妖精の森に見知った少女、どうしてここに?
=====================
〈件名〉:写真の件
〈差出人〉:サキドリ緑
〈本文〉
写真の件だけど、無許可で撮った神人族(名前は分かんなかった)が無断で掲示板に載せたことがきっかけみたいだよ。広まっていく過程で事実が歪曲していったみたいで、頼んだら誰とでも撮ってくれる許可いらずの妖精って言われてるね。
ちなみに盗撮&無断アップロードしたその神人族は、皆から指摘されて怒り狂ったその日を最後に見かけなくなったとか。兵士に捕まったのかもね。
※掲示板っていうのは、神人族だけが使えるスキルみたいなもので、神人族同士で情報共有することができる便利なもの。
=====================
=====================
〈件名〉:情報感謝です
〈送信先〉:サキドリ緑
〈本文〉
まさか勝手に撮られていたなんて⋯。知れてよかったです。
調べてくれてありがとうございました。
=====================
このまま噂が広まれば、信じた人達が無許可で撮影してしまいカルマ値が溜まる、そんな未来が訪れてしまう。そうならないように注意喚起してもらおう⋯⋯と考えたのだが、それは一瞬のこと。
全く関係のないサキドリ緑さんを巻き込んでしまうことになるし、なにより誰が発したのかも分からない状態になっている噂話を信じて、許可を取らずに撮影しようとするモラルのない者たちの為に私が骨を折る必要などどこにもないことに思い至り、返信は感謝のみで留めた。
モラルがしっかりしている人は、撮影前にちゃんと許可をもらいに声をかけてくれるものだ。お土産探しの時に出会ったあの2人のプレイヤーのように。
サキドリ緑さんからのメッセージに返信をした私は、ナブラ君へのお土産と置き時計を買い帰路につく。
本当は調理道具も欲しかったのだけれど、全体的にものの値段が高くて手が出なかった。いつも持ち歩いている換金用アイテムの残り枚数が少なかったからだ。
元々ハルーラ王国よりもコアキュヨウ帝国の方がものの値段は高い。前世の頃からそう。質どうこうは関係なく、この国では単純に高い値段が普通の値。
だからわざわざここで置き時計を買わなくてもよかったんだけど⋯⋯後回しにしたら忘れそうだったので買うことに。
「覚えてるつもりでも忘れちゃうことってあるからなぁ⋯」
どこで買いたいとかここのブランドがいいとかいうこだわりは特にないし、調理道具はマラトスかネモル、もしくは他の町で買うことにしよう。
思えばハルーラ王国で行ってない所は多い。
第1エリアには3つの村があるが今生では行ってないし、第2エリアや第4エリアにも行ってはいない。用がないからという理由もありますが。
観光も兼ねて行ってみるのもありですね。
「変わらずいい街でした。良い収穫もありましたし、気分良く帰れます」
名前に妖精と付く妖精の森で、未だに叶っていない妖精との出会い。その邂逅はこの街で発生した。
とはいえ、相手と会話を楽しんだとかそういう交流があったわけではありません。見つけたと思ったら逃げられるんですよね。4回中4回それじゃあ、何これですよ。
目が合うとそらされ逃げられるので避けられているのは分かりましたが、理由は不明。
会話したこともない相手に避けられるって何ですかね?
さほど時間もかからず、妖精の森上空へ到着。
お土産ナブラ君喜んでくれるかなと思いながら下降する。
「⋯ん?」
下降する度に近づく地面、明瞭になる景色。その景色の中に、見知らぬ者と親しげに会話する彼の姿があった。
この妖精の森で初めて見る人型の生物。ここからだと何の種族かは分からないけど、ナブラ君と親しそうだし⋯たぶん妖精族?
レイドモンスターもいてイベントモンスターもいる、こんな危険な場所に他の種族がそうそう足を踏み入れるはずがないからきっとそう。
相応の実力がある者でも一人では、森に入った瞬間にやってくる雀もどきを攻略できるかどうかは怪しいところ。透明飛行で体をグチャグチャにされるのがオチではなかろうか。
団体じゃない限り、森を抜けこの花畑エリアまで来るのは難しい。と思う。
運が良ければあの時のようにここに来ることは可能だけれども。
「⋯⋯あれ⋯?あの時ってなんだろう⋯」
心の中で思ったあの時が分からず首を傾げる。現時点までそのような出来事に遭遇したことがないから。
ここには誰も来たことがないはず⋯。
「あの時⋯あの時⋯⋯⋯んー⋯⋯まー、いっか」
存在しない出来事をさも存在したかのように改変させた脳のイタズラだろう。不思議に思いつつもそれ以上は考えるのをやめた。
更に下降を続けると分かるナブラ君の話し相手。
人間族の少女。いや、半透明だから幽霊か。レイス系のモンスターではないし、妖精族でもなかった。
知り合いじゃなさそう、だけど⋯⋯でもなんかどこかで見た気が⋯⋯⋯あっ!ちょ、ちょっと待ってっ、よく見たらあの子〈熊八亭〉にいた店員さんじゃないっ?!
死んだんっ?!いつ死んだんっ?!てかなんでここにいるんっ?!
驚きと疑問が押し寄せ、入り混じった表情を解けないまま少女と会話をするナブラ君の近くへ降り浮遊する。
「ソウナンダヨ。ア、ヴェステルオカエリ」
「た、ただいま」
「ヴェスちゃんおかえり」
「⋯ど、どうも⋯ただいまです」
ええっなにぃっ?なんで名前呼ばれたのっ?!しかもなんかあだ名みたいなので呼ばれたっ!?怖いよこの子っ!名前教えてないのになんで知って⋯⋯あ、ナブラ君が言ったからか。
「どうしたの?色んな顔して」
「あ、いえ。大丈夫です、はい」
「いや、明らかにおかしいんだけど⋯」
「ナニカアッタノ?ダイジョウブ?」
「ええ、ええ、大丈夫ですよナブラ君。ところで聞きたいことがあるんですが」
「ナニ?」
「なぜセルンさんがここにいるのでしょう?」
「ウン、ダイジョウブジャナイネ」
〘瑠姫ちゃんのその後〙
ヴェステルに許可を得ることなく撮影し、あまつさえ掲示板に写真を載せるという愚行を犯してしまったプレイヤー、瑠姫ちゃんはあの後(50話目-掲示板:レア種族・レア職業を求めて)、こんな感じで他プレイヤーとやり取りしていました。
======================
【レア種族情報交換会】どのくらいの種族が存在するのかを調査&皆で情報交換、色んな種族の方と交流しちゃいましょう(47ページ目)
41:瑠姫ちゃん
>>>39
憲法には撮影の自由っていうのがあるんだよ?おじさん知らないの?あ、ニートだからか
43:はんなりたっくる
それ表現の自由のこと言ってるのか?名前違うぞ
学校行くだけじゃだめだぞ、ちゃんと勉強して身に付けないと。苦労するのは未来の君なんだから
46:トンザ教諭
>>>41
ニートではないんですが⋯⋯まあ、これ以上は無駄ですね。もう何も言いません。お好きにどうぞ
47:瑠姫ちゃん
>>>43
うわー、ここにも説教おじいるー
頭良いアピとかだっさ。そんなの知ってるし
48:瑠姫ちゃん
なら最初から絡んでくんな
50:14885131'''"14
>>>47
じゃ、俺は瑠姫ちゃん撮ろっかな
今どこにいる?探しに行くわ
51:瑠姫ちゃん
は?盗撮?うわっ、犯罪者がここにいるわ
54:14885131'''"14
>>>51
え、犯罪じゃないよ?撮影の自由っていう憲法があるんでしょ?
これから撮影して掲示板に写真載っけてあげるね。こいつ盗撮犯でーすって。あ、動画の方がいいかな?
まあいいや。これからいくねー
55:瑠姫ちゃん
ふざけんな!盗撮とかサイテー!肖像権の侵害だ!兵士に捕まれクソジジイ!
56:HIVIタコ2
これはこれは⋯
======================
その後色々あって反省し心を入れ替えた瑠姫ちゃんは、アバターを作り直しレベル1から再スタート。
現在は〈ヴェステルファンクラブ〉というクランに所属し、罪を償うように教会で奉仕活動をしている。
何があったのかは分からないが、プレイヤー、HIVIタコ2と関わってから性格と趣味嗜好が一変してしまった。
ログイン中の時間配分はヴェステルに関する行動が半分を占めており、目撃情報を頼りにヴェステルを探し、発見したら追いかけ影から観察、目で見て愛で、ヴェステルにいけないことをする妄想をして二ヒヒと笑っている。
全サーバーのヴェステルが推しで、平等に愛しているため、日によって遊ぶサーバーが変わる。
〘写真メニュー〙
背景や人物等の写真を撮ることができる、AIが教えてくれない機能の一つ。
「撮影」と言うと、その時に見えているものを写真として記録することができる。
「写真」と言うとウィンドウが出現し、撮影した写真を見ることができる。フォルダを作り、ファイルを分けることも可能。
人物を撮る場合の注意点。相手を写真に収めるには対象の許可が必要。返答は口頭でも構わないが、相手の心からの許可がないと写真には写らない。
つまり相手がいいですよと言っていても、心の中で嫌だと思っている場合は写らないということ。これはプレイヤーだけでなくNPCも同じ。
(例)町中で写真を撮ろうと思った場合、許可をもらわずにそのまま撮ると背景のみの写真ができ、写って欲しい人物に許可を取って撮ると背景と対象の人物のみの写真ができる。
撮った写真はメッセージに貼って送ったり、掲示板に載せたりできる。
写真を撮れるカメラのような電気製品等を使用した時は別で、こちらは相手に許可を取らなくても写真を撮れてしまうが、専用の魔法や准ずるものを使用しないとメッセージや掲示板に写真を貼ることはできない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
《お知らせ》
【随時更新・ネタバレあり】登場キャラクターに、新たに1名追加。新規キャラの紹介文を載せました。




