第8話 スイーツの代わりにきな粉ラテ
ようやく金曜日だ。仕事終わりは開放感でいっぱい。
「おつかれさまですー!」
ロッカーで制服を脱ぎすて、さっさと帰る。いつもの帰り道も足取りが軽いものだ。夕暮れの色も嬉しい。今日は残業じゃなかったのも最高ではないか。
スーパーに寄って帰ろう。今夜は何を食べようかな。肉でも魚でも脂っこいものでもなんでも食べられそう。そんな気分だ。
金曜日の夕方、スーパーの雰囲気もなんとなく開放感に満ちてる。私と似たようなOL風の女性も買い物していたし、金曜日の夜は特別だ。
せっかくだし、スイーツを買おうかなぁ。チョコレートケーキ、シュークリーム、プリン、大福、チーズケーキ、スイーツコーナーを見ているだけでも目に毒。慌ててチーズや牛乳のチルドコーナーへ避難した。
「あれ、アーモンドミルク売ってる……」
アーモンドミルクの新製品が出たらしい。健康に良いとやたらと推されてる。ポップもあった。きな粉と黒糖を入れてラテとして飲むと絶品らしい。鉄分も豊富。貧血にも良いとか。
そんなポップを見ていたら、逆らえない。勝手にカゴに入れてた。あときな粉や黒糖も。
そうか、せっかく昨日は健康的な料理を食べていたし、続けよう。どうせ昨日の味噌汁余ってるし。惣菜コーナーでもしじきの煮物を買う。やっぱり健康に気を使うって気分いいなぁ。
そして家に帰ったら、味噌汁やご飯を温め、しじきの煮物も小鉢に出す。もうこうするだけで見た目も健康的な食卓。納豆も小鉢に入れよう。
「いただきます」
手を合わせて食べ始めた。昨日も今日も健康的な食事だ。ちゃんと小鉢に並べているし、金曜日の夜なのによく自制できてる。私、偉い。自己肯定感はぐんぐん上がってきた。
それに、いつもよりよく噛む。一人ぐらしだと、どうしても早食いになりやすいが、ゆっくり噛んで味わうと、健康的な食事もごちそうじゃないか。
「うん、良いね……」
キリキリと我慢しているわけじゃない。自らの意思で健康的な食事を選んでる。
「ごちそうさま」
ついに食べ終わった。あとはそう、お楽しものアーモンドミルクのきな粉ラテが待ってる。
グラスにアーモンドミルクを注ぎ、黒糖ときな粉を入れる。
「いただきます!」
まずは一口。優しい甘みが口いっぱいに広がる。なんとなくバナナも食べたくなってきたが、スイーツを我慢して正解だった。一口飲んだだけで自己肯定感、鰻登りだ。
「スイーツを我慢した私、偉いわー」
ついつい自分への褒め言葉も溢れてしまうぐらいだ。ゆっくりときな粉ラテの味を楽しみ、もう満腹だ。強いて言えばバナナも食べたいけれど。
「うん、次はバナナも買ってこよう!」
金曜日の夜、更けていく。まあ、今日ぐらいは夜更かししても良いだろう。寝坊しても大丈夫だから。




