第四章・第五節 老兵、ステージに立つ
ついに老兵、ステージへ――!
ゾンパニFの世界が注目するなか、JZ-65が見せた奇跡の一発。
笑いと感動、そして温かい家族の声援が、渋谷の空に響く。
――その日、渋谷。
大型ビジョンに“ゾンパニF世界大会エキシビションマッチ”のロゴが輝いていた。
ステージ中央には、シンプルな黒のゲーミングチェア。
そこに、白髪の男がゆっくりと座る。
佐藤重蔵、配信者名――JZ-65。
「じいじ、がんばって!」
客席前方、美羽と翔が手を振っている。
その後ろには、娘の真理が微笑んで立っていた。
隣の席でTACTが笑う。
「大丈夫ですよ、美羽ちゃん。JZさんは本番に強いタイプですから」
「……転ばなきゃ、ね!」
「それは運次第です」
観客席の笑いが広がった。
ステージ上、司会者が紹介する。
「注目のゲストプレイヤー! “JZ-65”! 65歳の伝説が、ここに再び!」
会場のライトが照らされる。
JZ-65はゆっくりと立ち上がり、マイクを手に取った。
「……年寄りでも、まだやれると証明したくての」
その声に、拍手が沸き起こる。
「だが一番大事なのは――楽しむことじゃ。ゲームは、世代をつなぐものじゃからな」
歓声。照明が落ち、スクリーンには“ゾンパニF”の戦場。
実況が叫ぶ。
『老兵、ついに参戦!』
試合が始まる。
操作のたびに会場がどよめき、照準が合えば拍手、グレネードを投げれば悲鳴。
「じいじ、右だよ右っ!」
「わ、わかっておるが、指が……勝手に左へ!」
会場大爆笑。
しかしその瞬間――
JZ-65のキャラクターが偶然、敵チームのリーダーを撃破した。
まさかのヘッドショット。
実況席が立ち上がる。
『出たあああ! 奇跡の一発! 老兵、覚醒ッ!!』
TACTが苦笑する。
「……やっぱりこの人、持ってますね」
試合は混戦の末、JZチームが勝利した。
歓声、拍手、フラッシュ。
JZ-65は照れくさそうに頭を下げ、マイクを握った。
「わしは特別なことはしとらん。ただ――みんなで笑えたら、それでええ」
その言葉に、観客の一部が泣いた。
子どもたちの笑顔、大人の拍手、そしてカメラのフラッシュ。
退場のとき、美羽が駆け寄る。
「じいじ、すっごかった!」
「はは……じいじ、まだまだ捨てたもんじゃないな」
翔が笑う。
「今度、また一緒にやろうね!」
「もちろんじゃ。次はお前らが勝たせてくれい」
TACTが後ろから声をかける。
「JZさん、スポンサーが泣いて喜んでますよ。次は海外ですよ」
「……海外?」
「ええ、“ワールド・ゾンパニFフェス”。世界配信です」
重蔵は少し考え、ゆっくりと笑った。
「……わしの盆栽、枯れんかのう」
会場が再び爆笑に包まれた。
ライトが落ち、エンディングロゴが流れる。
“老兵スマイル、世界へ――”
転んでも、笑われても、誰かが笑顔になれればそれでいい。
老兵スマイルは、今日も誰かの勇気になる。
次は――世界大会編へ。
JZ-65、盆栽と夢を背負って世界へ旅立つ!




