第10話 いつもより早い炊き込みご飯
日曜日の昼、急にさつまいもが食べたくなってしまった。原因は一個だけだ。上司から貰ったさつまいも茶が、予想以上に美味しかった。
「何これ、さつまいも味! しかも砂糖入っていないのに甘い!」
その味に感動していたら、さつまいも本体も食べたくなるのは自然の摂理だ。
さっそくスーパーへ行き、さつまいもを買ってきた。他に蒸すだけだと味気ない。やっぱり炊き込みご飯だ。
いつもの夕飯の時間よりだいぶ早く準備を始める。これは日曜日の特権じゃないか。
米を浸水させている間、さつまいもを切り、水にさらす。あくを抜くためだ。この小さな手間が味を左右するのだから、料理って面白い。
浸水が終わったら、炊飯器に調味料も入れ、一番上にさつまいもを置く。これだけでも色鮮やかだが、まだまだ我慢だ。
「うーん、早く炊き上がらないかな」
味噌汁を作ったり、キッチンを掃除しながら待つが、この時間が一番おいしいのかもしれない。簡単の手に入るものは簡単に去る。誰か偉い人が言っていた気がする。
そうして炊飯器からいい匂いがしてきた。これは良い予感しかしない。時計はまだ十五時半だが、いいか。いつもより早い夕飯を食べるのも日曜日の特権だ。どうせサザエさんを見る頃には憂鬱になっていくんだ。だったら楽しい時間に美味しいものを食べた方がいいじゃない。
完成した。炊飯器をのぞくと、ふわふわの湯気とともに甘い匂いが漂う。さつまいもももちりん、米もツヤツヤだ。新米じゃないけれど、まずそうには全く見えないから。
「ゴマかけないと!」
ゴマ、地味なトッピングだと思ったが、こうしてかけると彩りがいい。それにゴマがかけられる余裕のある私。なんだかいいじゃない。勝手に自己肯定感が上がってしまう。
ちょっと大きめの茶碗によそってみた。ダイエット中は極力避けている茶碗だが、いいだろう。残すぐらいなら食べた方がいいはず。
「いただきます」
手を合わせて食べ始めた。他に味噌汁と納豆しかない食卓だったが、さつまいもの炊き込みご飯の存在感で物足りなさはゼロ。むしろ、食べれば食べるほどに満足感しかない。
いつもより早く夕飯を食べているのもいいものだ。体内時計、ちょっと狂う?
「味噌汁と合うわぁ……」
これぞ日本の食事って気もするが、戦時中や戦後すぐは炊き込みご飯はそうでもなかったらしい。むしろかさ増しのイメージが強く、亡くなった祖母は炊き込みご飯を嫌悪していたぐらいだ。
「おいしいのになぁ……」
でも現代の価値観で祖母の価値観は決められない。時代によって価値観なんて簡単に変わる。
「ごちそうさま」
それでも、今がおいしいと思えたらいいか。もうすぐ憂鬱な時間が始まりそうだし、早い夕飯もいいものだ。




