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東海道五十三次美人OLスキー旅ミケタマ珍道中  作者: いもたると


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浜松

「ねえ、タマ。天竜川って、どうやって渡るんだっけ?」

「まさか、またドラゴンボート?」

 二人は、天竜川の渡しにたどり着いた。

 また一茶の船で渡るとしたら、どうしようと思った。


 しかし、その心配は不要のようで。

「あ、良かった。橋が掛かっているわ」

「ほんと、ありがたい」

 暴れ天竜と言われた天竜川も、今は昔。

 かつて上中下の三箇所に渡船場があったのにちなんで、ご丁寧にも三本の橋が掛けられていた。


「私、真ん中!」

「私は下!」

 適当に好きなのを選んで、渡り滑っていく。

 無事に橋を通過し、川の西岸へ。


「さあ、浜松だわ!」

「私たち、随分西まで来ちゃったのね!」

 東京から浜松と言うと、ほとんどの人が新幹線を思い浮かべるのでは無いだろうか。

 それをスキーで滑ってきたことで、感慨もひとしおである。

「とうとう西日本までやってきたのよ!」と、ミケコが言えば、

「あら、浜松はまだ東日本じゃないの?」と、タマコが返す。


「そうかしら?でも、ここまで来ると、なんとなく西の雰囲気が出て来ない?」

「うーん、ちょっぴりそうかな?」

「じゃあ、あなたは西日本はどこからだと思っているの?」

「それは愛知からじゃないかしら?あ、でも、三河はまだ東かしらね?」


 実際、東日本と西日本の境目をはっきり言うのは、難しい。

 この辺だという、だいたいの位置は誰もが共通していると思うが、一つには決められないのが実情である。

 論争になるのは、富山、岐阜、愛知あたり。


 だが、電気の周波数の境目は、長野を通っているし、気象庁の区分によれば、三重までは東日本に入っている。

 しかし、ミケコの言うように、浜松あたりまで来ると、なんとなく雰囲気や方言などが、西のものに近づいてくる感じがある。


「富士山を西に見るのが東日本で、東に見るのが西日本じゃない?」

「江戸時代の旅人は、どんな感覚だったのかしらね?」


 東だ、西だと言いながら、やがて浜松の中心部へと近づいていく。

 浜松は人口約80万人の大都市だ。

 そのシンボルが、今宵の宿である。


「来ましたね、浜松城!徳川家康も一時期、居城にしていたのよ」

「東海道は、家康ゆかりの城が多いわね」

 緑豊かな公園の中に、燦然と構える優美な城が、浜松城だ。

 後に天下人となった家康にちなんで、出世城とも言われている。


 チェックインをして、夕食を食べに街へ繰り出す。

 そこで再び先程の東西論争が繰り返されることとなった。

「浜松と言えば!」

「もち、ウナギ!ウナギ、ウナギ、ウナギ!ウナギを楽しみにしてたのよ!」


 江戸っ子も大好き、関西人も大好き。

 日本人ならみんな大好き、大ご馳走。

 ウナギの養殖が盛んなのが、ここ浜松である。

 早速、良さそうなウナギ屋さんを探してみたのだが。


「関東風の店もあるし、関西風の店もあるわ!どっちを選べばいいのかしら?」

「やっぱり浜松って、東なの?それとも西なの?どっちなの?」

 選べるウナギ屋さんの多さに、戸惑う二人であった。


 背開きにしたウナギを、一度白焼にして、蒸した後、また焼くのが、関東風。

 対して、腹開きのウナギを蒸さずに焼いたのが関西風である。

 関東のウナギはフワフワであるし、関西のウナギは皮がパリパリで中はトロトロだ。

 まるで淡水と海水が混じり合う汽水湖の浜名湖のように、ウナギ屋さんも東と西が混ざり合っていた。


「どうしよう?ここで迷うとは思わなかったわ」

 結局、どちらも食べられるお店に入ることに。

「どっちも、美味しい!両方味わえるって、お得よね」

 そうそう、迷ったら両方。


 ミケコもタマコも、二人とも魅力的でどちらかなんて選べない。

 まさに両手に花、両手にウナギなのだ。

 浜松のウナギを心ゆくまで楽しんだ二人。

 浜松城に戻り、夜は部屋でゆっくりと寛いだ。


 翌朝。

 浜松城の朝食会場に向かう二人。

「うーん、なんだか調子いい」

「ウナギを食べたおかげよね」

 そんな二人を、さらに絶好調にする、最強の朝食が待っていた。


「何これ、浜納豆?」と、タマコが相方に聞けば、

「徳川家康が愛したと言われる、健康食品だわ」と、すぐさま歴史に詳しいミケコが答える。

 浜納豆とは、古来より親しまれてきた、浜松の郷土料理。

 納豆菌を使わずに発酵させた大豆を天日干ししたもの。

 発酵の力とお日様の力を両方蓄えたスーパーフードだ。

 普通の納豆と違って、糸を引かない。

 調味料のように使う。


 元祖健康オタク、家康が好んだことで知られていて、彼が天下人になれたのも、浜納豆のおかげなのだとか。

「浜納豆のお茶漬け!サラサラと、朝からいくらでも食べれちゃう!」

「私は、浜納豆の卵かけご飯だわ。元気モリモリね!」

 栄養満点で体にいい浜松の旅を終えて、さらに東海道を西へ進んでいく二人であった。

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