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ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生)2 ~サディスト魔女×冷徹な堕天使!相反する二人が狂気の世界を切り裂く!~  作者: たくみふじ
第四章 聖域への侵蝕(デウス・エクス・マキナ)

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月読の導き㈡

「混沌」の魔女と「秩序」の堕天使。最悪で最強な二人の狂気の共闘劇!

「あんたら、私たちがあの富士の地下要塞で起こしたバグ……あの制御不能な暴走を、知っとう言うんか?」


『……我々は、この宇宙の(ことわり)の内に縛られた存在。故に、理の外側から来た『神託』のシステムを直接破壊することはできぬ。……だが、貴女方は違う。貴女方の魂は、すでにその『理』の境界線を踏み越え、融合しかかっている。……来られよ、二つの星よ。我が姉が、全ての真実を語るであろう』


 月読命はそう告げると、静かに身を翻し、森のさらに奥深くへと歩き出した。

 平伏していた神使たちが、モーセの十戒のように左右に道を空け、二人の少女を奥へと促す。


「……罠、かもしれませんわよ?」


 孝子が、千枚通しを弄りながら凉子に囁く。


「……百も承知や。でも、あの黒椿のバグの根源にアクセスするためには、あの神様についていくのが、現状での最も効率的な論理的最適解やわ。……行くで、地獄のネズミさん。私の背中から遅れんように、しっかりついてきなさいな」


 凉子は、ショック棒をベルトに収め、迷うことなく月読命の歩いた青白い光の道へと足を踏み入れた。


「あらあら、誰があなたの後ろなんか歩くもんですか」


 孝子もまた、不敵な笑みを浮かべ、凉子と肩を並べるようにして歩き出した。


 深い森を抜け、二人が導かれた先は、内宮の中でも最も神聖とされる、一般の神職すら立ち入ることのできない『正宮(しょうぐう)』の、さらに地下に隠された、信じられないほどに広大な空間であった。

 そこは、物理的な岩肌や土壁ではなく、(まばゆ)いほどの純白の光そのもので構築された、果てしなく続く神殿であった。

 その空間の中央。

 宙に浮かぶ巨大な光の玉座に、一柱の女神が静かに座していた。

 背後に、太陽そのものを思わせる強烈な光輪を背負い、その姿は直視することすらためらわれるほどの、絶対的な慈愛と、そして全てを平伏させる圧倒的な威厳に満ちている。

 天照大御神。


「……よく参られました、二つの、迷い子よ」


 その声は、宇宙の始まりの響きのように穏やかで、しかし二人の少女の魂の根源を直接揺さぶるような、途方もない重力を持っていた。

 孝子も、凉子も、どれだけ強靭なエゴを持っていようとも、その圧倒的な神威の前に、自らの意志とは無関係に、自然と膝を折り、頭を垂れていた。それは恐怖ではない。生命体としての、根源的な「格」の違いを悟らされたが故の、本能的な平伏であった。


「……お顔を上げなさい。貴女方が、我らが愚かなる弟・スサノオの残滓(ざんし)たる『神託』に弄ばれ、互いに傷つけ合わされようとしていること……。そして、愛する家族を人質に取られ、この地にまで踏み込んできたこと、全て、視ておりました」


 天照の言葉に、二人は顔を上げた。


「……視ておられたのなら、なぜ、もっと早くあの詐欺師どもを排除なさらなかったの?」


 孝子が、震える声で、しかし気高いプライドを振り絞って問う。


「……ダボが。あんたほどのシステムの管理者がおったら、あんなバグ、一瞬でデリートできたはずやんか。なんで、私たちみたいなイレギュラーを呼び込んだりしたん?」


 凉子もまた、怒りを込めて問い詰める。


「……我々古き神々は、この宇宙の『法則(システム)』を維持するためのプログラムに過ぎません」


 天照の太陽のような瞳が、深い憂いと悲しみに沈んだ。


「『神託』は、この宇宙の法則の外側……『混沌の海』から、我が弟の(のこ)した因果の(ほころ)びを突いて侵入してきた、未知のウイルスです。彼らは、我々の法則そのものを書き換え、この世界を彼らの都合の良い『新しい遊戯盤』へと造り変えようとしている。我々の力は、この法則の内側でしか行使できない。故に、彼らの本拠地である『虚無の庭園』に干渉することは、不可能なのです」


 天照は、ふわりと玉座から立ち上がると、二人の前に、一枚の神々しい鏡を空中に投影させた。

 三種の神器の一つ、八咫鏡(やたのかがみ)


「ごらんなさい。貴女方が倒すべき、あの黒椿が逃げ込んだ先……我らの足元に巣くう、世界の終わりの光景を」


 鏡面に映し出されたのは、美しい庭園などではなかった。

 それは、灰色の砂と、ねじれ曲がった黒い枯れ木だけが無限に広がる、完全に色が失われた死の世界。

 そして、その中心にある、巨大な黒椿の枯れ木の根元には、この宇宙の空間そのものがおぞましく引き裂かれた、巨大で深い「亀裂」が口を開けていたのである。

 その亀裂の奥から、ドロドロとした、名伏しがたい黒い不定形のエネルギーの塊が、まるで(うみ)のように、次々とこの世界に向かって漏れ出してきているのが見えた。

 あれこそが、『神託』。この宇宙を外側から侵食し、新たな神を創り出そうとしている、絶対的な悪意の根源。


「あれが……『神託』の正体……!」


 孝子が、息を呑む。


「……論理が崩壊しとる。あんなもん、宇宙の法則を根底からバグらせる、ただのウィルスやんか……!」


 凉子の顔から、血の気が引く。


「……貴女方にしか、できないことがあるのです」


 天照の瞳が、二人の少女を真っ直ぐに射抜いた。


「『神託』は、混沌と秩序、その両方の力を併せ持つ。故に、地獄の極限の混沌の力を持つ孝子よ、貴女の『炎』でしか、あのウィルスの存在を灼き尽くすことはできず。天の極限の秩序の力を持つ凉子よ、貴女の『雷』でしか、あの空間の亀裂を論理的に縫い合わせ、封じることはできない」


「「……!」」


「貴女方が、あの富士の地下要塞で見せた、あの『融合』の力。あれは、『神託』の計算通りであったかもしれない。しかし同時に、彼らの想定を遥かに超えた、唯一の『対抗手段(カウンター)』でもあるのです。……憎しみではなく、『守る』という意志の下で、混沌と秩序が完全に一つになる時……それは、外なる神々をも打ち破る、新たなる『創造』の力となり得る」


 天照は、静かに、二人の少女の前に、究極の選択を突きつけた。


「このまま、互いを憎み合い、『神託』の実験の駒として、この世界と共に無意味に滅びるか。……それとも、一時、その憎しみを脇に置き、互いの力を認め合い、この世界を、そして……貴女方自身の大切な『家族』と『日常』を守るために、共にあの亀裂の先へと飛び込むか」


 圧倒的な神の問いかけ。

 それは、二人の少女の魂の最も深く、(もろ)い部分を容赦なく(えぐ)り出していた。

 互いの顔を見つめ合う、東の魔女と西の堕天使。

 彼女たちの瞳には、もはや単純な殺意だけではない、複雑で、そして覚悟を決めた、狂気的なまでの光が宿り始めていた。

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

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