第3話 薄闇のチキンラーメン
雨音がうるさくて眠れない。時計を見たら、まだ日付は変わっていない。やけに時間の流れが遅く感じる。
「なんでこんな最近、長雨……? 秋の方が梅雨より雨が長い……」
除湿をかけても、なんか空気が重い。雨のせいでじっとりしている。洗濯物の乾きも悪いし、髪も全くまとまらない。明日が休みでよかった。もし会社がったら、無理矢理にでもアイロンかけてまとめるしかなかった。
「それにしても、なんか腹減ったな……」
ちゃんと夕飯も食べたはずなのに、窓の外から響く雨音に食欲も狂っていく感じ。こんな夜は、そう、特別じゃない普通のものが食べたい。
「それってなんだろ?」
とりあえずベッドから起き上がり、冷蔵庫をチェック。生卵、カットされたネギもある。他にも冷えご飯やキャベツも置いてあるのに、頭の中に浮かぶのはチキンラーメン。そう、特別じゃない普通の味を求めていた。
さっそく鍋でお湯をわかし、チキンラーメンを入れる。ほどなくクズクズしてきたら、卵もダイブさせる。ちぃっと半熟になったところで火をとめ、どんぶりに盛り付ける。最後にカットネギを散らせば完成だ。たぶん、五分もかからず完成。
「なんか、夜食って悪いことをしているみたい……」
アラサーの私だ。頬の毛穴や体重計の数字が頭をぐるぐる回る。電気をつけるより、ベッドサイドの灯りだけでいいか。薄暗いと湯気もはっきり見えて、余計においしそうに見えるのが不思議。
「いただきます」
手を合わせて食べ始める。まずは一口。この一口が最高。もうこれだけでお腹は満足してしまうが、さらに二口、三口と続ける。本当に悪いことをしている気分。
ゆっくり食べていたせいだろうか。麺が少しふにゃっとしてきた。伸びてきたのだろうが、なぜかチキンラーメンはこうなっても美味しい。
半熟状になった白身もプルプル。グズグズになった黄身を溶かして麺を一気にかき込む。汗が出てきた。鼻も痛いし、舌もちょっと火傷しているのに、おいしい。満足。普通のこの味が尊い。
「おいしかったぁ。ごちそうさま……」
スープまで飲み干してしまった。おかげで急に眠気が襲ってくる。今夜はぐっすり眠れそう。
「なんか歯磨きするのが惜しいんですけど」
でも虫歯は怖い。中途半端だ。完璧に悪い女になれないから不思議なもの。
ベッドサイドの灯りも消す。部屋は暗くなった。ベッドに潜りこめば、あとは眠るだけ。




