64.情報報告
その後、師闇は息を引き取った流華のために墓を作った。家にあった鋤と呼ばれる道具を使って、土を掘った。
それが終わったあと、掘った土で埋めた。
(やっと終わった。でも、これから先どう生きていくかを考えると心細いな…)
鈴を連れてどう生き延びるか。それをどうすればいいのか師闇は分からなくなった。
取りあえず、息を引き取った流華を土に埋め追えた。このときはまだ夜明けもなっていない。少し寒気がした。
「ふぅ…」
師闇はかなり疲れが溜まっていた。3歳で初めて、自分の母親の墓を作った後、その墓の前で手を合わせた。
「やっぱり…お母さんがいないと寂しいよ」
手を話した後、師闇は墓の前で本音を言った。鈴は師闇がおんぶをしているときに眠っている。
「鈴姫、2人で遠くへ行こう」
師闇は、鈴を連れて家の外にある大八車と呼ばれる木製の台車を使い旅に出た。このときに勘解由小路という男は既に流華の家から去っていた。
珠璃が神楽坂の失踪事件のきっかけを話し追えると、海斗は納得いかないような顔をしていた。
(どうして、流華さんは勘解由小路という男が白い玉と黒い玉を出したときに白い玉を選んだのか…)
海斗は真剣に考えてしまった。白い玉は師闇と鈴を助けるが、流華は死ななければならない。黒い玉のほうは神楽坂に住む妖怪や死者助けるも同じ。
「海斗、どうしたのか」
考え事をしている海斗を見て、女子高生に変装している青蘭に声をかけられた。そのことに対して、海斗ははっとした。
「いや、何でもない。でも、なぜか僕にとって何か引っ掛かっているような気がするんだよね。なぜ、流華がその白い玉のほうを選んだのかな…」
それに対し、青蘭はなんでと首をかしげた。
「だって僕だったら、神楽坂に住んでいる妖怪や死者を助けるから黒い玉を選ぶよ。そっちのほうがその人たちにも被害が及ばなくて済むからね」
すると、2人の話を聞いていた紅葉と藍は頷いていた。
「いや、俺なら違うね。白い玉のほうを選ぶよ。大勢の人よりも大切な人を守ったほうがその人を失わずに済むから」
青蘭はきちんとした意見を出した。
「じゃあ、青蘭はその大切な人はいるんですか?」
海斗は青蘭に大切な人がいるかを追求した。すると、青蘭は無言になったのだ。
「鳥山くん…それは、やりすぎじゃない?」
「藍ちゃん、それはやりすぎじゃない!今は青蘭と意見を言い合ってるんだ!」
海斗が得意気な顔をしながら堂々と言った。
「右を見て…」
藍に言われ、海斗は右を向くと珠璃が苛立ち始めている。それが顔に出ていた。
(ゲッ…まずい。珠璃さんが既にキレそうな感じだ…)
海斗は気まずそうにしながら下を向く。左を向くと海斗のとなりには紅葉。藍、青蘭の順番に座っている。海斗以外の3人は既に切り替えていたのだ。
「すみません…」
そのことに対し、珠璃はため息を吐きながら「大丈夫だ」と返した。
「君たちに聞くけど、失踪事件について何か知っていることはあるか」
すると、青蘭が素早く手を挙げた。
「まだ犯人は見つかっていませんが、実はある人がその事件の犯人を知っていると言っていた人を聞きました」
「詳しく説明して」
珠璃に言われると、青蘭は詳しく説明をする。
「それは俺が『風森屋』で働いていたときのことでした。ある日、俺の住んでいる屋敷で働いている鈴が俺に襲いかかって『風森屋』一部が火事になりました」
青蘭が話している間、3人は真剣に頷いている。
(さすが、探偵みたいだね。記憶力がいいですね)
紅葉は青蘭のことを見習おうとしている。まだ青蘭は話している途中だった。
「よっ!名探偵!」
海斗は間違えて思っていたことを口に出してしまった。
「あ…鳥山くん…」
「鳥山くんって…本当に空気が読めないんだね…」
それを見ていた紅葉と藍は苦笑をしながら言った。
「すみません…青蘭、続けていいよ…」
海斗はひとまず謝った。
「『風森屋』が火事になり、俺は鈴を連れて『黄鈴屋』へ向かうために鈴を睡眠薬で眠らせました。だけど、向かおうとしたとき、俺は体が動かなくなりました」
鈴を睡眠薬で眠らせたとき、3人は驚いた。だが、それを聞いていた珠璃は表情を一つも変えてない。
「そのときに魅緑という怪しい人物が俺に"失踪事件の犯人、知ってるんやで"と言いました。だから、魅緑という人物を追っていけば意外な真相が追えるかもしれません」
それに対し、珠璃は「魅緑か…」と呟いていた。
「他に何か知っている人はいるか」
今度は紅葉が手を挙げていたのだ。
「仕事で店の宣伝をしていたときでした。ある3人の子供妖怪が私のところまで来て"食べ物はありませんか""豆腐を買ってください""働きたいです"と言ってきたのです」
紅葉が離している間、4人は頷いている。
「そうしないと、"あの人"に殺されてしまうと言っていました。正直、私もあの人とは誰なのかは分かりません。だけど、あの子たちは何処かから逃げてきたとしか思いません」
"あの人"とは誰なのかはまだ分からない。海斗はその失踪事件の犯人は神楽坂の中にいると確信している。
「あの人か…なるほどね…」
珠璃は分かっていたような表情をしていた。
(魅緑。あいつは確か、前にあたしの屋敷に来たことがある。でも、何処かが怪しい雰囲気だったな)
魅緑が『藤楽邸』に来ていたことを記憶していた。
「情報をありがとう。でもまだだ。青蘭はしばらく女に変装をして仕事をしろ。海斗と紅葉と藍はあの子供たちを守ることに専念して」
そのことに4人は「分かりました」と言った。まだ、犯人は未だに分かっていない。でも、必ず犯人を見つけ、その事件の真相を見つける。そう誓っていた。
数時間が経ち、既に昼頃になっていたのだ。
「失礼します。そろそろ昼頃ですし、昼食はいかがでしょうか?」
襖をそっと開けてきたのはその屋敷の召使いだ。
「あたしは食べるよ。君たちはどうするのかい?」
「すみません、じゃあ僕もお言葉に甘えて」
「あ、じゃあ私も」
「じゃあ…俺も」
「私はもちろんです!」
藍以外の3人は言葉に甘えている。
「遠慮しなくていいから。食べたいときは食べたいですって言っていいから」
珠璃の口調は多少悪いところもあるが、根は優しかった。
昼食が来たとき、既に豪華な食事だった。
「美味しそうですね!刺身、天ぷら、白米、焼き魚。本当によだれがでそう〜!」
海斗は豪華な食事を見ると我慢ができなくなる。
「じゃ、食べるか」
そして、4人は「いただきます」と手を合わせながら言った。その後すぐに、次々と箸でつかんでいく。
(鳥山くんと青蘭くん、藍さんはよく食べるね)
紅葉と珠璃以外は次々と一気に食べている。
「珠璃さん、呪いの国にある神楽坂で働いている人はどういう人が働いているんですか?」
今まで紅葉は気になっていたことがあった。すると、そのことに対し珠璃は少し表情が柔らかくなる。
「あそこはね、行き場のない妖怪、死者たちが働いているところなんだよ」
「行き場のない…」
紅葉は何かを思い出した。以前、『桜鶴円』という盗賊段の雑用係として働いていたときのこと。
(あのとき、私は雷千さんに助けてもらったんだよね。もし、雷千さんに助けてもらえなかったら外の世界にも行けないし、鳥山くんたちと出会えなかったな)
紅葉はあの事を振り替えると苦い、楽しい思い出が混ざっていた。
「紅葉ちゃん、大丈夫か」
すると、珠璃に声をかけられた。今までにはい優しさだ。
「もちろん、大丈夫です」
紅葉はすぐに返すことができた。




