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ひとりご飯日和〜小さなおいしさ、徒然〜  作者: 地野千塩


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第9話 パンみたいなピザ

 風が心地いい。街路樹の葉っぱも色づき、秋を感じているところ。


 土曜日の午前中、散歩中だった。せっかくの休日だし、ゆっくりと公園の中を歩くの、なんて贅沢な時間だろう。


 散歩中の犬もかわいい。ぶんぶんとご主人様に尻尾を振ってる。子供たちもキャッキャと騒ぎ、土曜日の午前中はいつも以上に平和だ。


「でも、なんかお腹減ってきたかも……」


 ちらりとベンチの方を見ると、老夫婦がサンドイッチを食べていた。きゅうりとツナのサンドイッチ。手作りらしいしっとりとしたサンドイッチ、決してコンビニでは食べられないんだよなぁ。


 ということで、昼ごはんの買い出しはコンビニはなしだ。やっぱりスーパーに行って健康的な食事を選ばなくちゃ。


 そう決意した。決意したはずなのに、惣菜コーナーのトラップに引っかかってしまった私。


 惣菜コーナーの中央に鎮座し、王女のような風格のピザ。しかも箱に入ってる。箱入りのピザ、どうしてこんなに食欲を刺激するのだろうか。トマトソースのいい匂いもするし、抵抗できない。どう見ても一箱分なんて多いはずなのに、負けた。あぁ、惣菜コーナーのトラップに負けた。


 それでも、少しは自制心があったらしい。インスタントの味噌汁と濃い烏龍茶も買って一緒に食べることにした。どうか、これが免罪符になってほ欲しいもの。


「いただきます」


 手を合わせ、まずは味噌汁から。ピザと味噌汁って客観的にどうなんだろう。でも、これは免罪符。仕方ない。味噌汁を飲み終えると、烏龍茶も一口。ここでようやくピザの箱を開く。


 食卓を占領するピザの箱。もう味噌汁も烏龍茶も見えない。


「あぁ……」


 負けた。あぁ、負けたんだ、スーパーの惣菜コーナーのトラップに。言い訳はしない。潔く白旗をあげ、ピザに齧りつこうじゃない。


「お、おいしい……」


 やわらかなパン生地風の生地、最高。本格的なピザじゃないのに、その安っぽさがいい感じ。その割にチーズも甘めだし、冷めてもおいしいのはなぜ?


 試しに一枚、トースターで軽く温めてはみたが、パン生地のピザはどっちでもおいしい。謎だ。この謎を解いてくれる名探偵はいないだろうか。コナンくんだったら解けるだろうか。


 そんな事を考えていたら、あっという間に箱の中見は半分になっていた。さすがに食べ過ぎだ。残り半分は夕方にダラダラとアニメでも見ながら食べるか。


 満腹感でいっぱい。他のことは考えられなくなってあいまった。こんな健康に悪い食事でも、別に自己肯定感は落ちていない。昨日まで健康的な食事でつけた自己肯定感は一体なんだったんだろう……?


「まあ、それでもいいか。ピザがおいしかったら、別に」


 窓の外を見ていると、綺麗な秋空だ。食欲の秋だし。そういう事にして、夜もピザを食べよう。

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