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妖の追凶〜time of hell〜  作者: 羽波紫希
華の道しるべ編
76/82

75.討伐

「ワタシの名は"カシャ"だ」


とてつもなく醜い猫の怪の名は"カシャ"と名乗っていた。


(化け物みたいなあの猫…どうにかならないの?僕あんなの絶対無理だ…)


海斗は最初から諦めようとしている。地獄の裁判のときに有罪と判決されたことを思い出した。だが、地獄に行くことはなく仮釈放。


(地獄には行かないくらいの範囲で倒さなきゃ…)


焦っている海斗を見た青蘭は怪との肩をポンと叩いた。そのことに海斗は思わず叩かれた気配がしたのだ。


「海斗、今はあちこち考えない方がいい」

「そんなこと全然考えないよ…」


海斗と青蘭が目を離した隙に"カシャ"という猫の怪が燃え広がっている天井へと向かい、そのまま消えていったのだ。


「鳥山くんたち見て。"カシャ"が逃げてった!」

「あ~クソ!」


紅葉が二人に伝えたことに対し、海斗は自分を焦り始める。青蘭は小さく舌打ちをした。


「取りあえず外に出よう」


青蘭は二人に『風森屋』から出るように言った。



無事に三人がその店の外に出ることに成功すると"カシャ"は燃え広がっている店の屋根の上にいた。


「紅葉、空は飛べるか?」


青蘭が紅葉に聞くと、「自分では飛べないけど」と言っていた。


「あ、空を飛べる生き物ならつくることは可能だけど…」

「それでいい。紅葉が何かしら作って俺が氷の妖術で"カシャ"を攻撃するから」


すると、紅葉は火炎の妖術を使うことにした。もし、威力が足りないせいで消えてしまったらどうしよう。そう思っていても仕方がない。


(もし消えてしまっても責められる…それでいい)


紅葉は覚悟をしながら手を差しのべるように構える。すると、てから火が出てきた。何かを持ち上げるように手を上へ上げると火の粉が舞い上がったのだ。


「いやああああああ!また絶対に火事になるだけだってば~」


紅葉は思わず悲鳴を上げてしまった。


(紅葉…本当に大丈夫か…)


そのことに青蘭は心配をした。


(絶対…そんなことはないと思うよ…)


海斗も紅葉に励ましたい。けれど、これでいいのかと思うとなかなか口には出せなかった。


「もう一度やってみて」

「わかった」


紅葉がもう一度同じことをすると、火の粉が出た。それを何回かすると、炎でできた鳳凰が出た。


(よし!)


青蘭は内心では喜びながらガッツポーズをした。


「ありがとう。紅葉」

「こちらこそ。でも時間がないから乗っちゃって」


海斗が紅葉に礼をした。しかし、いつ"カシャ"が逃げられてもおかしくないため三人は急いで乗る。炎でできている鳳凰が空を飛んだ。


「あそこか…」


青蘭が独り言で呟いていると、"カシャ"がだんだんと巨大化していったのだ。


「…はっ!嘘だろ…」


それを見て、海斗と青蘭と紅葉は愕然。


(僕がこの街の人々を一人でも死なせたら完全に地獄行きだ)


海斗は人間の死者であることを自覚している。大嶽丸を倒したときから妖術は使えるようになっていた。


(青蘭は氷の妖術が使える。だがそれも限りがある。強いから勝てるとは思わない)


海斗自身が変わらないといけない。このときの瞬間、そう思った。


(黄泉の国でもこの世にいる親族に忘れられたら消えるだろう。死者同士で争いが起こったら重傷。あるいは死亡もあるだろう)


そうなると、"カシャ"を倒さないといけない。それだけでなく、神楽坂での失踪事件の真相を明らかにしなければならない。その二つの両立をするのだ。


(だからここでも何とかして行動をしなければ)


すると、海斗も何かしらの妖術を出したのだ。


泡沫夢幻(ほうまつむげん)水底(みなぞこ)


その妖術のお陰で街中の燃え広がっている火を消すことができた。しかし、"カシャ"に効果はない。鳳凰はさらに上へと向かって飛んだお陰か水に触れることはなかった。


「あ、突然ごめん。僕が何かやらないと思ってつい使っちゃった」


泡沫夢幻の妖術を見た青蘭と紅葉はとても予想外だったことで何も言えてない。すごかったなどの言葉が頭の中に出てきてないのだ。


「海斗、ありがとう。何とも言えなかった」


それはどういうことなのだろうと海斗は首をかしげた。


「けれど、火は消えてるからそこでさ。氷の妖術を使おうと思うんだ」


海斗の妖術の泡沫夢幻・水底で『風森屋』ら辺の街の火を消した。


「紅葉は鳳凰を作った。海斗は泡沫夢幻という妖術で火を消した。まだ俺は何もやってない。だからそれぞれの役割がある」

「じゃあ、青蘭の今の役割はなに?」


海斗に聞かれた。今の役割なんてない。これからだ。


「それは、これからのお楽しみだ!」


すると、青蘭はあることを思い付いたのだった。


「これだったら、どうかな!」


青蘭がそう言い、凍りついている屋根の上まで飛び降りたのだ。


「あ、おい!青蘭、待って!」


海斗が青蘭に少し待つよう言ったが聞こえなかった。青蘭は巨大化している "カシャ"のところまで飛び降りている。それまでに氷の妖術を使うことにした。"カシャ"は巨大化しているため、屋根が崩れている。


(屋根が崩れているな。でも、氷の妖術で固めればいいか)


青蘭が手に氷の欠片を少しずつ貯めている。"カシャ"のところまで落ちた直後に固めるつもりだ。


砕氷(さいひょう)一片の氷心(いっぺんのひょうしん)


"カシャ"のところへ落ちた直後、青蘭はその猫の怪の頭を素手で殴った。すると、手に付いた氷が欠片のように砕け、水滴が飛び散るような速さで飛び散った。その氷はしたに飛び散るのではなく、"カシャ"の体にくっついた。


「これでくっつけえええええ!」


青蘭は強く願いながら言った。まだ唸り声はない。手は血だらけだ。だけど、慣れていたため痛は感じない。


(これだとだめだ。青蘭が先に限界がくる)


それを見ていた海斗は紅葉に「"カシャ"のところまでお願い」と伝えた。すると、鳳凰がその猫の怪のところまで向かう。


(私も戦いに参戦したいけど、火と火は相性が合うからもっと燃え広がってしまう)


紅葉はそれでも仕方ないと感じた。決まった役割だから。


"カシャ"のところまで着くと、海斗は青蘭のところまで飛び降りたのだ。


(もう一度行くんだ、僕!)


海斗は歯を食いしばった。寒さでもない。怒りでもない。ただ、役割を果たす。それだけだ。


泡沫夢幻(ほうまつむげん)灰雪(はいゆき)


海斗が"カシャ"に触ると、その猫の怪に寒気を感じたのだ。また、その猫の怪には吹雪のような風に舞い散る雪が降っている幻覚を見た。それを見た隙に青蘭は砕氷・一片の氷心をし続けた。


続けているうちにその猫の怪は固まった。


「これで終わったか…」


海斗は安堵したような気持ちだ。まだ完全に安心していない。青蘭も同じだ。


(二人はすごいな…)


それを見ていた紅葉は自分と二人の実力の差があると感じた。

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