表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
16/82

016)自由だ!

 ホテルへ戻り、朝食を済ませると、牡牛跳びの訓練のために、私達は再びホテルを後にした。


「今は紀元前一八二八年。日本に行けば、縄文時代の様子が見られます。インド半島北西で栄えていた、インダス文明が衰退する一方で、メソポタミアでは、バビロニア王国が産声を上げています。エジプトは中王国時代。西ヨーロッパでは、青銅器文化が興こった頃になります」


 石畳の道を進みながら、私達の一番後ろを歩くソラのガイドに耳を傾けていた。


「クレタ島は地中海に面していて、一年中温暖です。現在は五月頃になりますが、最高気温で二十度にいかないくらいです。真夏はもう少し上がりますが、風が強いのでそれほど暑くは感じません。冬も最低気温は三度くらいです。皆さんが旅立って来られた時代ですと、このクレタ島も、温暖化の影響で、平均気温はもう少し上がっていると思います」


 一旦話を止めたソラは、先頭を歩く在斗あるとへ声を掛けた。


「そこの角を右へ曲がってください」


 どれだけ目的地が遠くても、移動は全て徒歩だと言われた時は、気持ちがゲンナリした。


 でも、いざこうして歩いてみると、街の様子が見られるし、ソラもガイドをしてくれる。海外旅行するのはこういうものかと楽しくなっていた。


「この道は、クノッソスのメイン道路です。ずっと先をご覧ください」


 ソラに促され、緑豊かな樹々が整然と並んだ道の先へ、真っ直ぐに目を向けた。


 そこにあったのは本物の青だった。透き通った海。


「エーゲ海です」


 余りの美しさに、皆に紛れて、私の口からもため息が漏れた。自分の住む地球に、これほど綺麗な海があったなんて知らなかった。


「エーゲ海を挟んだ近隣諸国には、大国と呼べるほど発展している国家は、まだありません。つまり今は、ヨーロッパ文明が興る前の時代になります。私達の知るヨーロッパ文明は、古代ギリシャから始まったと言えると思いますが、その古代ギリシャ文明に影響を与えたのが、このクレタ島に栄えた文明です」


 へぇ、知らなかったという、私の思いを代弁するような言葉が、皆の口から漏れた。


「今、私達は一段高くなった道路の脇を歩いています。ここは歩道です。真ん中の低い道は、あのように、荷を載せた動物が通ります」


 あのようにとは、私達の少し先を行く、背中に荷物を抱えたロバのような動物のことだ。ロバから伸びた紐の先では、父親と子供が歩道をのんびりと歩いている。


「こういった、人の歩く道と荷を運ぶ動物を分ける道路の考え方も、行く行くは、古代ローマの都市に継承されていきます。私達の未来の道路と同じように、雨水が集まる仕組みも整備されていますよ」


 建築史に興味を持っていた時期もあったから、古代ローマの文明の高さは知っている。あの高度な技術は、このクレタ島に由来していたのかと感心した。


 西欧文化が隆盛する前。人類がまだ瑞々しい時代。今、私はそこに存在している。


 未来の時代の慣習に、縛られる必要のない時を過ごしてるんだ。


 そう。ママに縛られることも無い。私は自由なんだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ