69.怪化へ
「随分とここら辺に逃げている妖怪や死者が多いね。火事とかかな」
紅葉は部屋で3人の子供妖怪たちを見ているところだ。2階の部屋から下を見ると、死者や妖怪たちが何だかの理由で逃げている姿が見える。
「鳥山くんまでいない!?藍さんが掃き掃除?」
そのことで紅葉は困惑した。一体海斗はどこへ行ったのか。なぜ、海斗ではなく藍が掃き掃除をしていたのか。
(様子を見に行きたいけど、子供たちを置いていけない…)
紅葉は正直困っている。3人の子供妖怪のお花、心路、早知を置いていくわけには行かない。今は眠っているところだった。そのため、部屋に残っているのだ。
(何かあるかな…)
考えているうちにある考えを思い付く。
(あ、そうだ)
すると、紅葉は手を出しながら火炎の妖術を出す。調節が難しいが何とかなると思う。
(鳳凰来儀・火光)
紅葉が使っている妖術は、炎で光っている鳳凰だ。その鳳凰は太陽のように光り輝きながら飛んでいる。鳴き声はない。
「あなたは鳥山くんと青蘭くんが今どこにいるのかを探してきてくれる?」
すると、その鳳凰は海斗と青蘭を探しに行くため、『黄鈴屋』という店の二階の縁側から飛んで出ていった。
(鳥山くん…青蘭くん…どうか、ご無事でお願いします…)
紅葉は祈りながら2人が無事でいるよう願っている。
その店から出ていった鳳凰は炎で光り輝いていた。そのため、太陽のように綺麗だ。街中が真っ暗な夜で行灯などの灯りがついているおかげで不夜城。
「やっぱり、私が作り上げた妖術は暴走しそうだな…」
一人で呟いていた。紅葉は火炎の妖術で作り上げた鳳凰がいつ暴走をしていてもおかしくない状況だ。小さい頃に紅葉の妖術が暴走したときのことを思い出す。だが、それも時間が経てば忘れていく。
『黄鈴屋』の玄関の前で藍は掃き掃除をしている。
「私は今日仕事休みだっつ~のに!」
藍は思っていたことを大声で口に出した。そのせいで店の近くを歩いていた妖怪や死者たちは藍の方を見ている。
「この子どうしたのかしら?」
「さぁね。まっ、仕事の疲れとかで叫びたくなっちゃったのかしらね」
周りの人はそう言っている。そのことに藍はただ違う。誤解していると思っている。顔を真っ赤にしながら、掃き掃除を続けた。
(この掃き掃除って鳥山くんの仕事でしょ。私がなんでやらなきゃ行けないんだよ)
掃き掃除の仕事を終わらせるために素早く行っているところだ。
(私の休みくらい取らせろ~!!)
藍は内心では苛立ちをしている。
その一方で女子高生に化けている青蘭と志野は『黄鈴屋』近辺まで走って向かっている。
「あと少しくらいしたら『黄鈴屋』の近辺まで着くかもしれない」
「そうだね。着物姿で走るの辛くない?こんなのは久しぶりだ」
青蘭は「私はただ慣れていますので」と淡々と返した。
「へぇ~慣れてるんだ」
志野が言ったことに青蘭は聞いていなかった。走りながら上を向いていたからだ。
(なんだ…火でできている鳥?)
青蘭が鳳凰が飛んでいることに気付いた。それは紅葉が使える火炎の妖術でできている。
「雪乃ちゃん、聞いてる?」
志野に言われ、青蘭は「え?」と思わず言ってしまう。
「上を向いていたから聞いてないと思った」
「すみません。さっき上を向いていたら鳥が飛んでいるのを見ました」
それに対し、志野も上を向く。すると、本当に炎でできている鳳凰が飛んでいることに気付いた。
「本当に飛んでいるのね。ここら辺じゃ珍しいわ」
「私も知らなかったです」
その鳳凰は2人のところに向かっているようだ。鳴き声はないが、火の粉を散ら張りながら真っ暗な夜空を飛んでいる。
(私のせいでみんなを巻き込んでしまった)
志野が失踪事件を起こしてしまったことを後悔している。藍に対しての嫉妬。共犯と組んで次々とそれぞれの店の若い従業員を誘拐したこと。
(ただあれは個人的にやりたくなかったがやるしかないと思って誘拐したり、藍に嫌がらせをして店を辞めて行った。だから私のせい)
志野が犯した罪は決して許されないのは当然だ。営業成績の位は取り消される。店も解雇される。それでも責任を取ろう。罪を償う他はなかった。
(でも実は、悪事を犯すつもりはなかったんだ)
すると、志野は『黄泉の国』へ行く前の出来事を思い出す。それは、彼氏の自宅で夕飯を食べたときだ。このときはビーフシチューだった。幸せに暮らしていた。
―見て、夕日!このビーフシチューはね、僕が作った自信作なんだ!―
―すごいね~!やっぱり将来はお店を出すんだもんね―
志野が交際していた彼氏は将来、店を出すつもりで作っていた。そのため、サラリーマンとして働いて金を稼いでいた。
しかし、彼氏には裏の顔を持っていたことに知らなかった。
22時頃になり就寝するときだ。突然、志野は意識を失ったまま目を覚ますことがなかった。その後、鈍器のようなもので殴られた気がしたのだ。このときの犯人は交際していた彼氏だと。意識を失ったのも毒を盛られたことだと分かった。
その過去を思い出すと余計なことを考えてしまう。すると、「ねぇ」と言う声が聞こえた。
「志野さん、大丈夫ですか」
走りながら考え事をしていると青蘭に聞かれた。
「大丈夫だよ」
「いや、全然大丈夫には見えませんでした。何か辛い過去があるようにしか私には見えません」
青蘭には気付かれてしまった。言葉にすることはできない。だが、相手の気持ちを読み取るのはできるのだ。
「そっか…」
志野は気付かれたなら仕方なく青蘭に話そうとしたときだ。
「あれ?いた!」
『黄鈴屋』に向かう途中、店の曲がり角で海斗とバタりと会ってしまうのだ。
「海斗…」
「いた!心配したんだよ~!」
海斗が青蘭のところへ走っていき、嬉し泣きをしながら抱きつこうとしている。
(ゲッ…)
青蘭は密かに引いている。海斗が青蘭と名前を呼ぼうとしたときだ。
「せいら~ガッ」
「その名前を呼ぶな!!」
すると、青蘭は海斗を背負い投げをしたのだ。
「痛っ!!」
地面にあったときは物凄く痛い。そのせいで服に汚れが着いてしまった。海斗は着物ではなく、洋服をきている。
「すごい力だね…」
志野は苦笑いをしながら言った。
「大丈夫です、志野さん。この人はここら辺では見かけない変人ですから」
青蘭は海斗のことを変人呼ばわりした。
「そうなんだ…」
曖昧な返事をしたあと、青蘭は突然猫かぶりをしてくる。女子高生に化けているため、猫のような可愛い仕草だ。
「そうなんですよ~!志野さん、この変態男はね、あたしに付きまとってくるのですよ!私、この人とは縁を切りたくて…」
それに対して、「縁を切りたい?」と志野は聞き返す。
「そうなの…この人の名前は鳥山海斗。志野さんと同じ人間。でも、この男は女好きだから私に対しての執着がすごいのです」
「まぁ~!」
猫かぶりをしながら言っている青蘭に対して、何の疑いもなく驚いている。すると海斗が目を覚ましたのだ。
真っ暗な夜空の上で飛んでいる鳳凰は見守っているのだ。
その一方、『風森屋』は既に全焼。隣の店まで火が通っている。それが次々と火が燃え広がると店は火の海になってしまう。妖怪や死者は誰いない。
しかし、全焼している『風森屋』という店の中には炎でできている猫の妖怪がいる。鋭い目付き。そのせいで怨霊化している。




