第七章・第三節 老兵、地下会議室にて真実を聞く
老兵は祖国へ戻り、ついに国家中枢から呼び出される。
そこで語られたのは“高齢者が戦術を教える新時代”の幕開け。
勝つためではなく、繋ぐために立つ老兵の決断が、
物語に新たな息吹をもたらす。
――帰国、翌日。
霞ヶ関・防衛省の地下階層。
地上の喧騒とは無縁の、ひんやりとした空気が流れていた。
「なんじゃ、この迷宮は。まるで地下要塞じゃ」
「本当に地下要塞ですよ、JZさん」TACTが苦笑しながら答える。
「俺ら、なんでFPS大会から国家機密に片足突っ込んでんの……?」翔は現実逃避気味。
「じいじが世界で勝っちゃったからだよ!」美羽は誇らしげに胸を張った。
案内役のスーツ姿の職員が立ち止まり、重い扉をノックする。
低く響く音と共に、分厚い扉がゆっくりと開いた。
部屋は巨大な円卓と無数のモニターに囲まれていた。
軍服、研究者、政府の要人――並ぶ顔はいかにも“重要会議”だ。
「ようこそ、JZ-65殿」
中央に座る初老の男が口を開く。防衛省特別局長、南雲。
「まずは言っておこう。貴殿は“国際的象徴”となった」
「象徴……盆栽のように飾られるのは、苦手なのじゃが」
「違う。戦う象徴だ」
――会議室が静まる。
「近年、各国軍は“仮想戦闘演習”にFPS技術を取り入れ始めている。
貴殿はその“戦場に適応した高齢戦闘モデル”の、極めて稀な成功例だ」
「ほう……つまり、わしの老いが役に立つと?」
「そうだ。高齢者でも戦術判断は磨かれ続ける。若者とは異なる“戦の脳”を持っている」
TACT、美羽、翔は息をのむ。
南雲は、スクリーンに映像を出した。
そこには――各国の軍関係FPS訓練のデータ。
「我々は、貴殿を“アドバイザー”として迎えたい。
ただし、戦うのではなく、“教える”側だ」
「……なるほどのう」
重蔵は目を閉じる。
王の間、ロンドンの霧、紅茶の香り――
笑った人々、拍手、声援、仲間たち。
そして、静かに目を開けた。
「わしは、戦うために来たのではない。
笑わせ、繋ぎ、守るために戻ってきた。
その務めが果たせるのなら――喜んで力を貸そう」
息をのむ省内要人たち。
美羽が目を潤ませる。
「じいじ……かっこいい」
「うむ、老兵はな、最後まで立っておるものじゃ」
翔が苦笑した。
「それフラグじゃないよね!?」
「違うわ、人生訓じゃ」TACTが優しく笑う。
南雲が深く頷く。
「では――正式に依頼しよう。“特別教導顧問”として」
「任せよ。この老いぼれの戦いは、まだ終わらん」
――老兵は再び立つ。
銃でもなく、剣でもなく。
“教え”と“誇り”を携えて。
ロンドンで世界を驚かせた老兵は、今度は祖国で人を導く役目を得る。
戦場は変わり、武器は知恵へと姿を変える。
次節では、老兵の“教導計画”が始動しするのであった。




