第12話 何も変わらないサンマの蒲焼き缶
お局から、また疲れることを言われた。
「この防災食の処理、飯田さんがやってくれない?」
会社の備品室、なぜか防災食があった。元々は別の場所にあったそうだが、めぐりめぐって総務課に来たというが。
「全部賞味期限切れてません? 全部一ヶ月ぐらいですけど」
「だからみんな食べたがらないのよねぇ。どうしよう、コレ。まあ、飯田さんは派遣社員だし、持ち帰って食べたらいいんじゃないの?」
「え?」
「最近、物価高だし。じゃ!」
体良く、仕事を押し付けられた。しかもなんかバカにされているみたいで楽しくない。
段ボール一箱分、缶詰やアルファ米がある。賞味期限は一ヶ月切れてる。確かにこれが活躍する機会なんてなかったわけだが。
仕方ない。適当にビニール袋につめ、他部署に配り歩く。営業部とかは案外もらってくれるが、他は全滅だ。やはり賞味期限切れというのがネックみたい。一ヶ月ぐらいなら自己責任で食べられないこともないらしいが。
結局、サンマの蒲焼き缶がひとケースも余ってしまった。上司には持って帰れと言われ、案の定、お局は知らんぷり。
「くそぉ。お局のやつ、ろくな仕事持ってこないな」
エコバッグに缶詰を入れ、どうにか家まで持ち帰った。重かった。肩が凝る。
「しかし、こんな缶詰どうしよう。確かに食べられないことは無さそうだけど……」
そのままご飯に乗せて食べるのも味気ない。
「卵でとじるか。あぁ、そうしよ」
凝った肩をさすりながら、フライパンを用意。いいや、もう今日は全部適当だ。
卵も適当に混ぜ、サンマの蒲焼き缶の中見を熱したフライパンへ。半熟ぐらいになってきたら火をとめ、レンチンしたパックご飯に乗せた。あとはカットサラダと納豆。適当すぎる夕飯だ。でも、お局に理不尽な処理を押し付けられたわけだし。これも業務の一環?
「いただきます」
最初はお局の顔を思い出し、イライラしたが、ふわふわの卵と甘辛いサンマの蒲焼きを食べていたら、どうでも良くなってきた。
賞味期限切れてる。ちょっとスリル。でも味h全く問題ない。卵の黄色とサンマの蒲焼きの黄色って目に鮮やかだ。パックご飯というズボラの極みなのに、安っぽい感じはしないものだ。
「このサンマの蒲焼き缶、まだ十個ぐらいあるんだよな……」
それを思い出すと、また肩が凝ってきたが、それはそれで悪くない。本当は防災食だった。でも、本来の意味で活躍しなかった。だったら、それだけで百点だ。
ずっと変わらず、こんな風にサンマの蒲焼き缶を食べたいものだ。停電中の会社で食べている様子、想像もしたくない。
「災害中にお局の顔見るとかって地獄……」
そう思うと、こうしてサンマの蒲焼き缶を食べるのって最高かもしれない。




