第7話 夜から仕込む出汁
体重計に乗って焦った。一キロ増えている……。
「やっば……。何を食べた?」
今日、夜に食べたソーセージ丼が頭をぐるぐるする。いや、あれがすぐ贅肉になったわけじゃないのに、冷や汗が出る。
落ち込んでしまう。太ったというだけで自己肯定感は下がる。逆に痩せた時、自己肯定感が上がるのもなぜだろう。単なる数字だ。別に私みたいなアラサー女、痩せても別にメリットないのに。
「でもやっぱり、だらしない生活ってメンタルに良くないよなぁ。健康も大事だしね。明日こそは健康的な食事をするし」
びつぶつと言い訳をしながら、明日の夕飯はもう決めた。健康的な味噌汁にしよう。出汁は今から干し椎茸と切り干し大根を水につけ、一晩中味を出そう。
さっそく用意をし。深めのタッパーにそれらと水を入れる。
一晩寝かせる。たったそれだけの行為なのに、味が余計に出てそうだから不思議だ。
「私も寝るわ。出汁も、よい夢を」
そして、翌日。そんなことはすっかり忘れ、一日中仕事を頑張った。伝票を整理し、数字をエクセルにひたすら打ち込んだり、電話応対をしたり、他部署に書類を届けにいったり。
「飯田さん、太った?」
なんてお局に言われた。疲れた。それでも残業も乗り越え、ようやく家に辿りつく。
「くそー、お局のやつ。太ったとか面と向かっていうか?」
思い出してイライラするが、今日は一晩寝かせた出汁があある。添加物も何も入っていない健康的な出汁だ。
「うーん、いい匂い」
さっそくこの出汁で味噌汁を作る。キャベツやきのこもどさりと入れ、見た目だけでも満足。出汁の匂いと味噌のいい匂い。それにご飯と納豆を合わせたら、健康的な夕飯が出来上がる。
「いただきます」
ほかほかな湯気を感じながら、手を合わせる。まずは味噌汁を一口飲む。
「わー、味が染みてるわ」
一晩寝かせた甲斐がある。時間をかけ、じわじわと味が出ていく様子を想像していたら、余計においしい。
「健康的な夕飯食べてる私。なんかすっごい良いことをしている気分だ」
思わず鼻歌も出てきてしまう。
「いやいや、そんな別に偉いことそているわけでも無いんだけぢどね」
出汁のおかげか、自己肯定感が上がったせいか、味噌汁一杯だけでも満足だ。
「ごちそうさま」
でも、食べ終えた後、何か物足りない。あれだけご機嫌だったのも一瞬だった。頭の中、食糧棚に隠しておいてあるチョコチップクッキーが出現。
「チョ、チョコチップクッキー……」
た、食べたい。でも、せっかく今は健康な食事で自己肯定感も上がってる。ここでチョコチップクッキーを食べたら、自分のことが嫌いになりそうじゃない。
ここはグッと我慢。でも我慢すすぎるのも良くない。
「あ、確かインスタントの甘酒買ってあった! 甘酒だたら良いでしょ?」
お湯を沸かし、甘酒を飲む。優しい甘さだ。チョコチップクッキーを我慢したの、褒められているみたいで嬉しい。




