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妖の追凶〜time of hell〜  作者: 羽波紫希
華の道しるべ編
71/82

70.炎上

「あれ…」


海斗が目を覚ました。だが、青蘭に背負い投げをされたせいで意識はまだ朦朧としている。


「青蘭…」


店の曲がり角で女子高生に化けている青蘭が志野と話している姿が見えた。猫かぶりをして海斗のことを悪く言っているようにしか見えない。


「それでね~海斗は何度も付きまとってくるから私も何をしたらいいのか分からなくなっちゃって」


青蘭が志野に話しているうちに海斗は少しずつ立ち上がっていく。それが完全にできるようになると海斗は青蘭のところへと行った。


(青蘭…猫かぶりしやがって…)


海斗は女子高生に化けている青蘭の顔を見ながら目を細めていた。すると、青蘭も海斗がいたことに驚いて「わぁ」と声を上げる。


「海斗!急にここにいたらびっくりするよ」

「海斗…?誰?」


聞いていた志野が青蘭に聞いた。それを耳にしていた海斗が「それは僕です」と自分の顔を指で指しながら言う。


「あなたが海斗…?」

「はい。そうです!名前は鳥山海斗と申します!僕のとなりにいるのがせいらっ」


海斗は自信満々と名前を申し出る。その上、となりにいる青蘭の名前を言おうとしたとき、青蘭が海斗の肩を中指、人差し指、薬指で押した。


「痛っ!イタタタタタタタタタっ!」


青蘭が押すときの痛みはマッサージのプロがするときくらいだ。


「痛い痛い!やめて!流石に痛いし肩凝る」

「無理だね。やめるつもりはない」


その痛みに耐えられなかったため、青蘭にやめさせようと求めても止めることはなかった。


「すみませんでした!」


すると、青蘭は海斗の肩を押すのをやめた。そのことに海斗は安堵した。


(雪乃ちゃんって本当に女…なんだよね…?)


それを近くで見ていた志野は思わず鳥肌が立つ。女子高生に化けているにもかかわらず海斗の肩を押したとたん、痛いと叫んでいた。


「海斗、全然大丈夫。でも、次はないから気をつけてね」


青蘭は作り笑いをしながら言った。志野がいるため、青蘭と名前を呼ぶことができない。また、有名人でもあったためだ。もし海斗が青蘭と呼んでしまうと志野に知られてしまう。


「まずい海斗くん、雪乃ちゃん、そろそろここから逃げないと」

「…あ、すみません。僕は雪乃を探しに行くためにあちこち探し周りました」


それを聞いていた青蘭は「ありがとう」と小声で呟くように返したのだ。3人は店の曲がり角から『黄鈴屋』近辺まで逃げ始めることにした。


「それじゃ、逃げましょう」

「分かりました」


志野が最初に言ったあと、青蘭が返した。その後に海斗も「はい」と言う。


海斗が先頭で『黄鈴屋』近辺まで逃げ切るのが目標。着物姿の志野と青蘭にとっては速く走ることができない。そのため、長距離走が苦手な海斗は洋服を着ているため遅く走ることができる。


「僕なら『黄鈴屋』までの距離を覚えています。なので、着いてきてください」

「じゃあ、海斗くんお願いね」


2人は『黄鈴屋』近辺まで海斗に着いていくことにする。海斗は2人が着物姿のためにゆっくりと走った。2人も海斗に着いて来ている。


「海斗、志野さん、逃げている途中で疲れたら言ってください。火事も何も起こっていませんので」


青蘭は『風森屋』に火を付けたことは海斗に言わないようにしている。だが、『風森屋』に火でできている猫の妖怪が怨霊化していることに誰も気付いていない。


(大丈夫だ。海斗には俺が『風森屋』に火を付けたことは志野さんに言わないようにしているからな)


青蘭は安堵していた。火を付けたことを誰かに気付かれたら大変だ。そのときは死者や妖怪が出歩いている姿は一人もいなかった。


(俺と志野さんの体力は大丈夫そうだ。けど海斗は…)


海斗を見ると体力は大丈夫そうに見える。汗はまだかいていなかった。


(海斗、何だか少し成長してる)


青蘭は目を細めながら見守っている。


「海斗くん、『黄鈴屋』までどれくらいで着く?」

「あともう少しで着きます」


海斗は後ろを振り向き、走りながら返した。すると、突然「ニャー」という鳴き声が聞こえる。その声は遠くから聞こえた。


(…ん?何だ?なにか聞こえる。猫?)


猫の鳴き声が再び聞こえる。それが次第に大きくなっていく。


「何か猫の声が聞こえてなかった?」


最初に言ったのは志野だった。海斗も「確かに聞こえましたね」と返す。


「でも、神楽坂に猫っていました?」


青蘭が志野に聞くと、首を振りながら「いない」と言った。


「そもそも神楽坂に動物はほとんどいないし、動物を持ち出すのを禁止にしている」


それを聞き、青蘭は違和感を感じた。動物はほぼいないのに猫の鳴き声が聞こえる。その声は『風森屋』近辺からだ。


(じゃあ、おかしいな。だったら怨霊化したのかもしれない)


青蘭は嫌な予感がした。妖怪の世界ではよくあることだ。すると、再び猫の鳴き声が聞こえる。その大きさはさらに増している。次第に大きくなると、『黄鈴屋』まで聞こえる。


「海斗、志野さん、もう少し速く走って逃げませんか?」


青蘭は2人に聞く。


「私は速く行けるけど、海斗くんはどうなの?」

「僕は洋服を着ているのでいつもより少し速く行けます」


2人は速く走って逃げることはできそうだ。そして、3人は少し速く走った。猫の鳴き声はまだ聞こえる。次第に大きくなっている。


(この調子で逃げきれば大丈夫だ)


青蘭はそう思いながら全力で逃げ切るそのときだ。


「シャーッ!!」


その声は猫が威嚇しているときだ。すると、その瞬間、『風森屋』を中心に店に火が素早く燃え広がっていた。風は吹いていない。たぶん、『黄鈴屋』近辺まではまだ燃え広がっていなかった。


「嘘だろ…」


海斗は頭の中が混乱していた。店が火で燃え広がったせいで地面まで燃え広がる。


(俺が氷の妖術を使って火を消しても猫の鳴き声でさらに燃え広がる。だとしたら…)


周りの死者や妖怪に被害が合わないよう、どうすればいいのか。青蘭はその方法を考えている。すると、海斗は「考えている暇なんてないよ!」とはっきりと言う。


「多少怪我をしてもちゃんと治療をすれば大丈夫だ。逆にやらない方がもっと被害は及ぶ。周りの死者や妖怪にも影響を与える。だから考える暇なんてない」


青蘭は「でもさ…」と言い返す。


「でもなんかじゃない。今は取りあえず試すしかその方法がない。考えている暇があったらもったいないぞ!」


それを聞き、「分かった」と返す。青蘭は氷の妖術を使い、試しに火を消すことにした。水はないが、一度やってみる。それ以外はない。


雪魄氷姿(せっぱくひょうし)白夜(びゃくや)


すると、青蘭の妖術で白夜という美青年が出てきた。雪のような白髪。透明な金剛石のような白い瞳をしている。白い漢服を着て、肌も透明感があるほど白い。


「白夜。店が燃えているから試しに火を消してみて」

「承知いたしました」


白夜という美青年が言ったあと、試しに火を消している。手のひらから氷を出しながら舞い踊っている。


「あっという間だ…」


それを見ていた志野は思わず口に出す。すると、再び猫の鳴き声が聞こえる。そのせいでさらに火が燃え広がっていく。


「やっぱりだめか…」


青蘭は悔やんでいる。


「白夜、ありがとう。もう撤退していい」


青蘭がそう言うと、白夜は消えていった。


(ん?あれは何だろう…)


海斗は上を見上げていた。炎でできている鳳凰が真っ暗な夜空を飛んでいた。そのことで海斗は手を振ることにした。


「お~い!助けてください!」


その鳳凰に気付くよう、大声ではっきりと叫んだ。すると、その鳳凰は気付いた。


「私たちのところへ行ってる!」

「ほんとだ。一体誰が…」


志野は感嘆の声を上げた。青蘭は炎でできている鳳凰の仕組みに興味をもった。


「ありがとう~!」


海斗は思わずその鳳凰に対してもお礼を言った。

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