平塚 その1
JR茅ヶ崎駅を越えて、相模川を渡れば、そこは平塚の本陣だ。
「そろそろお菊塚が見えてくるわよ!」と、ノー天気なミケコ。
「どうして東海道って、こんなにオカルトスポットが多いのよ〜」と、霊感の強いタマコは、旅に出たことを少し後悔した。
が、先に立たずである。
旅を途中で切り上げるのも嫌なので、このまま京都まで行くしかない。
お菊塚とは、ご存知怪談『番長皿屋敷』の主人公、お菊さんの墓と伝えられるものである。
ご存知でない方のために、簡単に説明しておく。
お菊は、平塚宿の役人、真壁源右衛門の娘。
大変な器量良しとして知られていた。
江戸の旗本・青山主膳のところへ奉公中、家宝の皿を割ったという嫌疑をかけられ、手打ちにされてしまう。
以後、夜な夜な井戸からお菊さんの幽霊が現れ、悲しそうに、「いちま〜い、に〜ま〜い」と皿を数えたという。
この番長皿屋敷をモチーフにしたアトラクションが、ここには用意されていた。
と言っても、おどろおどろしいものではない。
ここにあるのは、番長皿屋敷は番長皿屋敷でも、落語の番長皿屋敷をモチーフにした、楽しいものである。
そのあらすじは、こうである。
お菊さんの幽霊は、大変美人ということで、町内のお調子者連中が見物に出かけた。
お菊さんが皿を9枚まで数えると、取り殺されてしまうと言うので、8枚までで逃げ出すことに。
すぐにお菊さんの美人が評判になり、押すな押すなの大繁盛になるのだが。
この後のオチは、ご自身で確かめていただきたい。
ミケタマの二人が、お菊塚までやってくると、すぐにお菊さんショーが始まった。
すでに客席はぎっしりとファンで埋まっている。
ここは特設ステージになっている。
ステージの真ん中に井戸がある。
ステージ後方には、ロックバンドが。
バンドが派手な音楽を奏でると、照明が焚かれ、井戸からお菊さんが出てきた。
「いよっ、待ってました!」
「お菊さーん!」
客席から掛け声がかかる。
中から現れたのは、井戸水の滴るほどいい女。
それもそのはず、この女性は、ミスお菊さんコンテストで選ばれた、飛び切りの美女なのだ。
「きゃー、かわいいー!」
「お菊さーん!」
と、ミケタマの二人も一瞬にして心を奪われた。




