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「王太子殿下と、どういう関係なの?」
挨拶もなしに、モブンナは質問してきた。
彼が去った後、私も知高さんの元に戻ろうとしたら、モブンナが現われたのだ。彼女は男爵令嬢だ。こういうパーティーに参加していてもおかしくないのだが。
私とフェブルウスが共にいるのを見て、どういう関係か気になったようだ。
「別に、あなたに教えてあげる義理はないわね」
別に彼との関係(前世の彼とは親子だった事だ)を隠す気はないが、わざわざ吹聴する事もないだろう。
そのままモブンナを放って広間に戻ろうとしたのだが、なぜか彼女が突っかかってきた。
「偉そうに。人殺しのくせに」
忌々し気に私を睨みつけて言うモブンナに私は首を傾げた。
「確かに、私は人殺しだけど、どうして今そう言われなければいけないのか、意味不明なんだけど?」
私にとっては当然の疑問なのだけど、私のその応答にモブンナは余計苛立ったようだ。
「王太子殿下と仲が良いからって、偉そうにしないで」
「いや、別に偉そうにはしてないけど」
そう見えるなら、モブンナがそう感じただけだろう。
「人を殺した女が生きていていいと思っているの? 別の世界に転移したからって、殺人の罪がなかった事になるとでも? どうして、そう平然としてられるのか、私には理解できない」
いつもはペレウスと知高さんと一緒で、その時のモブンナは忌々し気に私を睨みつけるだけで会話に参加しなかった。
だから、分からなかった。こうして二人きりで会話すると全くモブンナと話が通じない。
もう彼女を放って広間に戻るべきなのだろう。これ以上、話していても私が疲れるだけだろうから。
「別に、あなたに理解されたいとは思わないけど」
ただ少しだけむかついたので言い返させてもらう。その言葉も彼女には理解できないだろうし、何の精神的打撃も与えられないだろうが。
「私の監視人になったのなら、私が夫を殺した理由を知っているはずよね?」
勿論、どんな理由があるにしろ、人殺しの免罪符にはならない。分かっている。
それでも、同じ女なら私が夫を殺した理由に多少は同情しないだろうか? それだけモブンナが私を嫌っているという事だろうけれど。
「軟禁されて強姦されて、それらをずうっと我慢して一生を送るなど私には無理だった。でも、あなたは人を殺すくらいなら、それらの日々に耐えられるのね? 私には到底無理だったけど、すごいわ!」
実際のところは、モブンナが私と同じ経験をしてみなければ分からないのだけれど、皮肉として「すごい」と持ち上げてやる。
「男を見る目がなかっただけでしょう? 私なら、そんな男を夫に選んだりしないし、そもそも人を殺すなど、私にはありえないわ」
私は元の世界では名家の娘だった。そして、名家は、この世界の王侯貴族同様、家のために結婚する。だから、私もだがモブンナも自分の意思で夫を選べやしないのに。
そして、「人を殺すなど、私にはありえない」というのも、実際、その状況にならなければ分からないのに。
それらを指摘しても、正論を口にしても、感情で答えるモブンナには理解できずに、こちらが理解不能な反論をしてくるだけだろう。
だから、私は指摘や正論ではなく別の言葉を口にした。
「殺人の罪がなかった事にならないのは、罪を犯した私自身が一番分かっている」
夫を殺した事は後悔していない。それでも、人殺しという人としての禁忌を犯した以上、断罪される覚悟はできている。
「転移してきた異世界人が罪人だろうが、この世界に害をなさない人間なら受け入れると法で定めているのでしょう? そして、あなたは、それを見極めるのが仕事の《異世界人対策課》の人間でしょう。公正に判断しなければいけないんじゃないの? ただ私が気に食わないという理由だけで私をこの世界に不要な人間だと判断するのは違うんじゃない?」
「偉そうに! 人殺しが!」
それしかモブンナは言えないのだろうか?




