表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖の追凶〜time of hell〜  作者: 羽波紫希
華の道しるべ編
69/83

68.火災

「ねえ、志野さん。あなたは何も考えなくていいです。ただ、私の友達の藍に対して嫌がらせをしたことには反省をしてください」


『黄鈴屋』という店の近辺まで走りながら逃げている間、青蘭に言われた。


「分かった。でも、雪乃ちゃんも店に火を付けたマッチ棒を捨てたのはさすがにまずいとは思ってないの?」


志野が青蘭に説得するような言い方で聞いた。


「まずい?それは違うね。まずいのは『風森屋』という店の従業員たちとあなたの犯行でしょう」


そのことで志野は何も言えなくなった。


(やっぱり雪乃ちゃん何者なんだ…マッチ棒を持ってたし私が犯人だと気付かれた)


志野は青蘭のことを怪しいと感じた。女子高生の姿なので気付いていない。


「私の犯行…しかも店の従業員たちまでって…それはどうしてなの?」


すると、青蘭は途中で立ち止まった。それと同時に志野も同じことをする。「はぁ~」と青蘭がため息を付く。


「やっぱり気付いてなかったのですね」


青蘭は無愛想に言った。すると、「じゃあ、ここであなたに教えます」と志野に教えることにしたのだ。


「なんで私があの店に火を付けたのかは分かりますか?」


街並みには周りが誰もいない。ここで『風森屋』に火を付けた理由を話す。


「あの店にはね、管理が足りていなかった。煙臭い匂いが絶え間なく続いていたからよ。正直に言うと、何か偽りがあるように感じた」


そのことで「煙臭い匂いって…」と志野は口に出した。


「そうです。あれは魚を焼いたあとが残ったのでしょう。窓が少なかったから換気が足りてないのですよ。火を付けたのは個人的に嫌だったから」


志野は愕然とした。青蘭の犯行は恐ろしいと。人間ができるようなことではない。


「じゃあ…偽っているというのは」

「偽っているというのはあの店の従業員たちがほぼ完璧にしないといけないと思い、偽りの笑顔で対応していたことです。一言で言うとあの店は『黄鈴屋』とは全然違かった」


聞こうとしたとたん青蘭に先に言われてしまった。


「嘘…」


志野は唖然としていた。『風森屋』の従業員たちはそれぞれ偽りの表情を作っていた。


「その答えを言いますと、個性と働く環境なんです。『黄鈴屋』と違うのは。藍は個性があったからですよ。あと、いくら掃除をしても無駄。設備が綺麗でも人間関係が悪ければ変わらないので」


青蘭がそう言ったあと、再び走って『黄鈴屋』近辺まで向かう。人気(ひとけ)はない。『風森屋』は既に火事になっている。



その一方で、ある男客が火事になっている『風森屋』の前を眺めていた。


「ほぉ~あの女やるな。火を付けて燃やすとはな。こりゃ~すごいことになったもんやな」


その男客の名は魅緑(みろく)。彼岸花柄の黒い着物を着ている男の妖怪だ。不気味な表情を浮かべている。


「どんどん面白くなってきたや」


そう言うと、魅録は『風森屋』を後にした。神楽坂から出ていく方向へと向かう。そして、その火事は隣の店にも火が燃え広がっていく。



真っ暗な夜の中の現在、海斗は『黄鈴屋』の玄関の前で掃き掃除をしていた。


「ふぁ~眠い眠い。早く中に入って休みたいな…」


あくびをしながら思っていたことを口に出す。風が冷たく感じる。海斗は死者だからか寒く感じない。


「早く終わらせるか」


掃き掃除の仕事を始めようとしたときだ。左の方向から妖怪や死者が走って逃げている音がした。


(なんだ~?火事とか不審者とか?)


海斗はそう思いながらも掃き掃除を続けた。仕事を終わらせ、店の中へ入るためだ。続けているうちに「鳥山くん」と呼ぶ声がした。


(僕、呼ばれた?)


左側を向くと藍が逃げている姿が見えている。『黄鈴屋』へ向かっているようだ。


(藍?なんで走ってるんだ?)


『風森屋』に行っていた藍が走っている。だが、一緒に行った青蘭がいないのだ。着物姿の藍を見て、海斗は何かあったに違いない。そう思っているうちに手が止まっていることに気付いた。


(取りあえず掃除をしよう)


海斗は再び掃き掃除を続けた。



数分が経つと、藍が海斗のところに走ってきたのだ。そのことに「わぁ!」と驚いた表情をしながら声を出した。


「鳥山くん!今、『風森屋』が大変なことになっちゃったの。多分、厨房の方から爆発音がなった」

「そうなの!?じゃあ…一緒に行った青蘭はどうした?」


すると、藍は「それは…」と言った。


「多分、女に化けて他の従業員達を助けに行った。それでまだここに逃げ切れてないかもしれない」


なんと、青蘭は女子高生に化けたまま『黄鈴屋』には戻っていない。海斗はそのことを聞き、助けに行くことにしたのだ。


「ちょっと持ってて」

「え!ちょっ、鳥山くん」


海斗は藍に竹箒を渡し、青蘭のところに行くため『風森屋』へと向かう。


「鳥山くん!『風森屋』の行き方分かるの?」

「分かんないけど、何とかなるから~!」


藍に聞かれたが、海斗は素早く『風森屋』という店を探しに行く。道も分からない海斗は必死に店の看板を見つける。


「どこだ?どこだ?どこだ~!」


あちこち行きながら『風森屋』の看板を見つけている。



その一方で、女子高生に化けている青蘭と志野は走りながら『黄鈴屋』近辺まで向かっている途中だ。


(あの店に俺が火を付けたと気付かれないように…)


青蘭は『風森屋』に火を付けたことを誰かに気付かれないよう、内心で祈っている。顔に紫色の痣がある志野は青蘭を見る。


「雪乃ちゃんは…店に火を付けたことは店の従業員達に謝罪とかするの…?」


志野は慎重に話題を振った。気まずくはない。ただ謝るかどうか気になっただけだ。


「いや、謝るわけがないよ」

「え…謝んないんだ…悪いよ…」


青蘭が一言言ったことに対し、苦笑いをしながら口に出す。


『風森屋』は現在、全焼しているところだ。後に隣の店にも火が燃え広がるだろう。そのことに海斗、紅葉、藍はまだ気付いていないのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ