74.猫の怪・■■■
(中は本当に暑い)
『風森屋』の中に入った瞬間、猛烈な暑さに包まれていた。そのせいか海斗は大量な汗をかいた。
(二人は妖怪だから汗をかかないのか)
一緒に入った青蘭と紅葉は一滴も汗をかいていない。海斗の種族は人間。青蘭は妖狐。紅葉は鬼。三人とも全く違う。
「海斗はなるべくなら火を触らない方がいい」
青蘭が言ったが海斗は「当然だ」と強く返した。
「そんなことくらいわかるよ。何言ってるんだ。死者になったとしても触んないよ」
「そう?でも俺は触れることはできる。少しくらいなら」
「私も触れることはできるけど、火がそれ以上燃え広がらないようになるべく触れないようにしてるの」
海斗と青蘭はそのことに頷いた。
(二人は妖怪だから火傷してもすぐに治りそう。僕もそうなりたかった)
青蘭と紅葉を見て海斗は羨ましい目で見た。すると、青蘭が海斗の方を向いた。
「どうした?海斗何で俺と紅葉を見てたの?」
「あ…いや…それは…」
海斗が戸惑っていると青蘭が「ねえ」と優しい口調で問い詰めていた。
「もしかしてあれか。紅葉のことが~」
青蘭に誤解を招いたようだ。海斗が紅葉のことが好きだと思っている。
「もうそれ以上は言うな」
「ごめんね。もう言わないわ」
海斗は珍しく暴言を吐いてしまった。しかしそのことに青蘭は甘えるような口調で返した。それだけでなく少し舌を出した。
(女に化けている青蘭があざとく言ってるの本当にむかつくわ)
呆れて何も言い返すことはない。二人の会話を見ていた紅葉は伏せて笑った。海斗と青蘭に気付かれると行けない。そう思ったからだ。
「もうそろそろ猫の唸り声の原因を探そう」
「あ、そうだった。ごめん紅葉。このあざとい女のせいだから」
「はいはい。悪かったわね。ごめんなさい」
紅葉が二人に伝えると海斗は青蘭のせいにした。それに対し青蘭は自分が悪いと認め、謝った。
海斗、青蘭、紅葉は炎に包まれる中猫の唸り声がなる原因を探し始めた。
(見えない…)
火事になっているせいか薄黒い煙で回りがよく見えない。海斗は長袖。青蘭と紅葉は着物の袖で口を隠しながら進んでいった。
(店の通路なら知ってる。火を使う部屋といえば厨房だ)
青蘭は厨房を探すことにした。着くと完全に薄黒い煙のせいでどこに何があるのかが全く分からない。
(取りあえず手で触ればいっか。少しくらいならいけると思うし)
手触りで確かめた。すると、手が真っ黒になってしまったのだ。
「見当たらないね」
紅葉は二階にある部屋を見た。縁側があるため薄黒い煙は少しだけ残っている。
(一体、原因は何だろう。ここにはなかったから他の部屋とか探してみよう)
二階から一階へと下りた。すると突然、猫の唸り声がなったのだ。
(何だ、一体…)
(私からも近いわ)
(厨房のどこかだ)
海斗と紅葉は厨房の方へと向かい、青蘭は厨房のどこかを探した。
(取りあえず厨房のどこかだからそこを探そう)
青蘭は急いで猫の唸り声の原因を探すことにする。だが、火事のせいで薄黒い煙が漂っている。そのせいか前が見えない。どこに何があるのかが分からない。
(おかしいな…)
確かに猫の唸り声はした。厨房の中が一番大きい。
(俺の間違いなのか。でもここから大きな唸り声はした)
青蘭はもう一度猫の唸り声の原因を探し始めた。すると、青蘭はあることを思い付く。
(今度は氷の妖術を使ってみようか)
そう思い付くと、試しに氷の妖術を使って火を消してみた。
(氷棘凍土・乱氷)
すると、厨房の中全体が氷の棘で覆われた。そのおかげか火を消すことはできた。その近くに海斗と紅葉はいない。なので怪我の心配はなかった。
(壊すのはまだだ)
青蘭は十秒間だけ待つことにした。破壊力を溜めるためだ。
「いた。青蘭!」
その声は海斗だ。紅葉も一緒に来ていた。偶然会っただろう。
「海斗!紅葉!ここの近くから離れろ!今、俺が氷で覆われているところを壊すつもりでいるから」
「えっ、壊すってどういうことなの?」
「説明は後でするから」
取りあえず海斗と紅葉は厨房から少し離れた場所に逃げた。
(ひとまずよかった)
海斗と紅葉を危険に合わないようにした。残りは五秒残っている。
(四、三、二、一)
手を握り閉めている状態でいた。一秒後のタイミングに合わせ、手を開く。すると、氷でできている棘を一瞬で壊していった。
(これで行けるか)
青蘭がそう思っていたその時だ。再び、猫の唸り声がなった。その声は厨房の床の下からの声だ。
(これは床を壊すしかないな)
だが、火を放つことはなかった。
「青蘭!本当に大丈夫か」
「ありがとう、大丈夫だよ。怪我は特にない。ニ人は怪我はないか」
「私は特に。鳥山くんと一緒に少し離れたから」
「僕も怪我は全然大丈夫」
ニ人は怪我は特になさそうだ。
「よかった。じゃあ、これからこの床を壊す。この下に原因があるからね」
青蘭が淡々と言った。
「それはどうやって壊すの?武器とかないから」
紅葉が青蘭に聞くと、「これを使うんだよ」と答えていた。着物の懐から小さなナイフを出していたのだ。
「ナイフなんてどうやって使うんだよ。全然床を削れないと思うよ」
「それがね壊せるんだよ。神楽坂の建物を見てると和風建築だから簡単に床は壊せるよ。木材でできているからね」
そう言い、青蘭は思いっきりナイフを床に刺した。抜くと、床にナイフで刺した跡の穴が残っている。
(次はどうやってやるんだ…)
海斗は青蘭の方法に理解が一つも追い付いていない。それでも見続けた。すると、青蘭はナイフで床を円の形にして切ったのだ。
(円の形にして何をするんだろう)
紅葉は一瞬、何かの儀式だと思っていた。青蘭の地元での風習だと。
「これでよし」
すると、青蘭は足で円の形に切った部分を押した。
「この中に逃げよう。猫の唸り声の原因を探そう」
ニ人は「分かった」と返した。中に入ろうとした瞬間、突然猫の唸り声がなる。それだけでなく、猫の怪が直接出てきたのだ。
「あれが猫の怪…」
海斗は小声で呟くように言った。
「ワタシの名は"カシャ"だ」
とてつもなく醜い猫の怪だ。カシャという名前だ。炎で覆われている。
(この猫の怪を倒すことはできるの?)
海斗は不安ながらもそう思っていた。




