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最終戦線の老兵 ―JZ-65伝説―  作者: ちょいシン


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第七章・第四節 老兵、教官になる

帰国した老兵は、戦う者から“教える者”へと立場を変える。

若い隊員たちの前に立つ彼は、老いを嘆かず、経験を誇る。

それは、銃や技ではなく“生き抜く術”を伝える戦いの始まりだった。

 ――防衛省・訓練棟B-7。


 重蔵は、迷彩柄に身を固めた若い隊員たちの前に立っていた。

 平均年齢、二十歳そこそこ。

 目は鋭く、身体はしなやか。

 だが「戦場の空気」を知らぬ者たち。


「今日から諸君らに、教えを授ける老いぼれじゃ。JZ-65と呼べばよい」


 ざわ……と列が揺れた。


「本物だ……」「ロンドンの“あの試合”の……」

「てか年齢いくつだ……?」

「失礼な、戦士に年齢は関係ない」


 重蔵は小さく笑い、手に持ったタブレットを操作する。


 モニターに映るのは――

 《ゾンビ・オブ・パニック:最終戦線》の戦場マップ。


「ゲーム……ですか?」若い隊員の一人が戸惑う。


「違わん。これは戦術思考の筋肉を鍛えるための道具じゃ」


 重蔵の声は低く、しかし静かに響く。


「走る足も、拳の速さも、いずれ衰える。じゃが、判断は磨き続けられる。

 わしはその証じゃ」


 一瞬、訓練場の空気が変わった。


 TACTがホワイトボードにメモを書き込みながら補足する。


「じいじ――いや、JZ-65は、状況の“先”を読む速度が異常なんです。

 筋肉じゃなくて、“理解の速度”で動いてるタイプ」


「理解の……速度……」


 若い隊員たちの目に、火が灯り始めた。


「ではまず、状況判断訓練を行う。

 君たちには、**『死なない方法』**を教える」


 重蔵が映像内の狭い路地を指し示す。


「敵を倒すことではなく、仲間を守り、生還する道を選べ。

 勝ちは生き残った者にしか訪れん。」


 言葉は、誰よりも多くの“別れ”を知る者の響きだった。


「翔、美羽、TACT。補助を頼む」


「はーい!」

「了解!」

「支援に回ります」


 訓練が始まる。


 重蔵は叫ばない。

 怒鳴らない。

 ただ、静かに“見る”。


 若者たちは、必死に走り、考え、ぶつかり、立ち上がる。


 やがて隊員の一人が、息を切らせながら叫んだ。


「……これ、本当に“戦い”なんですね」


「うむ。それも――生きるためのな」


 休憩時間。


 隊員たちが重蔵を囲む。


「教えてください。もっと。」

「俺、強くなりたいです。」

「守れる人になりたい。」


 重蔵は、目を細めた。

 かつて仲間を守れなかった自分。

 その痛みが、今は道を照らしている。


「ならば共に行こう。

 老兵の歩幅は小さいが、止まらんぞ。」


 若者たちが頷く。


 訓練棟の空気は、もう戦場の予感ではなく――

 未来の匂いを帯びていた。

老兵はついに“教える者”として立ち上がった。

しかし、彼の戦いはまだ終わらない。

教え子たちが巣立ち、時が流れても、戦場の灯は消えない。

次節――老兵は再び己の流儀で、未来へバトンを渡す。

それが、彼に残された最後の「戦い」だった。

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