chapter747 見守る者達
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時間は少し戻る。
いきなり勃発した勇者と聖女のバトルに一同呆然としていたが、マリアが斬られた時点で再起動し始める。
「い、いきなり戦いが始まっちゃいました」
「と、止めないと……」
(今の所)感性がまともなレイリとイヌコがこうコメント。
だが、それにカナタ、ジンナ、クインと言った感性が(誰かさんのせいで)少し狂ってしまった面々が首を横に振る。
「……無理ね」
「邪魔したらこっちがやられる。……多分」
「ん」
この三人――オウカと交流した面々はわかる。
あの世界の住人はまともに見えてどこか狂っている。
特に、ソルドアットと交流が深いカナタにはわかっている。
「マリアさんがしているのは八つ当たり。だから殺す気はなさそうよ?」
「「アレで!?」」
「ええ」
彼女がよく使う、握力に任せて相手を腕や足を破壊する技を使っていないのが、何よりの証拠。
ユウナもおそらくそれがわかっているのか、殺す気はなさそう。
……まあどちらも幾らかの損傷は負って貰おうとは思っているようだが。
それにキョウコとイオリは至極真っ当な事を言う。
「それはそうかもしれないけど~」
「流石にこのままはまずいよ」
そうしていると、戦況が一変。
ユウナが鉈を手放し、マリアがその鉈を丸めて捨てた。
「「うわあ……」」
あまりの怪力に唖然とする面々。
そんな中、レイリとクインの二人はある事に気づく。
「クインちゃん。今のユウナさん確か……」
「ん」
「「武器がない」」
ユウナは目覚めた研究所で最初に手に入れた鉈を使っている。
本人曰く
『よく使うのは刀剣だから、こういう武器がしっくりくる』
との事。
彼女が目覚めた研究所の護衛や傭兵が持っていた武器はナイフやチャカばかりで、あの鉈が一番長く使いやすいらしい。
「さすがに素手じゃ……」
「ん」
その時、レイリの脳裏に過ったのはとある武器。
この間の実習で彼女が殺した相手から渡されたモノ。
「アレなら……」
「?」
入学祝いに買ってもらった腕輪型の匣からレイリはあるモノを引っ張り出す。
それは剣。いわゆるレイピア。
≪紅露刃亜≫の幹部の一人――ヒカリヤ=サエの冥刀【メルヴェイユーズ】。
「ユウナさん! これを!」
「レイリ!?」
驚くイヌコを無視してぶん投げる。
それを振り向きもせずユウナは受け取る。
そして、レイリにくるりと振り向き……
「ありがとう」
礼を言って構えを取った。




