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058)現実

 西暦二○四六年、六月。


 帰国した私達を待っていたのは、教団に対する世間のバッシングだった。


 タイムトラベルしている内に、私達は消えた七人の信者として騒がれていた。しかも、教団から大金が失くなったことも、一部では報道されていて、私達との関連が囁かれている。


 確かに、タイムトラベルには多額の費用がかかったはず。金庫を預かる信者が何も知らされていなかったら、教団の資金が突然減っていて驚いたかもしれない。


 帰国後に入れられる『T・T・T』の療養兼感染症対策施設で、私達はそのニュースを知ることになった。


「信者の誰かが、情報を流したんじゃないかって。何のつもりか知らないけど、そんな人には金輪際、教団の信者を名乗って欲しくないわ」


 そう言って憤慨するママの声を電話越しに聞いた。


 戻って来てしまった。


 帰国早々のバッシング報道で、俗世の空気に曝され、ウンザリしていた心が更に疲弊した。


 現実と、また向き合わなければならないと実感して、心がぎゅっと縮んだ。



 約一ヶ月後、施設からの出所を許された私達七人は、教団本部の至聖所しせいしょを訪れた。


「先ずは、お役目ご苦労様でした」


 御神体の絵を後ろに、代表は私達の顔を見回しながら言い、顔を引き締めた。


「皆さんも、もうご存知ですね。外が騒がしくなり、雑念が教団に及んでいます。タウルスに選ばれし皆さんの中で、怪我をしたり、役目を果たせない事態が起こりました。それは全て、私の責任です」


「そんな。あれは、代表のせいではありません」


 舘谷たてやさんが、堂々とした態度できっぱりと言った。


 代表は左手の人差し指を立てて口元へ持っていき、右手で御神体の絵を指した。


「あなた方は御神体へ、直接祈りを捧げた身です。真の儀式を受けたあなた方には、この上世じょうせい光波ひかりは教団を支えていく使命が与えられたと、理解してください」


 教団を支えていく? 私が?


「この先、教団は次のフェーズへ移行します。そこでは必ず、あなた方の力が必要になる。そう覚悟しておいてください」


「それは、具体的には、どういったお役目になるのでしょうか」


 波江野はえのさんが膝を進めるようにして尋ねた。


「まだ話せません。時が熟していない」


 皆は落胆したようだった。肩を落とした姿から、直ぐにでも、お役目の内容を知りたかったという意欲が伝わってくる。


 教団を支えていくなんて大役を、どうしてそんな前向きに考えられるのか、私には分からない。


 過去の世界では、自分にはもう、神託は必要ないと思えていた。神託を必要としないのなら、教団から離れるべきだと思う。


 けれど、いざ現代に戻ってみると、ママのこともそうだけど、現実が私を呑み込もうとしている。本当に教団の教え無しで、この先、生きていけるか確信が持てない。


 結局、私はまだ、この世界が恐ろしいんだ。


 ちちんぷいぷい、みゅげみゅげ〜。


 一人で唱えても、強くはなれない。この呪文はソラと唱えるから意味がある。


 今すぐにでも、ソラに会いたい。


「外には、皆さんの姿を捉えようとしている輩が大勢います。部屋を用意していますから、しばらくここに留まるように」


 がっかりして、私は息を吐いた。


 でも、ここから出られたとしても、ソラの居場所を知らない。


 教団にいれば、代表と話せる機会もあるかもしれないし。それに、ママと顔を合わせなくて済む。


 私は気を持ち直した。

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