006)信者達
私がここへ来た目的は知るため。他の信者の人達とは違う。
「確認しますので、その間、皆様はラウンジでお寛ぎください。フリードリンクがあちらにございます」
波江野さんからメモリーチップを受け取ったソラは、そう言い置いて奥の扉へ消えて行った。
ここは現地に建てられたホテルで、旅行会社の支店を兼ねている。このフロアは地下階だと説明を受けていた。
私達はそれぞれにソファへ腰を下ろし、緊張をほぐした。
「愛想の無いアテンダント」
春夏秋宙香が私の横の背もたれへ、放り出すようにして上半身を沈めた。そう言う宙香のほうも、はっとするほどの白い肌に無愛想な顔を張り付けている。
宙香は宇咲代表の娘だ。代表に似て、日本人離れした彫りの深い顔立ちをしている。
宙香と私は同じ中学に通っていた同級生だ。ただ、それだけ。それだけの共通点しかない。宙香はどんな時も堂々としているし、自分というものに絶対的な誇りを持っている。何もかもが、私とは違う。
「出発前の案内役は、表情が豊かで、もう少し、親しみがあったと思わない?」
そんなことを気にする余裕の無かった私は、曖昧に頷いた。
「それにしても。古代って、どんな所だろうって思ってたけど。ホテルは近代的みたいだから、良かったぁ」
宙香の言う通り、ちゃんと照明は灯っているし、お掃除ロボットも動いている。装飾の類いは一切見られないから、豪華な印象は受けないけど、清潔感があっていい。
ラウンジやダイニングテーブルなどを取り囲むように、色分けされた沢山のドアが見える。あのドアの一つ一つが、客室のドアだ。このフロアの案内板に書いてあった。
「さ、皆さん。ドリンクをいただきましょう」
江山詩葉さんがドリンクを乗せた盆を運んで来た。詩葉さんは三十一歳の女性で、物怖じしないタイプなのか、誰にでも明るく話しかけるし、よく気が回る。
私は少し苦手。
「いただきます!」
元気に声を上げたのは、私より一つ年下の河岸明日美。遠足へ行くと勘違いしているのかと思うほど、大量のお菓子を持って『T・T・T』へ現れ、出発前に全て没収されていた。
背が高く細身なあの身体は、お菓子でできているのだろうか。
波江野さん以外の男性は、高校生の柳瀬在斗と、三十代半ばの舘谷航さんの二人。
周囲の反応に敏感で、口数が多い在斗は目立っていて、只でさえ、物静かで存在感が霞んでいる舘谷さんの印象が、在斗のせいで更に薄らいでいる。
皆に共通して言えるのは、解放感と明るさだった。祭りにでも来たみたいな賑わいが、発する気から漂っている。
無事にタイムトラベルを終えて心底ほっとすると同時に、過去の世界に馴染めるかと、緊張している私とは大違いだ。帰りたいという想いへ、既に私の気持ちは沈みそうになっていると言うのに。
少しでも緊張を解そうと、受け取った冷たい緑茶を一気に飲み干した。意外にも美味しくて、二杯目もあっという間に空になった。
ドリンクコーナーで三杯目をもらおうとしていたところへ、ソラが戻って来た。




