方だな
「ちなみに早乙女さん今日は何色かな?」
はい?今日は何色って下着の色を聞いているのか?
「え?何色ってなにが?」
「え?」
「え?」
「やだなぁ、君が今穿いている下着の色に決まっているじゃないか」
「はあ?何言ってんのこいつっ!」
バン!っとものすごい勢いで蹴り飛ばされる小野…絶対に早乙女には逆らわないようにしよう。
「イチャイチャするな先に進まん」
「イチャイチャなんてしてないわよ!」
「とりあえず最後頼む」
早乙女さんの叫びを無視して俺に話を回す神崎。
「えーっと、朝比奈礼人です。査定値は700でランクが5位です。よろしく」
「なに?!5位だと…」
異様に驚く神崎、そんなに意外かな
「俺が研修期間でお前が600越えかどうか1番判断しづらかったんだよ、なんせめちゃくちゃバカっぽいからな」
おい、今こいつなんて言った。
「あーたしかにそれは言えてるかもね」
早乙女さんまで…2人まとめてしばくぞほんとに
「違いますよ!朝比奈くんはなんというか…その…かわいいだけです!決してバカっぽい顔なんかじゃありません!」
ちょっ!フォローしているようでフォローになってないよ相良さん…
「そんなことより神崎くん、自己紹介も終わったことだし話を進めてくれないか?」
「ああ、すまない。朝比奈がバカなのはこの際どうでもいいな」
「いや!全然良くないんだけど!」
「そうだな、まずは査定値の話からだが」
俺の悲痛な叫びも届かず話が進む。
「俺は1組に入るボーダーが小野の590だと思っている。」
「どうしてよ」
「理由は至ってシンプルだ。1クラス24人だからな」
「あーなるほどね」
「まあ俺らが抜けた分は繰り上げて1組に入れてるだろうからもう少し下がってはいるだろうが…」
主に早乙女さんが反応しながらその後も会話が続いていく。要約するとこのクラス分けは仕組まれたものであり、仕組んだやつの意図はまだ分からんがチャンスなので手を貸してくれないかということだった。
ここまでキチンと理解できてるんだからバカとは言わせない。
「おいバカちゃんとついてこられてるか?」
「失礼な!それにバカって言うな!」
「そうかついてこれてるか、すまなかったな礼人」
どうやら本当にバカだと思ってるらしい。月のない夜道には気をつけろよまったく。
「それに協力するってのは全然いいんだけど、1ついいかしら」
「どうした」
「私たち5人はいいのだけど他の人たちはどうなのよ、あまりに戦力差が激しいと太刀打ちできないわよ」
「そうだな俺の予想だと他のやつらは大体100前後だな、特に男子は圧倒的に低い」
それって絶望的じゃないかな、いくら5人がSランク級でも相手は5倍の人数だし。
「それって勝算あるんでしょうか?」
誰もが思ってたことを相良さんが口にする。
「ああ、あるさ、この戦力だぞ十分すぎるくらいだな」
俺にはなぜこの男がこんなにも圧倒的な戦力差を目の当たりにして、こんなにも余裕なのかまだ知る由もなかった。
第1章
第3節 始動!




