第六章・第一節 老兵、世界にバズる(ロサンゼルスの朝)
大会の翌朝、ロサンゼルスのホテルで目を覚ます老兵たち。
SNSとニュースサイトでは、じいじの“片手リロード”映像が爆発的拡散!
CNNから取材依頼まで届き――。
――大会翌日。
ロサンゼルスのホテル、朝七時。
カーテンの隙間から、カリフォルニアの陽光が差し込む。
「ううむ……異国の朝日というやつは、まぶしいのぉ」
ベッドの上で伸びをする重蔵。
美羽がルームサービスのパンケーキを撮影していた。
「ねぇねぇ、じいじ! なんかSNSが大変なことになってる!」
「またか。ワシの盆栽が逃げ出したか?」
「違うよ! 昨日の試合のハイライト動画が海外でバズってるの!」
「“ばず”……? 蜂のことか?」
「いや、“バズる”! すっごく再生されてるって意味!」
「いかにも、初めて聞いたみたいに言わないでよ」
「ハハハ。スマンすまん」
TACTがノートPCを持って駆け込んできた。
「JZさん、見てくださいこれ! 『Old Samurai Gamer beats pros with one hand reload!』って記事が英語で!」
「……なんと! 片手リロードが報道されたのか!」
「CNNですよ! CNNが“サムライ・グランパ現る”って!」
「さむらい……グランパ……なんじゃその組み合わせは」
TACTと一緒に来た翔が笑いながらスマホを差し出す。
「じいじ、ほら! 再生数、一晩で三百万!」
「……ふむ。三百万とは、村祭り三百年分じゃな」
「そういう計算いらないから!」
美羽はタブレットを構えて叫ぶ。
「見て! コメント欄に“Respect from Brazil!”“He’s a legend!”だって!」
「ほう……世界の人々が応援してくれとるのか。ありがたいのぉ」
「じいじ、翻訳できてるの!?」
「雰囲気で分かる」
TACTが笑いながら肩をすくめる。
「JZさん、昨夜のプレイで世界中のFPSファンが熱狂してるんですよ。
“Recoil Zen Master”って呼ばれてます!」
「“リコイル禅師”……か。ええ響きじゃ」
そこへホテルの電話が鳴った。
「ミスターJZ-65? CNNロサンゼルスの者ですが、取材お願いできますか?」
「む、またCNN! ……あの局はワシを監視しておるのか?」
「監視じゃなくて取材!」
美羽が小声でささやく。
「じいじ、明日には日本でもニュースになるかもね」
「そうか。……まぁ、どうせなら“盆栽侍”として紹介してもらおうかの」
「やめて! 変なあだ名が世界に広がる!!」
昼過ぎ。
四人は大会本部のロビーで記念撮影をしていた。
手にはトロフィーと、まるで仲間のように並んだ盆栽。
TACTが言った。
「本当にすごいですよ、JZさん。チーム全員でここまで来られたのは、JZさんがいたからです」
「いやいや、皆がいたからじゃ。ワシひとりなら、空港で没収されとる」
「そこ!?」
笑いが弾ける中、カメラのシャッターが切られた。
それは、老兵の“戦いの終わり”であり、
世界が彼を見つけ始めた“伝説の始まり”でもあった。
世界が注目した“じいじの指”。
その静かな朝の裏で、次の波が動き出す。
次節では、帰国を前に届く“謎の招待状”と、
「老兵、第二の戦場」への予兆が描かれます。




