第6話 これでいい、ソーセージ丼
あと二日で平日は終わり。あとちょっとだ。休日までは。
水曜日、会社からの帰り、ちょっと疲れていたが、運が良いことに電車で座れた。ラッキー。こういう小さな幸運、ありがたい。
もっとも、スマホでSNSを見てしまったが。今日の夕飯は何にしようかと悩む。水曜日だし、疲れ始めてきているし、ささっと作れてカロリーがとれるものがいい。適当にSNSのタイムラインをのぞくが……。
嫌なものを見てしまった。意図していないのに、うっかり。婚活や恋愛インフルエンサーが「非正規雇用や派遣社員は結婚も婚活するな」。という強い言葉が並び、心臓がバクバクしてきた。
今は派遣社員だ。前の会社でパワハラにあい、休職してしまったから、今度は無理しないことの選択だった。確かに結婚とか恋愛に憧れるけれど……。
そんなのを見てしまった後、心はずんと沈む。客観的にみたら、仕事も恋愛もうまくいっていないアラサー女。SNSに載せられるようなキラキラエピソードもない。自慢できるもの、何にもない。
「はぁ……」
家に帰ってきたらため息が溢れる。あと二日頑張れば休日なのに、遠い気分だ。
それでもお腹は減る。夕飯を作らないと。冷蔵庫の扉をあけ、食材をチェック。ご飯、カット野菜、納豆、ベーコン、卵、それにソーセージがあった。
「やば、ソーセージの賞味期限が近い!」
ということで、今日は迷わずにソーセージ。さっと炒めてソーセージ丼にしよう。
ソーセージは輪切りのする。その方が見た目にもいっぱいあるように見えるし。人間の目の錯覚、素晴らしい。
そしてサラダ湯で適当に炒める。焦げ目がついてきた。この色合い、ジュージューという音、もうそれだけで素晴らしいじゃないか。
一旦、火をとめてご飯をレンチンして丼に盛り付ける。出来上がったソーセージも載せる。でも、最後じゃない。
「目玉焼きだよ、目玉焼き!」
鼻歌を歌いながら目玉焼きを焼く。ソーセージの味が染み付いたフライパンに生卵を落とす。ジュ、ジュ、ジュ。もう音だけで美味しい。
黄身が半熟のとろっとしたところで火を止め、ソーセージの上に盛り付ける。最後に醤油も数滴。目玉焼きの白身に醤油がはじいてる。唾を飲みこむ。これ、絶対に美味しい。
「いただきます」
手を合わせて食べ始めた。やっぱり、ソーセージを輪切りのして正解。目の錯覚のせいで、いっぱい食べた気分になる。
「うん、いいわ」
こういいうので、いい。仕事で疲れて帰った夜。うっかりSNSの強い言葉を見た夜は、気取らないソーセージ丼が一番良い。
食べ終わったのに、まだソーセージの香ばしい匂いがするし。しばらく余韻を楽しんだら、洗い物も頑張るか。




