第4話 残業日のオイルサーディン丼
今日は残業だった。疲れた。
「こんな時は料理したくない……」
家に帰ると、ついつい本音がこぼれ、キッチンの食糧棚にあるカップラーメンと目があう。これだったらお湯を沸かして三分ですむ。
「いやいや、さすがにアラサーにもなってカップラーメンの夕食とかダメじゃん……」
ぶんぶんと首を振る。最近、毛穴も開いている。便秘気味だし、ここでカップラーメンという選択肢は無理矢理消す。だからといって冷凍食品の焼きおにぎりやドリアというのも……。いっそオートミールのお粥でもいいかと思ったが、それはそれで質素すぎるというか。
「なぜか夕飯が決まんない……。お腹空いているのに、なんで?」
残業で頭を使いすぎたのかも。もうなんでもいいや。食糧棚にあるのを適当に掴む。
それはオイルサーディンの缶詰めだった。なぜか手の平にしっくりする。一応魚だし、思ったより罪悪感を呼ばないし。それに賞味期限も近いじゃないか。これはオイルサーディン一択だ。
中見を出し、フライパンで軽く炒める。もうオリーブオイルのいい匂いがそてきた。
「うっ……。これだけでもおいしそう」
あとはどんぶりにご飯を盛る。その上にカット野菜のレタスや玉ねぎをひく。こうすることで油がご飯にシミシミにならない。それに罪悪感も軽減してくれる良い緩衝材だ。
あっという間に完成した。五分もかからなかっただろう。それなのに、罪悪感も少なめ。オイルサーディン、不思議な食べ物だ。
「いただきます」
手を合わせると、さっそく食べ始めた。まずはオイルサーディンを一切れ。やわらい。口の中でほろっと崩れていく。
「やだ、思ったよりおいしい」
意外とご飯にもあう。米に油がコーティングされ、味がはっきりしているからだろうか。レタスや玉ねぎのおかげで罪悪感も薄まっているし、パクパクと食べてしまう。
最後の方になると、ご飯が油につかり、かまりグズグズ。これを食べるのはさすがに悪いことしている感覚がしてきたが、今日は残業だった。一日中、よく働いた。ちょっとぐらいのカロリー、帳消しになるはずだ。
「ごちそうさま」
気づくと、もうどんぶりは空だ。あっという間に食べてしまった。それぐらいお腹が減っていたのかもしれない。うん、今日は素直に仕事を頑張ったと認めてもいいじゃないか。
「はぁ、よく食べた」
これからどんぶりを片付けて、明日の用意して、風呂にも入らないと。まだまだ眠るわけにはいかない。もうちょっとだけ頑張ろう。




