87.三回戦
「次は、呪いの国から来た妖怪・蘭丸選手~彼は呪いの国でもっとも美しく、高級品を感じる狐妖怪だ~」
守護国・呪いの国出身の妖怪観客は騒ぎだした。特に女子。男子はそうでもない。
「蘭丸様~!」
「今日もお美しいです!」
蘭丸選手は人気者だ。数人の女妖怪に好まれてるだろう。
「続いて~森の国で十二式神という十二ヶ月の式神の守護人をしている妖怪・天城選手。彼は普段、謙虚でありながら実は実力が森の国の中ではかなりの実力者だ~!」
俺の存在に森の国出身の妖怪、そして他の守護国の妖怪から注目された。
「天城って誰だ?」
「森の国の妖怪?」
俺のことを本当にそうなのかと疑われた。明かしてはいないが、かつては人間の僧だった。だが、ある出来事が起こって妖怪になった。
「いや~奇遇だね。天城だっけ、黒い着物ばかり来ていたから気付かなかったよ」
「黒は何色にも染まらないという意味だ。それが何だ」
「へえ。勉強になった。そっかそっか、じゃあ気を取り直して始めよっか」
蘭丸が実況者の白石に「始めてくれ」と一言言った。そう言われた白石も最初は戸惑ったが、時間がないため始めるしかなかった。
「それでは、始め!」
白石が言ったと同時に戦が始まった。
(この一瞬でまずはこの相棒を出そうか)
蘭丸選手が手を地面に置いた。
「寸善尺魔・空狐」
すると黄金の魔方陣が出していた。それと同時に空狐という妖怪を出てきた。その妖怪は俺に襲いかかろうとしている。俺はもっていたヤツデの葉のうちわを出す。
「春疾風・風神」
心の中で唱えたと同時にうちわを蘭丸選手に向けて仰ぐと風速の速い風を出した。
「うわ、なんだこの風は」
蘭丸選手は砂が目には入らないよう腕で目を抑えていた。
「おっと〜蘭丸選手が妖術を出したその直後に天城選手が逆転!これはどういう勝負がつくのか楽しみですね〜」
白石が解説をしている。すると「あー」と目を擦りながら叫んだ。
「私も目には入った」
その砂ぼこりは観客席に座っていた青蘭も含め、観客たちが巻き添えになっていた。
(天城、妙な手を使ったな。ていうか目が染みる。涙も出る)
青蘭は砂に目が入ってしまい、目が開けなくなってしまった。
時間が経つと砂ぼこりは消えていった。
「天城、お前、俺の気に入りの着物を汚してくれたな」
蘭丸選手は苛立ちをしていた。着ていた服は高級品と認められる生地でできていた着物だ。色は青金石のような青と青玉のような青の百合の花の模様だ。
「だったらそんなに大事な着物だったら着なければ良いだろ」
「これはなこの戦いにしか着られないものなんだから」
蘭丸という妖怪は多分、潔癖症だろう。もしかしたら蘭丸選手は女性たちに注目されたいからか。俺はそう解釈した。
(この妖怪、多分着物を汚くしたら勝てる…かもしれないな)
そう考えた俺はあの取って置きの妖術を出すことにした。春夏秋冬の神。とても簡単なことだ。
「蘭丸さん、言っときますけどその着物とても気に入ってるだろ」
「ああ、そうだ。これは呪いの国にしかない高級の生地を使った最高級の着物だ。汚されたら困る」
やっぱりだ。こいつはまるでずる賢い狐のような性格をしているそうだ。負けたらご両親に言い訳をするだろう。
(あの選手は美しいものが好きそうだ。登場したときも美しく華やかに出ていた。だとすれば俺はまだ出していない妖術も)
俺は方法を考えた。
(あ、天城は今考えてんだろ。だったら今のうちに)
「寸善尺魔・狐火」
その瞬間、競技場中が火で覆われた。炎の形をしている狐が火を噴いている。
(観客の人たちが危ない)
当然、白石も混乱している。
「ええ〜!蘭丸選手、これは〜。どうなってるんでしょうか〜競技場が火事になったら大変なことになります〜」
白石は誰かを呼びに行くのか競技場を去った。俺はとりあえず、春夏秋冬の冬を司る神の妖術を出すことにした。
「雪月風花・黒姫」
するとヤツデの葉のうちわから僧が使用する錫杖のような杖へと変わった。その妖術で黒姫、あるいは宇津田姫を呼び寄せることができた。
「冬の姫だと。フン、俺は美女に惹かれる狐ではないんでね」
「そうか、これからだよ」
黒姫は透明感な肌をしている。真っ白な着物を着ていた黒姫が突然舞う。舞っていると、地面に氷ができている。
「あそうだ。次はあれあれ」
蘭丸選手が地面に手を着いたときだった。とてつもなく冷たい氷に触れてしまった。そのせいかなにもできなくなった。
「おっと〜、天城選手が黒姫という冬の神を使って蘭丸選手を何もできなくした!黒姫は冬の神。ちなみにこれはどちらが勝つんでしょうか」
白石が良い解説をしていた。
「このままだと俺の妖術が出せないじゃないか」
蘭丸選手は逆上し、所持していた長刀で天城に斬りかかってきた。それでも俺は避けながらその杖で振り回していく。
「地味で、あまり目立たないお前がなぜ、こんなに妖術が出せるんだ」
俺は「知るか」と返した。斬りかかってきても俺は振り回していく。振り回し続ける。
「知らなくないよな」
蘭丸選手にたいして、俺はそろそろ言わないといけないか。そう感じてきた。
(こいつは見た目だけで判断されて選ばれてきたんだろうな)
俺は「蘭丸選手」と呼んだ。蘭丸選手が長刀で俺を斬ろうとした瞬間、タイミングでその杖を使って蘭丸選手の首を斬るように強く叩いた。
「お前、そろそろいい加減にしろ。地味でも綺麗でもそれは形、外見だ。大事なのは優れた実力の方だろ」
ぶちっと切れた糸が俺を苛つかせてしまった。蘭丸選手はそのまま倒れてしまった。気絶だ。それだけでなく首に痣を作ってしまったのだ。
「宇津田姫、舞はもう終わりにしろ」
すると宇津田姫は消えていった。
「え、えっと…その…これは」
「白石、これはこの勝負、もう終わりだ」
観客たちは驚き、言葉を失った。死んだのか、ただ気絶しているのか。そのような言葉しか思っているように見えた。
「天城選手の勝ちです!!」
観客たちは歓声を上げた。俺は耳を塞ぎながら控え室、観客席へと向かう。
(はぁ〜、ひんやりした〜)
青蘭は寒気に気持ちいいと思っているのだ。




