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妖の追凶〜time of hell〜  作者: 羽波紫希
守護国覇王戦・冷気の怪物編
88/91

86.二回戦

「お疲れさま」


俺が観客席の方に来たのは青蘭だ。見かけたのでそう言った。すると、「お疲れ」と返された。


(ずいぶんと敬語が使ってない)


俺はそこで注意をしたいが、身分が当然違う。俺は十二式神の守護人でもあるが平民。青蘭は千暁の息子だ。


(いや、これでいいのか)


青蘭がちょこんと観客席に座ると何か頂戴という合図の手を俺にしてきた。


「なんか頂戴」

「いや、食べ物とかはないからあげられない」


すると青蘭は小さく舌打ちをした。再び始まりのアナウンスがなると観客たちは静かになった。


「それでは~第二回戦、開始します」


ようやく始まった。第二回戦だ。次の選手は誰だろう。と俺が予想していると次の選手が登場した。


「まずはこの選手。水の国では綺麗な妖術と評価され、圧倒的な美貌をもち男女関係なく好かれる、水蓮(すいれん)選手」


歓声が上がった。だが俺は水蓮選手のことは知らなかった。青蘭の方も何となくで見ていたので知らないようだ。


「さあ次はこの選手。鬼の国では最強と呼ばれる酒呑童子、の息子・鬼童丸(きどうまる)選手」


鬼童丸選手は銅の重りのとてつもなく大きい鎖分銅(くさりぶんどう)。水蓮選手はを持っていた。


(鬼童丸。あの妖怪はかなりの実力を持っている。なかなか勝てないかもしれん)


俺は考え事をしていた。青蘭を倒すために、この鬼童丸というやつをどうするか。すると、「準備はいいですか~?」と白石の声が聞こえた。俺は途中で考えるのをやめにした。


「よ~い。はじめ」


白石が言った瞬間鬼童丸は鎖分銅を振り回し、水蓮選手は杖を持ち何かを唱えはじめた。


妖姿願霊(ようしがんれい)(さざなみ)


すると水のか溜まりでできたアマビエと小さな波を出していた。だが、鬼童丸は鎖分銅で振り回し、破壊する。


沈魚落雁(ちんぎょらくがん)水沫(すいまつ)


次の妖術は人魚姫だ。その姫が水滴を垂らしたと思いきや爆発をした。水蓮選手はまだ諦めていないようだった。しかしそれも鬼童丸には聞かない。


破邪顕正(はじゃけんしょう)破砕(はさい)


鬼童丸は観客たちがいるのにもかかわらず次々と鎖分銅で振り回していく。水蓮選手は数倍もある銅の重りを走り避けている。


「水蓮選手が二回妖術を出しています。しかし、鬼童丸選手の妖術によりやられた!!まずいです」


白石の実況に観客たちは動揺している。


(いつ、殺されてもおかしくない状況だな)


水蓮選手と鬼童丸の実力だと圧倒的な差がでている。水蓮選手は水を使った妖術。杖を使って何かを唱え、その妖術を出す。鬼童丸は鎖分銅という銅の数倍の重さの重りの鎖武器。その武器で振り回し、破壊をする。


(観客たちも水蓮選手が心配な人も多いだろう)


俺は何となくそう感じた。だが、隣にいる青蘭は無表情で見ていた。興味なさそうに見てるのか全く分からない。


「見ててつまらないのか」

「いや、つまらなくないです。何となく俺は鬼童丸選手と戦うことになるかもしれないからです」


何を言っているのかさっぱり分からなかった。


「それはどういうことだ。青蘭」

「予想だ。もし、そうなれば鬼童丸選手は破邪顕正で壊すように俺を倒すかもしれない。だとしてそれでいいです」


青蘭は腕を組みながら物事を考えるような目付きをして見ていた。


* * *


鬼童丸と水蓮選手はまだ戦っている。水蓮選手は体力が少し衰えていた。もうそろそろ限界に近づきそうだ。


「はぁ...はぁ...」


水蓮選手は鬼童丸選手の鎖分銅の重りを避け続けていた。


「これでどうだ。水蓮、無駄だ。いつまで避け続けても勝ち負けが決まんなきゃ意味がねえよ!」


それでも水蓮選手は銅の重りを走り避けながらタイミングを見ていた。


(これはいつまで経っても無理だ。もし止まれば重りに当たって死ぬ)


水蓮選手は鬼童丸の気付かれないタイミングを狙っていた。


「おい、どうした。そんなんじゃ時間もかかる。いい加減負けを認めろ!」


鬼童丸に言われても水蓮選手は無視していた。観客たちは迫力と緊張が混ざっている状態だ。すると、観客の一人が水蓮選手について話していた。


「ねえ、水蓮選手って昔から屋敷の外にあまり出たことがなかったらしい。病弱で」

「え、水蓮選手可哀想。でもここまで来たのはすごいよ」


それを耳にしてしまった。水蓮選手が病弱で屋敷から出たことがないことを。杖で妖術を使えるからこの戦にも出られただろう。


(俺は守護国覇王戦に出ることが夢だ。今、ここで鬼童丸と戦っている。叶うとは思わなかった。推薦されるとは思わなかった)


水蓮選手は銅でできている重りを避けている。夢だった戦にも出られた。


(だからこそだ。走り避けても同じことだ。だったら攻撃をするしかない)


水蓮選手が杖を使って妖術を出そうとしたときだ。鬼童丸が鎖分銅で水蓮を撃破。その瞬間、水蓮は大量出血をし死亡。


「あ…あ…水蓮選手が死亡…」


白石は言葉が出てこない状態だ。観客たちは号泣する人もいれば、泣きそうになる顔をする人がいた。


「あ~~~!」

「水蓮様~!」


俺はあまりにも衝撃な出来事だった。まさか、妖怪一人がなくなるなんて。鬼童丸は当然、辞退しざる終えない。


(鬼童丸…この妖怪は極悪人だ)


なにも言えなかった。すると、青蘭が下を向いていた。何か笑うのを我慢しているように見える。


「あ、天城。鬼童丸選手は退治、しませんよ」


青蘭は笑いそうになりながら俺に言っていた。


「…そうか」


俺は内心では呆れていた。多分、青蘭は水蓮選手が亡くなったことで笑っているに違いないだろう。


「だって、あの妖怪は酒呑童子の息子。なので逆らえば殺されます」


その後、青蘭は途中で我慢ができなくなり笑ってしまった。観客たちには聞こえない声だったので大丈夫みたいだ。


「何がおかしい」

「水蓮選手が殺されたとき、俺、こんな展開見たことがないと思って」


俺は同情も出来なくなった。


(次、青蘭が相手だったとき、こいつを殺す)


そのとき俺は心のなかで誓った。


「あー、あー。それでは少し時間が経ったら再開します。鬼童丸選手に関しては出場を辞退いたしません」


白石が言っていたことに対し、観客たちは批判をした。


「どういうことだ!鬼童丸選手が水蓮選手を殺してまた出場するだと!?絶対許さん」

「この戦を中止しろ」


だが、白石は「これは無理なことです」と言った。


「無理だと!?」

「次、また同じようなことが出たら帰ろ」


守護国・水の国の妖怪のほとんどが帰ってしまった。水蓮選手の応援で来ただろう。


(あ、そろそろか)


俺も次の試合にでなければならない。そろそろ控え室へと向かった。

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