71.接近
(まだ猫の鳴き声が聞こえるな)
海斗は心の中で思っている。3人は炎でできている鳳凰の上に乗っていた。空を飛んでいる鳳凰は『黄鈴屋』近辺まで向かうことになった。まだ猫の鳴き声が聞こえる。2回、3回、4回。次々とだ。
(…はっ!店全体が物凄く燃え広がってる)
上から見て海斗は『風森屋』ら辺の店が燃え広がっていることに吃驚した。だけど、店が火が燃え広がる中出歩いている妖怪や死者が誰一人いない。そのことで海斗は安堵した。
「海斗、志野さん、気持ち悪くないですか?」
今、3人は鳳凰の上に乗っている。
「私は気持ち悪くないよ」
「僕も今はそんなに」
海斗と志野はまだ気持ち悪くなっていない。
「なるほど」
青蘭は独り言で呟くような声の大きさで返した。すると、青蘭が気分が悪くなり始めたのだ。嘔吐までは行かなかった。
(何だろう…もしかして鳳凰の上に乗っているから酔ったのかな…)
青蘭はそう思い込んだ。取りあえず下を向かないようにした。今、3人が乗っている鳳凰は炎でできている。不思議なことに尻が燃えていない。
(でも海斗と志野さんに絶対言えるわけがない…)
下を向きながら『黄鈴屋』近辺まで着くのを信じている。海斗と志野には言わずに耐えた。
(吐きそうだ…)
青蘭はいわゆる乗り物酔いになる体質だ。妖怪でも人間と同じで乗り物などで酔ったりするときがある。それでも着くまでは耐えると決めている。
(大丈夫だ…大丈夫だ…)
信じているときだった。海斗が2人に話しかけた。
「雪乃、志野さん。『風森屋』が誰かによって燃やされて何だか可哀想ですね」
「本当に店が燃やされて悔しいよ。せっかく客も増えてきたところだったし。雪乃ちゃんもそう思わない?」
「確かに私も悔しいです」
そのことに対して、2人は曖昧な返答をした。青蘭はため口で話したかった。志野がいたことで敬語で返しえしまったのだ。
(後に気付かれるとまずいことになるな)
青蘭は益益と不安になっていた。
その一方、真っ暗な夜の中で藍は『黄鈴屋』という店の前で掃き掃除をしている。
(鳥山くん遅いわね…)
藍は壊とのことを心配している。
「鳥山海斗!青蘭!いつになったら戻ってくるんだ~!!」
今までの怒りを溜め過ぎたあまりか思わず口に出してしまったのだ。それを周囲の人たちに見られたしまい、藍は顔を真っ赤にした。すると、男性の死者が「大変だ~」と言いながら慌てて走ってきた。
「大変だ大変だ~!今、丁度見てきたら『風森屋』の方では火事が起こってるぞ!」
それを耳にした藍は吃驚した。
(そしたら鳥山くんたちが危ないじゃん!待ってて、鳥山くん!青蘭くん!)
急いで店の中に入り、紅葉がいる部屋へ向かう。
「紅葉ちゃん!」
藍は襖を勢いよく開けた同時に紅葉の名前を呼んだ。そのとたんに紅葉と3人の子供妖怪は驚いてしまった。
「いきなり…どうしたのですか…?」
「ちょっとお願い…したいことがあるからいい?」
すると、藍は荒い息をしながら言う。
「鳥山くんたちのことなんだけど…ハァ…ハァ…」
鳥山くんと言っていたとたん、紅葉は思わず「あの」と勢いよく口に出してしまう。
「鳥山くんはどこに行ったの?」
「いや、それがまだ帰ってきてないから紅葉ちゃんに妖術で何が使えるかを聞きに来ただけだっつーの」
紅葉が聞いたことに対し、藍はつっこみをした。
「あ、それなら私は火炎の妖術なら使えますよ」
「それって…尻は燃えない?」
「全然燃えないので大丈夫です」
紅葉は優しい口調で返した。
「よかった〜!ありがとう~!紅葉ちゃんは恩人だよ!」
燃えないと聞いた瞬間、藍は紅葉の手を掴み握手をした。
「え?あ、だったら私も鳥山くんのところへ…」
「助かったよ~!」
紅葉が言おうとしていたことは藍に届かなかった。と、そのときだ。部屋の襖が開く音がした。
「ふぁ~、疲れた疲れた。ここで休憩するかって…藍ちゃん!?」
なんと、そこにいたのは『黄鈴屋』で働いている従業員の一人。仕事で疲れたため、あくびをしている。
「姫楽ちゃん!?あ、これはね…その…」
「藍ちゃん今日仕事休みじゃなかったっけ?」
「休みだけど、鳥山くんたちを助けたくて私の妖術だと全然威力が足りないから」
「その話を聞ちゃったなら子どもたちのことは任せて!」
そう言い、姫楽は3人の子供妖怪の面倒を見た。
(龍翔鳳舞・火速)
紅葉は二階の部屋の縁側から炎でできた龍を出した。
「すごい!」
「かっこいい~!」
「うらやましい~」
それを見ていた3人の子供妖怪は感心をもった。
「藍さん、縁側から龍の背中に乗りましょう!」
「え!?縁側から?大丈夫かな…」
高いところが少し苦手だった藍にとって、縁側から飛び降りて乗るのに不安だ。
(いや、でも駄目だ。鳥山くんと青蘭くんを助けに行くんだから)
藍は勇気を振り絞り、縁側から飛び降りるように龍の背中へと乗る。その後、紅葉も同じようにした。
「あ…助かった…」
藍は炎でできている龍の背中に乗った直後に安堵した。
「それじゃあ姫楽さん、子どもたちのことをよろしくお願いします」
紅葉が言うと、姫楽は「ああ」と返した。すると、龍は素早く海斗たちの方へと向かう。
「うわ!速い速い!でも尻が燃えてない!不思議!」
「藍さん、この龍は目が回りやすいし、酔うのですよ」
炎でできている龍は2人が気絶するくらいの速さを出している。すると、遠くから猫の鳴き声が聞こえたのだ。それだけでなく、『風森屋』ら辺の店に火が燃え広がっていることに2人は気付いた。
「それより目が回る~!酔ってきた!」
「鳥山くんたちは…」
その龍はあちこちと海斗たちを素早く探しているため、酔いやすい。
(ん?あれは…)
すると、紅葉は炎でできている鳳凰の姿が遠くから見えた。よく見るとそこに乗っているのは3人だ。
(私の妖術だ)
炎でできている鳳凰。あれは、完全に紅葉の妖術だと確信した。
「あの鳳凰に乗っている3人のところへ向かってください」
すると、その龍はすぐに炎でできている鳳凰のところへ向かった。藍は完全に目が回り、酔って気絶している。
「…はっ!藍さん!大丈夫ですか!」
そのことに気付いた紅葉は藍の体を揺らした。
「お願いします、目を覚ましてください!お願いします…」
それを何回も繰り返して言った。そのうち、鳳凰のところへ既に通っていた。
「紅葉?」
紅葉に話しかけてきたのは海斗だ。鳳凰に乗っている。
「鳥山くん!今、藍さんが目を覚まさないのです」
龍に乗っている紅葉は鳳凰に乗っている海斗に聞こえるように返した。だが、海斗には聞こえなかった。
「今何て言ったの?」
「藍さんが目を覚まさないのです!」
海斗はそのことに「どこかで降りた方がいいんじゃない?」と教えた。すると、同じく鳳凰に乗っている青蘭が考え事をしている途中、誤って転落をしたのだ。
「まずい!私、落ちたー!」
女子高生に化けているため、落ちて重傷を負う確率はかなり高い。
「あ、青蘭く~ん!」
「私は青蘭じゃないよ~!!」
紅葉が青蘭と呼んだとたん、青蘭は転落しながら大声で言った。




