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ひとりご飯日和〜小さなおいしさ、徒然〜  作者: 地野千塩


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第2話 台風一過のバターチキンカレー

 子供の頃、台風一過を「台風一家」だと勘違いしていた。なんか凄い大家族だなと言い、両親に大笑いされたものだ。


「は、晴れた……! 台風一過だ!」


 朝、目覚めたら、思わず声をあげてしまった。綺麗に晴れているし、風の音も聞こえない。


 窓の外の穏やかな風景を眺めながら、ほっとする。一応、懐中電灯なども用意したが、何もなかったらしい。まだ休日は続いているし、何かほっとしたついでに美味しいものも食べたい。例えばちょっといい肉を煮込んでビーフシチューとか。


「え、嘘。けっこう被害が出てるの……?」


 しかしそんな気分、SNSやネットニュースを見ていたら、吹き飛んでしまった。冠水している地域もあるし、土砂崩れの被害も大きかったらしい。


 一気にビーフシチュー気分が抜けてしまった。朝食も軽くご飯と味噌汁だけ。


「自然には逆らえないなぁ……」


 一応勉強は努力したし、一人暮らしも維持できていえうが、それは単なる運がよかっただけかも。そんな事をぐるぐる考えていると、ちょっと落ち込む。気づくと、昼になっていた。


「でもお腹は空くね……」


 ビーフシチュー気分は抜けてしまったけれど、何を食べよう。ホッとして、あんまり豪華でもないもの。でも、ちょっと美味しいもの。


 とりあえずスーパーへ向かう。いつも通り、混んでいた。台風があったことなんて嘘みたいに平和。適当にカット野菜やプチトマトもカゴに入れていく。


「何食べよっかなぁ」


 そんな迷いの中、レトルトコーナーへ行く。いつも買ってる安いレトルトカレーも買おうとしたが、少し横を見るとお高いラインもある。本格バターチキンカレーで、名店の味を再現しているという。お値段はいつものレトルトカレーの倍の価格だ。


 手が迷う。どっちにしよう。台風も過ぎてほっとした。でも、被害もある中、そんな美味しいものを楽しむのも……。いや、でも最初はビーフシチューを計画していたんだから、バターチキンカレーのレトルトも可愛いもんじゃないか。


 決意した。今日の昼はバターチキンカレー。レトルトのちょっといいやつ。もう決めた!


 ということで、家に帰ると、お湯を温めてレトルトカレーを温める。その間、ご飯もレンチンして皿に盛り付ける。皿の左側だけにご飯。右側の余白が焦ったい、この時間。


「あっつ!」


 レトルトのパックの端を持ちながら、右側の余白に注いでいく。ふわっと湯気とともにスパイスとバターのいい匂い。やっぱりお高いだけある。香りからして全然、違う。


「いただきます」


 手を合わせ、スプーンを握る。まずは一口。この一口が最高で。


 無言で食べ続けた。穏やかな休日の昼。きっとそれは当たり前じゃない。それも一緒に噛み締めていると、余計に美味しい。


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