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妖の追凶〜time of hell〜  作者: 羽波紫希
華の道しるべ編
68/82

67.醜悪

「皆さん、逃げてください!」


青蘭は一階の玄関へ向かい、客や他の従業員たちを逃がすように誘導をした。「逃げてください」と必死に声を上げ続けていた。


「とにかく逃げろ〜!」

「急げ急げ!」


客や他の従業員たちは取りあえず走って玄関へと向かっていた。厨房から爆発音がなったときはパニックになっていた。


「青蘭、こんなところで何してるんだよ!早く逃げないと」


藍は店から逃げるため、玄関へと走って向かっていた。そのときに青蘭が玄関の前にいた。


「いや、今は逃げてる場合ではないんだ!」

「そしたら青蘭が巻き込まれることになるんだよ!爆発に、いや火事に」


2人は怒鳴るように言い合いなっている。


「別に大丈夫だよ!そんなことは慣れてるから平気。火事になって私が被害者になったって妖狐だから数日経ったら治るよ」


すると藍は青蘭の左頬を強く叩く。その痕が真っ赤になっていた。


「何言ってるんだよ馬鹿!火事とかに巻き込まれて、重傷を負ったらどうするんだよ!それで記憶をまた失ったら…」


そのときに青蘭は「大丈夫だ」と言った。


「重傷を負ったときにはその時に考える。今は女に化けていから他の妖怪や死者に見られない」

「分かった。青蘭がそう言うならあなたの考えに従うよ」


藍は青蘭の考えに従うことにした。その後は店から逃げて行く。青蘭はまだ客や他の従業員たちがまだ逃げ切っていないか見回ることにする。


(ここは大丈夫か。じゃあ、厨房へ向かうか)


青蘭は厨房へと向かった。


そこへ向かっている途中、青蘭は煙臭いがした。その匂いが次第に強くなると火がなっている音がする。厨房へ着くと既に火事になっていたのだ。


「志野さん!大丈夫ですか」


青蘭は張りのある声を出して呼んだ。しかし、志野の姿はない。


(ここは氷の妖術を使いたいけど無理だ。呪いの国は俺にとっては余所。もし店が壊れたら弁償になる。世間からも恨まれる)


氷の妖術を使えば火を消すことができる。しかしながら、青蘭が使う妖術は強力。そのため、店が壊れる場合もある。


(でもここは少し壊れてもいいから使ってみよう)


勇気を出して妖術を使うことにしたのだ。


氷棘柱(ひょうきょくそう)風雪(ふうせつ)


右手を前に出すと、雪風が吹いた。それと同時に氷の棘も出てくる。そのお陰で火を消すことができた。


「よし、大丈夫だ。何とか氷の妖術を使ってよかった」


青蘭は安堵した。厨房の中へ入ると氷で火を消した。なので、残火は残っていないはずだ。すると、まだ人がいることに気付いた。


(誰だろう…っは!)


誰なのかすぐに分かった。


「志野さん!」


そこにいたのは、顔に痣がある志野だった。その痣は紫色になっていたのだ。


「その痣…」

「見られちゃったか。毒を盛られたときにできてしまった痣なんだ…」


取りあえず、氷の棘が志野に当たって怪我をしていないのは良かった。


「毒…」


青蘭は独り言で呟いていた。志野が『黄泉の国』へ来る前、交際していた彼氏に毒を盛られたことを可哀想だと思った。


(こんなに美しいのになぜ)


気の毒に思った青蘭は志野にいくつか聞くことにした。


「付き合っていた彼氏にやられたのですか?」

「そうだよ。あの人は浮気する癖がある。女を利用しては使い捨てをする。あの人が違う女と付き合いたい欲望のためなら殺したりなんてする」


そのことを聞き、青蘭は愕然とした。女子高生に化けているときでも分かるような気がする。


(確か、俺は小さい頃は本を読んでたから実際に経験してなくても心情で分かる)


記憶を失う前の青蘭は屋敷内で読書をするとき、文章に書かれた情景を映像で考えながら読んでいた。登場人物の喜びと悲しみ。怒りや怖さ。それより大事なのは"意味"を解釈することだ。


「だから、もうあの人を思い出すと…頭に来る!」


志野が本音を吐き出した。青蘭は辛かったねとしか返すしかできない。他に言う言葉なんてなかった。それが見つからないのではなく、分からないのだ。


(俺は…何をしてるんだ…)


何も言うことができなくなり、沈黙が流れた。すると、青蘭は周りをあちこちと見たときだった。


(なんだ…焦げ臭い匂いがしてきたな)


匂いを嗅ぐと再び焦げ臭い匂いがしてきた。氷の妖術で雪の風を吹き、氷でできた棘で火を消したはずだった。


「え…」


青蘭が気付いたときには、壁の隅っこにまだ火が残っていたのだ。志野を目を離した。


氷棘柱(ひょうきょくそう)風雪(ふうせつ)


火が燃え広がらないよう、もう一度その妖術を出した。雪風を弱めにし、氷でできた棘も小さくした。と、その瞬間。


(え…)


青蘭が振り向いたときだ。志野が持っていた魚をさばく用の包丁で青蘭の腹を刺したのだ。


「ごめん…雪乃ちゃん…あたし、この方法しか思い付かなくて…あなたが責任に取られるといけないと思って…」


涙を流しながら言っていた。志野は青蘭の腹を刺したことで罪悪感を抱く。包丁を抜こうとしたときだ。


「包丁は抜かないでください」


青蘭は必死に痛みを耐えた。人間の女子高生のままだったので、男性より痛みを感じる。包丁を抜かれるよりは痛くない。そのうちに店から逃げることにした。


「志野さん、逃げましょう。この子とが大事になる前に」

「え、あ、ちょっと」


志野の腕を掴み走って店を出た。掴まれたときの青蘭の手は冷たかった。包丁で刺されたところの痛みは常に耐えている。


「ちょうど店を出たし人もいないから、ここからはやっちゃいけないことなんだけど、火を付けるか」

「え!?放火をするの?」


すると青蘭は着物の懐からマッチ棒の箱を出した。その箱からマッチ棒を取り出し、火薬の部分を箱の側面にシュッと擦り付ける。火をつけたマッチ棒は店の中へ捨てた。


「捨てちゃって大丈夫なの?怒られない?」

「大丈夫だ。ここからは悪夢の時間になるからね。なぜなら、この街には華がないから!」


それを聞き、志野は言葉を失った。


「華がないってどういうこと…?」

「華?それは見た目じゃなくて中身の華がないと言う意味です」


青蘭は意味を言いながら、何本かのマッチ棒を箱の側面に火をつけ店の中へ捨てる。


「じゃあ…火事を起こそうとしたのも」

「そっちの方が面白そうだし、やってみたいからだよ。志野さん、あなたはどうして失踪事件を起こしたんですか?」


青蘭は冷笑を浮かべながら言った。志野は何も言えずただ黙っているだけ。女子高生に化けたままだが、男だと気付かれていない。


「雪乃ちゃんは…一体何も」

「私ですか?私は無許可で『黄泉の国』、この世に行ったことで指名手配にもなってる妖怪です」


青蘭に聞こうとしたが、既に言われてしまった。女子高生に化けている青蘭は感情が暴走し始めた。まるで、悪魔だ。


『風森屋』という店は今、青蘭がマッチ棒を何本かその店の中に捨てた。そのせいで火事になり始める。


「志野さん、この店を去りましょう。もうこの店は終わりです。あなたは私の友達の藍に嫌がらせをした罰でもあるから」


青蘭はまた志野の腕を掴み、走りながら店を去った。周りの妖怪や死者は爆発音がなった同時に逃げていたのでその店の近辺には2人しかいない。

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