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廃嫡錬金術師の魔石国家  作者: 阿鼻恭介
第三章 崩落と廃嫡
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13/36

第13話 崩れた山

この作品は完結まで7日間で1日5〜6話投稿します。

3日目(7/22)3話目です。

 赤い光が、起爆導線を走った。


「ディート!」


 レオンハルトが叫ぶ。


 ディートリヒの手から、魔力を流し終えた導線が落ちた。


 だが、既に遅い。


 導線を伝った魔力は黒い外殻の内部へ入り、高純度核と起爆術式を結びつけていた。


 一度起動した新型爆破石は止められない。


 一。


 二。


 レオンハルトは岩壁へ手をついた。


 《結晶創造》を通して、爆破石の周囲を探る。


 核へ集まる魔力。


 地下水を含んだ脆い層。


 その奥にある、採掘によって支えを失った大きな空洞。


 爆発の力が地上へ抜ける道はなかった。


「全員、伏せろ!」


 クラウスが盾を構え、近くの作業員を岩陰へ押し込んだ。


 三。


 核を壊せば、即座に暴発する。


 魔力を抜く時間もない。


 レオンハルトは爆破石を止めることを諦めた。


 今できるのは、人と爆発の間へ壁を作ることだけだ。


「入口側へ下がってください!」


 床と壁に含まれる石英質へ意識を伸ばす。


 細かな結晶粒をつなぎ、一枚の板へ組み替える。


 四。


「《結晶創造》!」


 爆破石と作業員たちの間へ、半透明の結晶壁がせり上がった。


 レオンハルトは作業員側へ回り込み、壁の裏へ両手を当てる。


 急いで作った結晶は、内部の配列がまだ固定されていない。


 魔力を流し続け、砕けた部分をその場で再結晶化させなければ、強い衝撃には耐えられない。


 五。


 護衛たちがディートリヒの腕を掴む。


「ディートリヒ様、こちらへ!」


「離してください! 水が抜ければ危険はなくなります!」


「この先に外はない!」


 レオンハルトが叫ぶ。


「空洞を支えている岩を壊すだけだ!」


 六。


 七。


 外殻の術式が赤く輝いた。


「クラウスさん、弟を壁の後ろへ!」


「あなたも頭を下げてください!」


 八。


 九。


 十。


 爆発した。


 轟音が坑道を揺らした。


 黒い外殻が砕け、高純度核へ蓄えられた魔力が一気に解放される。


 爆風と岩片が結晶壁へ激突した。


 耳を刺すような甲高い音とともに、壁全体へ白い亀裂が走る。


「ぐっ……!」


 レオンハルトの両腕へ衝撃が伝わった。


 結晶壁の表面が砕ける。


 レオンハルトは魔力を送り、欠けた場所を周囲の石英で埋め直す。


 一度。


 二度。


 三度。


 壁は大きくしなりながらも、爆風と岩片を受け止めた。


 クラウスは盾を重ねるように構え、ディートリヒと作業員たちの頭上を守っている。


 やがて最初の衝撃が収まった。


 だが、坑道は静かにならなかった。


 山の奥から、低く長い音が響く。


 ごごご、と。


 巨大な岩盤が、地中で動き始めていた。


「何……?」


 ディートリヒが青ざめた顔で周囲を見回す。


 爆破によって開いた穴から、濁った水が噴き出した。


 最初は足元を流れる程度だった。


 だが、たちまち水量が増え、砕けた岩や砂を巻き込みながら膝の高さまで押し寄せる。


 壁際では、水が跳ね上がって腰の位置まで達していた。


「排水路じゃない……」


 レオンハルトは爆破地点の隣へ手をついた。


 爆発の衝撃で、空洞を支えていた岩盤が割れている。


 水を含んだ粘土質の層が滑り、上部の重さが主力坑道側へ移っていた。


 亀裂が一本ずつではなく、網のようにつながっていく。


「主力坑道が崩れます!」


 レオンハルトは振り返った。


「全員、入口へ走ってください!」


「兄上……」


 ディートリヒは動けなかった。


 自分の作った穴から流れ込む水を、呆然と見つめている。


「僕は、水を外へ……」


「説明は後です!」


 クラウスがその腕を掴む。


 護衛たちもディートリヒを支え、入口側へ引いた。


 作業員九人は互いに顔を見合わせた。


 彼らは、ディートリヒが自ら導線へ魔力を流すところを見ている。


 だが、後継者候補を責める者はいなかった。


 一人は青ざめて目を伏せ、別の一人は家族の名を呟きながら走り出した。


 最後尾の作業員へ、天井から大きな岩が落ちる。


「危ない!」


 レオンハルトは床へ手をついた。


 石英と魔石片を集め、一本の細い結晶柱へ再構成する。


 柱が斜めに伸び、落下する岩を受け止めた。


 鈍い衝撃。


 柱の表面へ亀裂が走る。


「今のうちに!」


 作業員が岩の下を抜ける。


 クラウスが先導し、濁流の中へ足を取られた者を引き上げた。


 護衛二人がディートリヒを支え、残る一人が後方を確認する。


 レオンハルトは壁へ触れながら、安全な足場を探した。


「右側へ寄ってください! 左の床は沈み始めています!」


 一行は崩れかけた採掘跡を抜け、主力坑道へ向かった。


          ◇


 主力坑道の中段へ戻る頃には、崩落は一か所だけではなくなっていた。


 壁が剥がれ、天井から砂が降り続けている。


 床には濁った水が流れ込み、倒れた支柱や荷車を避けながら鉱夫たちが退避していた。


「最深部の者が戻ったぞ!」


 アルノルトの声が聞こえる。


 中段では、班長たちが人数を数え、負傷者を支えながら旧運搬路へ誘導していた。


 旧運搬路の出口は、主坑口から山肌を隔てた西側斜面へ通じている。


 主坑口が塞がれても使えるよう、以前レオンハルトが避難路として選んだ道だった。


「先生!」


 レオンハルトが駆け寄る。


「ディートが爆破石を起動しました!」


「間に合わなかったか……」


 アルノルトはディートリヒへ目を向ける。


「ご自分で起動したのですか」


 ディートリヒは答えなかった。


 周囲の視線が、自分へ集まっていることに気づいたのだろう。


 クラウスが代わりに答える。


「私が目撃しました。ディートリヒ様ご自身が、起爆導線へ魔力を流しました」


「クラウス!」


 ディートリヒの顔が歪む。


「事実を述べています」


 クラウスは視線を逸らさなかった。


「今は救助を優先します。ですが、見たことを変えるつもりはありません」


 護衛三人は何も言わなかった。


 一人はディートリヒを見た後、すぐに顔を伏せる。


 作業員たちも互いに目を合わせたが、口を開く者はいない。


 彼らの家族も仕事も、ベルクシュタイン家の鉱山に握られている。


 その沈黙を見て、レオンハルトの胸へ冷たいものが沈んだ。


 岩盤の奥で、さらに大きな破砕音が響いた。


 旧運搬路の入口側へ岩が崩れ落ちる。


「通路が狭くなっています!」


 先頭の班長が叫んだ。


「一人ずつでは、全員が通る前に塞がります!」


 中段には、まだ数十人の鉱夫が残っている。


 レオンハルトは壁へ手をついた。


 内部構造が頭の中へ流れ込んでくる。


 崩れ始めた天井。


 沈下する木製支柱。


 水を含んだ脆い層。


 旧運搬路の上へ乗る巨大な岩盤。


 レオンハルトは、以前作った危険区画図を思い出した。


 支柱を追加するなら、どこへ置くべきか。


 荷重を逃がすなら、どの岩盤へ受け渡すか。


 父へ提出した図面の余白には、補強候補の位置まで記していた。


 実際に工事されることはなかったが、その配置は頭に残っている。


「既存の支柱の間へ、補強を入れます」


 レオンハルトは叫んだ。


「皆さん、壁際へ寄ってください! 中央を空けて!」


「何をするおつもりですか」


 アルノルトが尋ねる。


「調査の時に考えていた補強位置を使います。天井の重さを、比較的硬い岩盤へ逃がします」


「一か所では足りませんぞ」


「三か所を同時に支えます」


 レオンハルトは両膝を床へついた。


 周囲の鉱物を探る。


 石英。


 魔石の欠片。


 鉄分を含んだ硬い鉱物。


 性質の異なる鉱物を無理に混ぜれば脆くなる。


 中心には硬い石英質。


 外側には僅かに弾性を持つ鉱物。


 根元には重さを広く受ける層を作る。


 前世で見た支保工と、これまで調べた坑道構造を重ねる。


「《結晶創造》!」


 床が淡く光った。


 一本目の結晶柱が伸び上がる。


 太い柱は天井へ届く直前で三方向へ枝分かれし、広い面で岩盤を受け止めた。


 二本目。


 三本目。


 既存の木製支柱の間へ、半透明の柱が立ち上がっていく。


 轟音とともに落ちてきた岩が、結晶の枝へ受け止められた。


「今です! 退避を続けてください!」


 班長たちが鉱夫を動かす。


「第一班、先へ!」


「負傷者を中央に!」


「出た者は西側斜面で人数を数えろ!」


 クラウスも盾を構え、落石から鉱夫たちを守りながら旧運搬路へ誘導した。


「ディートリヒ様も先へ」


「僕は……」


 ディートリヒは立ち尽くしていた。


「今は生きて外へ出ることだけを考えてください」


 クラウスは護衛たちへ弟を引き渡した。


 護衛三人と最深部の作業員九人は、第四班の後ろへ合流する。


 ディートリヒは何度もレオンハルトを振り返りながら、旧運搬路へ入っていった。


 レオンハルトは結晶柱へ魔力を流し続ける。


 通常なら、時間をかけて結晶配列を固定すれば、魔力を止めても形を保てる。


 だが、今の柱は数息で作った急造品だ。


 内部の配列が安定する前に魔力を止めれば、荷重に耐えられず崩れてしまう。


 一本へ亀裂が入った。


 レオンハルトは周囲の石英を引き寄せ、割れた場所を再結晶化する。


 別の柱が沈む。


 根元の配列を組み替え、荷重を横へ逃がす。


 生成そのものより、崩れ続ける岩盤に合わせて構造を直し続けることの方が、はるかに魔力を消耗した。


「レオンハルト様!」


 アルノルトが肩を支える。


「使いすぎです」


「まだ、この区画の全員が通っていません」


「このままでは倒れます」


「僕が止めたら、急造した柱が持ちません」


「残りは何人ですか!」


 アルノルトが叫ぶ。


「この区画は二十三人!」


 班長が答えた。


 主力坑道の奥で、再び大きな破砕音が響く。


 爆破地点から始まった崩落が、こちらへ迫っている。


 横の壁から土砂が噴き出し始めた。


「側面も支えます」


「柱だけでも限界です!」


「横から塞がれたら、旧運搬路へ入れません!」


 レオンハルトは片手を側壁へ向けた。


 床と壁の鉱物をつなぎ、薄い結晶板を何層も重ねる。


 結晶壁が旧運搬路の入口側へ伸び、押し寄せる土砂を受け止めた。


 完全に止める必要はない。


 崩れる速度を遅らせればいい。


 鉱夫たちが通り抜ける時間だけ。


「残り十五人!」


 視界の端が暗くなり始めた。


 指先の感覚が薄い。


 額から流れる汗が、地下水と混じって頬を伝う。


 それでもレオンハルトは手を離さなかった。


 魔石灯を受け取り、嬉しそうに笑った鉱夫たち。


 避難経路確認会で、自分の説明を聞いてくれた班長たち。


 父に何度拒まれても、記録を取り続けたオットー。


 ここで止めれば、すべてが岩の下へ消える。


「残り八人!」


 クラウスが、足を負傷した鉱夫を肩へ担ぐ。


 アルノルトは最後尾で人数札と顔を照合していた。


「残り三人!」


 結晶柱の一本が大きく砕けた。


 天井が沈む。


「レオンハルト様!」


「まだです!」


 レオンハルトは残った魔力を一気に流した。


 砕けた柱の周囲から、新しい結晶が枝のように広がる。


 細い結晶同士が絡み合い、沈む天井を僅かに押し返した。


 最後の鉱夫が旧運搬路へ入る。


「この区画の全員が通りました!」


 その声を聞いた瞬間、レオンハルトの腕から力が抜けた。


「退避を!」


 クラウスが駆け戻ってくる。


「先生は?」


「最後尾の確認を終え、先へ向かいました!」


 クラウスがレオンハルトの腕を肩へ回す。


 二人は旧運搬路へ走った。


 背後では、急造した結晶柱が一本ずつ砕けていく。


 岩盤が落ちる轟音。


 濁流が主力坑道を満たす音。


 結晶壁が土砂へ押し潰される音。


 そのすべてが、二人を追いかけてきた。


          ◇


 旧運搬路の出口は、主坑口から離れた西側斜面へ開いていた。


 レオンハルトとクラウスが外へ出ると、オットーとアルノルトが待っていた。


「若様!」


「人数は……」


「確認中です!」


 地上へ出た鉱夫たちは泥にまみれ、家族と抱き合っている。


 騎士たちは家族や見物人を山肌から離し、平地へ誘導していた。


「斜面から離れろ!」


「ポンプ係も下がれ!」


「負傷者を倉庫へ!」


 ブルクハルトも地上で声を張り上げていた。


 救助用の縄や担架を集め、監督たちへ人数札を持ってくるよう命じている。


 鉱山長として最低限の指揮は執っていた。


 だが、主坑道の奥で何が起きたかを聞いた瞬間、その顔色が変わった。


「新型爆破石を使ったのか」


 ブルクハルトはディートリヒへ駆け寄る。


「私は測量だけと申し上げたはずです」


「少し穴を開けるだけのつもりだった」


 ディートリヒが答える。


「ですが、兄上が結晶を作って――」


「今はその話をする場所ではありません」


 ブルクハルトは周囲を見回した。


 クラウス。


 護衛。


 作業員。


 多くの目撃者がいる。


 ブルクハルトは何かを考えるように唇を結び、ディートリヒを事務所側へ連れていった。


 その時。


 山全体が大きく震えた。


「全員、伏せろ!」


 クラウスが叫ぶ。


 主坑口の周辺が内側へ崩れ、黒い土煙と濁った水が噴き出した。


 選別場の建物が傾く。


 鉱石を積んだ荷車が次々と倒れた。


 山肌の一部が崩れ、雨水と土砂が斜面を流れ落ちてくる。


 騎士と鉱夫たちが家族を抱え、さらに平地へ逃げた。


 オットーも大声を張り上げる。


「斜面へ近づくな! 子供を先へ!」


 クラウスは盾を掲げ、レオンハルトを庇いながら後退した。


 主力坑道は完全に塞がれた。


 長年採掘を続けてきた主力鉱脈。


 運搬設備。


 排水設備。


 坑道内の道具。


 その多くが、崩れた山の中へ消えていった。


 レオンハルトは雨に煙る崩落跡を見つめた。


 止められなかった。


 警告した。


 図面を出した。


 漏水量を記録した。


 避難基準も作った。


 多くの鉱夫を逃がすことはできた。


 それでも、山が崩れること自体は止められなかった。


「若様」


 オットーが近づいてきた。


「入坑札を数えました」


 その声は重い。


「朝の入坑者は百二十六名。今、地上で確認できているのは百十九名です」


「七人……」


「三人は、道具を取りに戻った班です。二人は別の支道の見張り役。残る二人は、どの班にいたか確認しております」


「別の出口へ出た可能性は?」


「ございます。ですが、まだ札が戻っておりません」


 大半は助かった。


 だが、全員ではない。


 レオンハルトは唇を噛んだ。


「若様が道と基準を作ってくださらなければ、もっと多くが残っておりました」


 オットーの言葉を聞いても、胸の重さは消えなかった。


 少し離れた場所では、ディートリヒが護衛と作業員たちに囲まれていた。


 弟は崩落跡を見つめ、しばらく何も言わなかった。


 肩が震えている。


 顔には、恐怖と混乱が浮かんでいた。


 やがて、周囲の視線に気づいたのだろう。


 ディートリヒは自分の手を見る。


 起爆導線は既に護衛が回収していた。


「僕は……」


 掠れた声が漏れる。


「排水路を作ろうとしただけです」


 誰も答えなかった。


 クラウスは厳しい表情で弟を見ている。


 護衛の一人は、握っていた導線を隠すように外套の内側へ入れた。


 作業員たちは視線を逸らす。


 その沈黙が、ディートリヒをさらに追い詰めた。


「水を抜けば、危険はなくなるはずだった」


 ディートリヒは言い訳を重ねる。


「それなのに、兄上が急に岩盤へ結晶を広げたから……山の魔力が乱れたのかもしれません」


 レオンハルトは弟を見つめた。


 事故直後の混乱。


 周囲の視線。


 自分が何をしたか認めることへの恐怖。


 そのすべてから逃れるように、ディートリヒは兄の結晶へ原因を求め始めている。


「僕の結晶は、鉱夫を逃がすために作った」


「でも、兄上が岩盤へ力を流したのは事実です」


「爆破石を起動したのも事実だ」


 ディートリヒの顔が歪む。


「兄上は、僕を陥れるつもりですか」


「違う」


 レオンハルトは静かに答えた。


「僕は、見たことと行ったことを、そのまま話す」


 クラウスが一歩前へ出る。


「私も同じです」


 ディートリヒは何も答えなかった。


 ブルクハルトが弟の肩へ手を置く。


「今は事務所へ。旦那様への報告内容を整理しなければなりません」


 二人は鉱山事務所へ向かった。


 護衛三人も後へ続く。


 作業員九人はその場に残された。


 一人がクラウスを見たが、何も言わず顔を伏せた。


 別の者は、家族のもとへ駆けていく。


 彼らが次の調査で同じ証言をする保証はなかった。


「レオンハルト様」


 アルノルトが声をかける。


「今は休んでください」


「まだ七人が確認できていません」


「救助隊が西側の小出口と換気路を確認します」


「僕なら、内部の空洞を調べられます」


 立ち上がろうとした瞬間、膝から力が抜けた。


 視界が大きく揺れる。


 クラウスが腕を掴んだ。


「もう限界です」


「でも、七人が……」


「あなたが倒れては、救助の判断もできません」


 レオンハルトは崩落跡へ手を伸ばそうとした。


 だが、指先に力が入らない。


 魔力はほとんど残っていなかった。


「安全確認会の記録を……」


 レオンハルトはアルノルトを見る。


「工房の保管箱にあります。父上へ出した坑道図も……」


「分かっています」


 アルノルトが頷く。


「私が守ります。見たことと、記録にあることを分けて残します」


「起爆導線も……」


 クラウスが事務所へ向かった護衛たちを見る。


「私が回収を求めます」


 レオンハルトは僅かに頷いた。


 最後に見えたのは、雨に煙る崩落跡と、その前に立つ泥だらけの鉱夫たちだった。


「全員を……見つけて……」


 それだけを言い残し、レオンハルトの意識は暗闇へ沈んだ。

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