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「愛した妻も気づかなかったと言ったわね。お母様もこの世界にいるのね」


 それが、私の気になったもう一つの箇所だった。


「ああ。今生の私の母親だ」


 彼は何でもないように言ってくれたが、私には結構な衝撃だ。


 自分を殺した男が双子の弟になっただけでなく愛した妻が母親になったとは。


 不思議と彼に対して「ざまぁみろ」とは思わない。勿論、同情もしないけど。


 転生した彼(フェブルウス)は本当の意味では、豊柴康宗(お父様)、私が誰よりも嫌って軽蔑していた男ではない。


 それでも、豊柴康宗(前世)の記憶と魂を持っている。そのせいか、今生の彼(フェブルウス)に対する想いは複雑なのだ。


「別に大してショックでもないぞ。私が惚れていたのは、あくまでも豊柴芙美花、前世の彼女だ。いくら同じ人格でも前世(芙美花)の記憶を持っていても、私にとって母と芙美花は『別人』だ」


 私の心情を察したのか、彼は、そんな事を言う。


 まあ、今生が血の繋がった母子である以上、前世の想いをそのまま受け継ぐのは非常にまずいのだが。


「……前世が私の夫だった彼に、今生のあなたの弟に、復讐しないの?」


 ふと思いついた事を私は尋ねた。


 少し会話しただけでも分かる。


 今生の彼、フェブルウスは、豊柴康宗と同じ種の人間だ。


 誰よりも酷薄で傲慢、そして、質が悪い事に、それらが許されるカリスマ性と優れた能力を持っている。


 人格が違っても同じ魂と記憶があるのだ。「自分」を殺した人間を絶対に許さないはずだ。


「復讐というか、ちょっとした嫌がらせならしたな」


(したんだ)


 私は心の中だけで繰り返した。


 彼が、どういう「嫌がらせ」をしたかは聞く気はない。


 実際に殺すほど嫌った夫の転生でも、幸せになった今はどうでもいい存在だ。彼がどういう「嫌がらせ」をされたかなど興味はない。


 他人事にすぎないはずだった。


 けれど、その「嫌がらせ」は「私」に深く関わる事になるのだ――。











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