表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
80/82

080)何と伝えればいいか

 二十日振りに『T・T・T』へ戻った私。


 私の顔を見たソラは一瞬固まっていた。


「……。お帰りなさい」


 何と声をかけるべきか、悩んだのかもしれない。


 この間、迎えに来てくれたソラを冷たく追い返してしまったから、警戒されている。


 私のほうにも、冷たくしてしまった後味の悪さと、クリティネにと渡された花束のわだかまりがあって、上手く笑顔が作れない。


 ラウンジへと続く階段を、私はソラを後ろにして駆け下りた。


 早く一人になりたかった。


 ソラと顔を合わせていられない。きっと、嫉妬の感情が顔に出てしまう。


 ラウンジの扉を開けて、私は息を呑んだ。


 ラウンジが花で埋め尽くされていた。机という机、台と名の付きそうな物の上全てに、テラコッタ製の器が置かれ、色んな種類の花が活けてある。


紬生つむぎさんと宙香みちかさんに、申し訳ないことをしてしまったので、謝りたくて」


 ぼそぼそと低い声で言いながら、ソラが階段を下りてきた。


「どうやって、こんなに……」


「紬生さんのいない間に、町中からかき集めたんです。枯れてしまう前に、帰って来てくれて良かったです」


 照れたように少し笑い、ソラは俯いた。


 私達を無理やり未来へ戻そうとしたこと、反省してくれてたんだ。


 それに……。


 だとすると、クリティネに渡した花束は、この演出の余りだった?


「ごめんなさい」


 私は口元を両手で覆った。


「どうして、紬生さんが謝るのですか?」


「ソラが迎えに来てくれたのに。追い返してしまった」


 私のこともちゃんと考えてくれてた。それなのに、ひねくれてしまっていた。


「私のほうこそ、大変な時だということに気が回らなくて。すみませんでした」


 そして、ソラは首を傾げた。


「あの時、紬生さんは私を追い返したんですか? そんな風には受け取りませんでしたが、少なくとも、紬生さんはそのつもりだった……」


 やばっ。


「今、やばっと思いましたね」


「いや、あの。違うの……」


「ひどいですね。せっかく迎えに行った私を追い返したなんて。あぁ、傷付きました」


 言いながら両目を覆った片手を外し、私と目を合わせてニヤリと笑う。


 私をからかうソラ。なんだか、懐かしい。前回ここへ来た時の二人に戻れた気がした。


「あちらはもう、落ち着いたんですか?」


 ラウンジのカウンターに腰かけた私へ、ソラがドリンクを用意しながら言った。


 伏し目がちなソラの表情には憂いが見えた。


 ソラはまだ、クリティネが子供を生んだと思っている。例え子供を生んだ女性であっても、ソラにとってクリティネは忘れられない存在なんだ。


 いずれ、真実は明かされる。アリネが民の前に現れるはずだから。


 そうなったら、ソラはどうするだろう。巫女王ではなくなったクリティネになら、気持ちを抑える必要は無いって思うのかな。


 それは辛い。だけど、ソラの気持ちを応援したいと思う私もいる。矛盾してるけど、ソラには幸せになって欲しい。


「クリティネも、子供も元気だよ」


 私は穏やかに答えた。


「その……。心の傷のほうは……」


 聞き辛いけど確かめたいといった感じで、ソラが私を見た。


 クリティネが代表に、意に添わぬことをされたと、ソラは思っている。


 何と伝えればいいのか。


 誤解を解くには、クリティネの気持ちをソラに明かすことになる。ソラの気持ちに引導を渡す役目は負いたくない。


 それに、アリネのことを触れずに話せる自信も無かった。


 こめかみを押さえるようにして、私は考え込んだ。


 カウンターの内側にいたソラが、いつの間にかこちら側へ出てきていた。


 私の横へ座り、改まって何か言いたそうにしている様子のソラと、私は向き合った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ