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ガチャでUR種族を当てたら、異世界に飛ばされた  作者: 厠之 花子
序章:王国滅亡編
12/18

10.質問です

駄文続きですが、お付き合い頂けたら幸いです⋯⋯。

遠くの方で白色の毛玉のようなものが異常な程飛び跳ねている。その前方にローザとモミジはいた。


ノアは待たせていた2人に謝る。


「待たせてごめん、依頼は⋯⋯終わってるか」


⋯⋯洋館の改造、及び警備隊の召喚、部屋の割り振りや増築、その他諸々を全て終えて転移で戻ってきた頃には大分時間が経っていた。


言いつけ通り、二人は同じ場所で嫌な顔一つせずに立っている。


変わった所と言えば、若干膨らんでいる麻袋と、脚だけが異様に大きく発達している兎のような動物をそれぞれ手に持っているという所か。


その動物は、先程異常に飛び跳ねていたものと非常によく似ている。


と言うよりも、きっとそれが跳躍兎ジャンピング・ラビットという魔物だろう。


白く愛らしいという点では地球のものと変わりはないが、その牙と爪は鋭く脚の筋肉は発達し過ぎているようで若干の不気味さがある。


尚、それらは白目を剥き既に絶命していた。


「はい。主様の御手を煩わせてしまってはいけないと思い、この通り全てを完了致しましたわ」


外傷もなく、綺麗な姿の跳躍兎ジャンピング・ラビットを華奢な手で掴むローザ。

⋯⋯よりによって、掴んでいる部分が耳ではなく〝首〟という点に彼女の本性が垣間見える気がする。


苦笑したノアに、元気な声が届く。


「主さま!あたしも完了しましたよぉー!!」


モミジは薬草が詰まっているであろう麻袋を、まるで褒めて褒めてとでも言うように掲げた。


───可愛い。普通に可愛い。


その様子に心が穏やかになるノア。頬が緩むのを止めることが出来ない。


「2人ともお疲れ様!」


ノアが夕焼け色のサラサラした髪を撫でると、モミジは心底嬉しそうに破顔した。


「えへへぇ~」


嬉しくて堪らないかのように、恍惚の表情を浮かべるモミジ───⋯⋯何処からか、ギリッと歯軋りの音がした。


「⋯⋯ローザ?どうかしたの」

「何でもありませんわ、主様」


訝しげにノアが聞いたことに対し、ローザは何事もなかったかのように、何時もの柔らかな微笑みを浮かべた───その笑みから本心は読めない。


ノアも特に気にすること無く歩き出す。


「そう?じゃあ、ギルドに戻ろうか」

「はい」


ノアの後を付いていくローザ───その唇からは鮮血が滲んでいた。


ローザの心を占めるのは嫉妬。


NPCたちにとって主に褒められる事は至上の喜び、ましてや主と肌を重ね合わせられるなど何よりの幸福にも勝る。


「⋯⋯あは、ざんねぇん。こーゆーのを役得って言うのかなぁ」


横に並んだモミジが、にんまりと笑って囁く。瞬間、ローザの心に黒い感情が広がった。

フン、と鼻を鳴らす。


「せいぜい、主様に甘えておきなさいな。⋯⋯ふっ、とんだお荷物・・・ね」

「なに、負け惜しみぃ?⋯⋯まあ、どうでもいいけどぉ」


───ずるい。


思わず握りしめた拳が震える───私も撫でて貰いたい、あの小さな白い手に。あの可愛らしい声でもっと呼んで欲しい。もっと、もっと、もっともっともっともっともっともっともっともっと⋯⋯。


「⋯⋯ローザ?」

「っは、はい⋯⋯申し訳ございません」


いつの間にか、足を止めていたようだ。申し訳なさと恥ずかしさで、顔が真っ赤になるのを感じる。

それに対して、ノアは笑って応えた。


「謝らなくていいよ。もし、何かあったら私に知らせてね」

「は、はい!!」


再び歩き出したノアについて行く───ローザは、心の奥が温かくなっていくのを感じた。


(⋯⋯主様はやはり素晴らしい御方ね)


存在を否定された日にはきっと、生きながらにして屍と化すだろう。それ程までに主の言葉は、重い。


必要とされる事だけが、生きる全て───NPCたちにその例外はいない。だから、繋がっている。

馬の合わない輩もいるが、基本皆はそれぞれの実力を認め合っていた。


モミジ然り、ローザもまた然り。


ふと懐に伸ばした手に、何かが当たった。


「⋯⋯主様、これは如何致しましょう」


それは、行く前にジルに手渡されたお弁当だ。

そういえば、とノアも手を伸ばすと確かにそこに存在する。


目の前に掲げて眉をひそめた。種族的に今は食べる必要がないが、真心がこもった物を捨てるのは良くないだろう。


「あー⋯⋯じゃあ、今食べよう。折角、用意してくれたんだしね。ああ、モミジの分は私が⋯⋯」


言いかけたノアの言葉に、すぐさま反応したのはローザだった。


「私が食べますわ!!」

「そ、そう?」


何故か凄むような迫力があり、思わずノアは仰け反った。

美人は顔が整っている分、凄むと謎の圧力がある───初めてその事を知ったノアであった。


ローザは言うが早いか、すぐさまモミジのお弁当を乱暴にひったくる───まるで、ノアに取られる隙を与えないかのように。


むざむざと取られたモミジは、そのまま口を尖らせた。


「えぇえーあたし、主さまに食べてもらいたかったぁ~」

「そ、残念だったわね」


あっさりと言いながら、ドヤ顔でサンドウィッチを頬張るローザ。


ノアにはいまいち、この2人の行動がわからない。


(⋯⋯そんなに食べたかったのかな、サンドウィッチ。まぁ美味しいもんね、サンドウィッチ)


この世界にも、食材をパンで挟むというをサンドウィッチらしきものはあるようだ。ただ、周りのパンは白ではなく茶色がかかっている。

頬張ってみると、僅かなしょっぱさがあった。


(挟まれているのは葉野菜だけか⋯⋯いやそれでも有難いな。確かノワールの報告書によると、調味料はやや高価らしいが⋯⋯見知らぬ人のお弁当に使っていいのか)


日本での味をまだ覚えている為、美味しいとは思えないが食べられない不味さでもない。あっという間にノアもローザも完食する。


お弁当を片付け立ち上がったノアは、にっこりと笑ってこう言った。


「⋯⋯ごちそうさま。さ、帰ろうか。また依頼を受けに行こう」


まず、優先すべきことは金稼ぎだ。今は働くのみだろう。

今後の予定を頭で組み立てながら、ノアは急いで門へと向かった。


────────────


その日一日は全てを依頼に注ぎ込み、部屋に戻って一息をついたのは再び夜中。

殆ど⋯⋯いや、全ての依頼を2人がこなしてくれたので、肉体的な疲れはない。ただ、初めての体験が短期間に来たせいで、精神的に疲れが出ていた。


NPCたちがいる手前出来ないが、少々硬めでもいいからこの布団にダイブしたい気分である。

本当は羽毛布団を希望したいが。


「⋯⋯はあ」


何もすることがないので金勘定序でに、今日稼いだお金をアイテムボックスへとしまっておく。


(一日あるだけ稼いで1450G⋯⋯か。これは日本のバイトの方がよっぽど稼げるな)


跳躍兎ジャンピング・ラビットの魔核を売ってこの稼ぎ。需要が少なく、跳躍兎ジャンピング・ラビット討伐の依頼がそもそも少ないも理由の一つである。


全ての魔物において例外なく体内に存在する魔核。


空気中の魔素というものが、生存している動物たちの体内で蓄積され、魔核が出来る。それは質や大きさによって高額で取引され、武器の他様々な用途で使用される───という設定だった。


魔核により、強化されたのが魔物と言われている。

魔物は魔物でも、魔核が小さく影響を余り受けなかった魔物は下位と呼ばれ、人によってはペットとして飼う者もいた。


───ただしあくまでもCWOでの話なので、この世界の場合は知らないが。


ノワールの報告書に基づくと、通貨に関しては日本とほぼ同じと見ていいようだ。


どれも彫りの少ない硬貨ばかりの上に紙幣はないが、数え方に変わりはない。日本の硬貨に酷似したものと、紙幣が硬貨になったものが合わさった⋯⋯と考えればいい。


ただ、困ったことに物価はこちらの方が少々高めだ。何しろ、バターロールくらいの小さなパン2つで400Gだったのだから。


⋯⋯ここに来て初めて、食事を余り必要としない事が幸いした。もし食費が必要とするなら、ノアの財布は一溜りもない。


少ない所持金にため息をつきながら、ノアは先程の言葉を思い出していた。


───小さいのに頑張ったねぇ。偉い偉い!!


───大丈夫?困ったことがあれば言ってね!


見た目が幼いからか、アーニャやジルだけでなく見知らぬ冒険者たちからも、ノアは心配をされる───「そんなに依頼をこなして大丈夫?」だとか、「疲れない?」とか「まだ小さいのに無理しちゃだめだよ」とかだ。


「⋯⋯本当は、みんな親切ないい人なんだろうけど」


他にも色々な言葉がかけられるが、大半は同情による慰めに近いものだった。


中身が見た目通りの年齢ではない事を知らないので、それは仕方の無いこと。仕方の無いことなのだが───湧き出るのは感謝ではなく、何故かイラついた感情だ。


まるで、昔から言われ続けてきたみたいに。


⋯⋯確かにこの世界では親もいないし、ましまてや親族などと言った血縁関係者もいない。

しかし別に寂しくもないし、ましてや悲しいわけでもない。


それに、1人でも無い。


ノアはベッドの縁に腰掛ける2人を見る───自分にはNPCたちがいるのだ。


「さて、そろそろ」


いつの間にか、酒場から賑やかな声が聞こえてくるようになっている⋯⋯夜中になったからだ。

ノアが正面───酒場の方を見据えた。


───時間、だ。


ノアは立ち上がると、こちらを見上げる2人に「ついてくるな」と言い含めてから酒場の方へと出る。


「おっ、とんがり帽子の嬢ちゃん。こんな夜中にとうしたんだい?トイレかな?」


相変わらず酒場では、むさくるしい冒険者たちがバカ騒ぎをしていた。そのうち1人が、赤い顔で発泡酒片手に話しかけてくる。


その男の言葉で酒場内にどっと笑いがおきた。しかし、それにはからかいの意が含まれていない。


「とんがり帽子も一緒に飲もうぜ!!奢ってやるからよ」

「あら、こんなむさくるしい男より私の所に来ない?お姉さんとイイこと、しましょ♡」

「いやいやいや、俺の所に!!」

「ああ~触りてえ⋯⋯」


好き放題話す酔っ払いどもに、眉を顰めるノア。その表情には若干の呆れも含まれていた。


───⋯⋯変態ロリコンしかいないのかここは。


ノアが帽子の下で不機嫌そうな顔をしていても、気づくことなく話し続ける。


「てか、とんがり帽子を何で取らないんだ?」


「バカ、アレがあるからいいんだよ」

「そうだそうだ、可愛さ倍増じゃねーか」

「ございました細かい事を気にする男はモテないわよ?」

「だから、嫁にも逃げられるんだろ?」


「⋯⋯おうふ」


アルコールのせいか、全員饒舌となり普段よりも大分盛り上がっている。その上、今話題の美人三姉妹の1人の登場だ。盛り上がらないはずがない。


最早ノアとは関係なく騒ぎ立てている。そこにノアが巻き込まれるという事態が起きていた。

これはいよいよ困ってきたぞ、と思った時。


「おい、お前ら。ノアちゃんが困ってんじゃねーか!!大の大人が何してんだよ⋯⋯ったく」


そのざわめきに終止符打ったのは、ジルだった。


まさに鶴の一声。ざわめきが嘘のようにピタリと止まる。


その様子を確認してから、困り顔で「すまねえな」とノアに謝るジル。

パツンパツンのTシャツに書かれた〝最強〟の二文字が、妙に頼もしい。


「あんな奴らなんだ、許してやってくれ」

「⋯⋯いえ。止めていただきありがとうございます」


中腰で話すジルに、ノアは軽く頭を下げる。この人にはお世話になりっぱなしだ。


仕事然り泊まる場所然り、それにお弁当もこれから毎日作ってくれるという。「ついでだから」と、笑ってはいるが、3人分は時間的にも金銭的にもきつい事だろう。


きっと良心の塊のような人だ。


「いや、大したことしてやれなくてすまんな。その歳で、依頼をあんなにこなすなんて立派だよ⋯⋯寝なくて大丈夫なのか?」

「⋯⋯はい。毎日こんな感じで、慣れてしまったようで⋯⋯寝れなくて」


当然嘘だ。


だが、ノアがそう言えばジルは辛そうに顔を歪めた。それを悟られないようになのか、直ぐに苦笑を浮かべる。


ノアは心の中でジルに謝った───「騙してごめんなさい」と。


「そうか⋯⋯いや、引き止めて悪かったな。今日も外に行くのか?」

「はい、野暮用です。昨日の執事と一緒ですし、すぐに戻りますから⋯⋯それに」


そこで言葉を切り、ジルを安心させるようにノアは笑顔を作った。


「外に出るのも今日で最後です」


────────────


「で、何の用だよ。こんな夜中に呼び出して」


外に出ると、冷たい風がノアの頬を撫でた。魔法服のお陰で身体は冷えないが、顔に当たる風は防げない。


ノアは声がした方向を向いた───と同時に、壁に寄りかかっていた黒髪の男が顔を上げる。


「聞かれたくない内容だと思うからね。ごめんね───厨二君」

「⋯⋯よりによって、それを引きずってくるのかよ」


外へと出たノアを、待ち伏せていたのはシャドウだった。

ただ、昨日のように学生服ではなく、鎖帷子や皮の鎧といった冒険者の軽装備を着用している。腰には短剣を装備していた。


昨日の今日で、よくそれだけの物が買えたものだ。

大方、ランクの高い魔物を倒してその素材を売ったのだろう。チート持ちなら楽勝だ。


シャドウは手に持った小さな紙切れを、ひらりと振る。


「これ。わざわざ〝日本語〟で書いてあるのは、見られたくなかったからか?」


ノアが朝アーニャに手渡したものだ。ちゃんとシャドウに渡してくれていたらしい。


『酒場が賑わう夜中、ギルド前で待ってて。聞きたい事がある』


ノアは周りを見渡してから頷く。


「まぁね。面倒な事を防ぐ為かな」


言いながら《防音結界シャットサウンド・フィールド》を展開した。今回はそれに《不可視化》を付与する。


読んで字の如く、これで2人の声は聞こえもしないし、姿が見えることはない。


この《不可視化》は魔法ではなく、オプションに近いものだ。誰でも簡単に付与できる⋯⋯CWOでも秘密話をする時によく使われた結界だ。

しかし残念ながら、戦闘向きではない。


準備が整った所で、ノアはシャドウに向き合った。


「──聞きたいことがあるんだ」


一息置いてから聞く───とても大事な事だ。


「君のチートは、何?」

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