助太刀、プレイヤー VS エリアボス。part.1《ヴェステル・サキドリ緑》
モンスターのレベルは20。戦っているプレイヤー達を勝手に鑑定はできないので、適正レベルに達した上で挑んでいるのかは分からないが、あの大きさに3人ではさすがに人数的に厳しいのか、奮闘しつつもかなり押されているように見えた。
エリアボスの方は、まだ体力が8割以上残っている。戦ったばかりなのかそれともずっと戦っていてこれなのか。ふーむ加勢するか?
また3人で顔を合わせる。
「これどう思います?少なくとも知ってるNPCじゃなかったので、私的にはどちらでも大丈夫です。神人族の方は死んでも生き返りますもんね?」
NPCは一度死んでしまうと、二度と生き返らない。幽霊とかにはなったりはするけど。
なのでNPCだったら助けようと思っていたのだが、見れば戦っているのはプレイヤーだけ。なら無理に入っていざこざに巻き込まれることもあるまい。
まあかなり苦戦しているようだし、ここで加勢するのが人の良い行動というものだろうが。
私にだってその心はあるが、プレイヤーは死んでも生き返る。精々が疑似体験とはいえ死んだことによる、トラウマを持つことになるかどうか。
そう思って、神人族のこと知ってますよのNPC発言をしたのだが、セーフティープログラムが働いているとはいえ、トラウマになるのはまずいかと考えを改める。
「苦戦してるみたいだし」「やっぱり助けに行った方がい⋯え?」
2人に話を振ったそばから話し始めたので被ってしまった。
「すみません。どうぞ」
「ああ、えっと、苦戦してるみたいだから、加勢した方がいいかなと僕は思った」
「あたしもその方がいいかな。ここで会ったのも何かの縁ってね。断られたらあれだけど」
「私も助けに行った方がいいかなと思い直しました」
「皆同じ意見だな。よし、じゃあ声かけようか」
3人の意見は同じ。頷き合って、武器を構える。私は手だが。
声をかけるのはたけまるさんだ。大きく息を吸うと、遠くまで届くように、しかし大きすぎないように声を発する。
「おーい!そこの御三方ー!加勢してもいいですかーっ?」
「っはぁはぁ⋯⋯な、なんだ?⋯精霊⋯っ?はぁはぁ⋯」
「だっ⋯誰か分からないけど、お願いしますっ!」
「お願いしますっ!」
プレイヤー達の返事はお願い。救いを求める声だった。
「りょーかいっ!じゃあ役割は⋯」
あっちのプレイヤー達は3人全員がアタッカーに見える。
短杖を構える魔法職の女性というか少女は、バッファー・デバッファー等ではなさそうだし、少年2人も剣使い。盾を構えている人はいない。
それを見て、たけまるさんがタンク役を引き受け、私とサキドリ緑さんが遊撃役として動くことに決まった。
「僕が敵を引きつけるから、3人はその間に回復してくれっ!2人とも行くぞ!」
「了解ですっ!」「ありがとうございます!」「感謝ですっ!」
3人のプレイヤーの声を聞きながら、たけまるさんの合図で出撃。
たけまるさんは敵の目の前へと走り、私とサキドリ緑さんも左右に別れて遊撃。
「とりあえず念力?いや、これだけでかいし、粉かけ?」
迷いながら敵に近づく。改めて見ても重そうな亀だ。念力で引っ張れるか?いや、先に魔力が尽きてしまうかもしれないな。
んー、粉かけが一番良さげ。巨大すぎて効くかどうか分からないけど、少しのダメージにはなるでしょ。
「前だけ見てな亀野郎!」
たけまるさんが相手の目の前に到着し、盾を構え引きつけるのを確認した後、私はスキルをどこに放つか考えながら亀の真上に飛行する。
「とりあえず甲羅に一発やりましょ」
♢♢♢♢♢
ヴェステルさんと別れて亀の右側へ。近くなりすぎない場所で魔法の袋を漁る。
取り出したのは何の変哲もない灰色の石。鑑定しても石としか表示されないその石を手に持って、亀へ投げつける。
1個目ハズレ、2個目ハズレ、3個目ハズレ。
よし、4個目で目的の場所に投げられた。
「よっし、上手くいった」
何で攻撃せずに、わざわざ遠くから石を投げているのかって?何してくるか分からない敵だからだよ。
あの蜥蜴みたいに、倒したことがあって攻撃パターンが分かってるなら剣でも構えて突っ込んで行くけど、生憎私はこのエリアボスと戦ったことはない。第2エリアへ行った時、パーティー組んでて一緒に行動してたから、たけまるもそうだと思う。
誰かに倒された直後っぽくて、不在だったんだよね。そのままスッと次のエリアへ行けた。
戦ったことがない敵は、警戒しながら手探りで攻略するしかない。特に慎重派の私は。
目の前のでかい亀なんかは、この巨体で回転攻撃とかあったら大変だ。故にまずは小手調べ。近すぎない距離から攻撃を試みるのだ。
私の初撃は石投から始まる。その石の行き先は甲羅の下。いい位置に上手いこと投げられた。
「〈宣言:種も仕掛けもありません〉」
発動から20秒経つまでの間に、自分が関与した攻撃のダメージを1.3倍にしてくれるスキルを使用。
そして魔法の袋から取り出したそれを右手に持ち、生活魔法の1つ〈火種〉で着火させる。
「ここで〈交換魔法〉。上手く爆発してよ?」
スキルを発動したことで右手にかかる重みが消え、代わりに軽い重みが右手にかかる。
右手でそれを握ると石の感触。成功だ。
自分を中心に半径3メートルの範囲にある物と物を交換するだけのスキル。再度使用できるようになるまで1分かかるが、使い所によってはかなり便利なやつ。
石と交換したのは、プレイヤーが開発した火力弱めな爆弾。ヴェステルさんが投げた石がちょうどお腹の下、ちょっとした隙間に転がっていったのを視認したのですり替えた。
私が投げて甲羅の下に上手く入った石は次に使う。
爆弾はもっと火力が高いのもあるが、皆を巻き込んでしまうので使わない、使えない。
亀の下に入った爆弾は、目論見通りの爆発を起こし黒煙を上げる。威力は弱いが、そこそこ効いたのでは?甲羅の下って上よりは柔らかいイメージあるし。
「よし。とりあえずこの調子で、どんどん爆発させよう」
接近戦は爆弾が尽きてからでいい。というか、相手がとる行動をなるべく知ってから接近戦に移行したい。
「プレイヤー達もすぐ回復して復帰するだろうしね」
あの3人が復帰したら、この亀がどんな攻撃をしてくるのか聞かないと。
他のゲームと違って決められた攻撃パターンはなくとも、生物としてこれにはこう反応するとかはあるはずだから。
〘セーフティープログラム〙
ゲーム内で死んだ時に、現実世界の脳が現実の体も死んだと誤解しないように発動するプログラム。
要は死んでないよとVRヘッドギアから脳へと電波を流している。
心の弱い人はトラウマになるケースもあるが、それはゲームを行った本人の責任と裁判では突っぱねられている。
VRヘッドギアやゲームの説明欄には、心のケアはご自分で。心の弱い方にはお勧めいたしません。トラウマになるケースがございます。といった強い文言が入っているためである。
説明書や注意書きはよく読みましょう。
〘魔法:火種〙
便利な生活魔法の1つ。
小さな火種を創る魔法。野宿等をする時に便利で、探索者におすすめ。
使用時間に応じて魔力も消費される。
〘スキル:宣言:種も仕掛けもありません〙
奇術師専用職業スキル。
発動から20秒経つまでの間に、自分が関与した攻撃のダメージを1.3倍にする。
ただし、時間内に1回も攻撃を当てることができなければ、スキルが再使用できるようになるまで全ての攻撃が半減する。
リキャストタイム:40秒
〘スキル:交換魔法〙
奇術師専用職業スキル。
自分を中心に半径3メートルの範囲にある物と物を交換するスキル。
リキャストタイム:60秒




