第1話 台風の夜のコロッケ
せっかくの休日だったのに。台風が来るらしい。
「頭、痛い……」
おかげで頭痛もするし、少しだるい。雨音を聞きながら、休日が潰されていく感覚しかない。
「なんで連休中に台風……。といってもYouTubeとNetflix三昧の予定だったけど……」
アラサー女の一人暮らしの休日なんてそんなもんだ。台風が来なくても家に引きこもっていたかもしれない。
それにしても台風がきたら、スーパーにも行けない。まだ雨が強くないうちに行っておくか。それに停電に備えてもいいか。
スーパーは案の定、混んでいた。子ども連れも多い。台風なのに子どもは元気だ。雨音に負けないぐらいキャッキャと声が響く。
さっそく防災コーナーへ。電池や水は家にあるから、水だけで作れるご飯や缶詰もカゴへ。あ、家に懐中電灯はなかった。一応、買っておくか。
「あとなんだっけ?」
カップラーメンや冷凍おにぎりもカゴに入れたし、こういう時こそ精神安定剤としてちょっと良いコーヒーもカゴにある。
「あ、コロッケか」
惣菜コーナーへ向かうと、コロッケが一番目立つところに売られていた。ライトに照らされ、サクサクな衣は黄金色。油の匂い。ちょっと鼻につくが、今日はなんだか許せてしまう。
さっそくパックに詰め、輪ゴムで閉じるとレジに向かう。コロッケは揚げたてだったらしい。パック越しにも熱が伝わってくる。
家に帰ったら、さっそくコロッケを食べよう。一応お皿に盛り付け、千切りキャベツも添えちゃう。いつもはパックでそのまま食べていた。一人暮らしらしいズボラだが、今日は一応、休日だし。
「いただきます」
薄暗い部屋で雨音を聞きながら手を合わせる。コロッケにソースをかけると、もう我慢はできない。
サクッと一口。まだ温かいコロッケ。うん、雨音は強くなってきたけれど、この家の中は安全だ。
「うん、いいじゃん。台風コロッケ」
ご飯もすすみ、あっという間に完食してしまった。あとは台風がそれることを祈るだけだ。停電も冠水も何もありませんように。
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ご飯日常ものライト文芸です。1話完結っぽくゆるく進むストーリーです。刺激を限りなく抜いた日常ものですので、寝る前に向いてると思います。全80話ぐらいの予定です。よろしくお願いします。




