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ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生)2 ~サディスト魔女×冷徹な堕天使!相反する二人が狂気の世界を切り裂く!~  作者: たくみふじ
第四章 聖域への侵蝕(デウス・エクス・マキナ)

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禁足地への道㈢

「混沌」の魔女と「秩序」の堕天使。最悪で最強な二人の狂気の共闘劇!

 孝子と凉子は、川を挟んで互いの姿を視認したが、一切の言葉は交わさない。ただ、相手が準備を完了したことを、その研ぎ澄まされた殺気と霊力だけで確認し合った。


「……ガーディ。始めなさいあそばせ」


 孝子の短く冷たい命令が下る。


「ハッ。ご自慢の神域を、地獄の汚泥で染め上げてご覧に入れやすぜ」


 ガーディが、長く細い両腕を、五十鈴川の清流に向かって突き出した。


『――来れ、黄泉の底を這いずる亡者どもよ。汝らの怨念と苦痛の記憶を、今、この清浄なる水面にぶち撒けろッ!』

 ガーディの指先から、コールタールのようにドロドロとした、漆黒の地獄の瘴気が滝のように噴き出した。それは、数万年分の罪人たちの絶望と腐敗の臭いを伴い、神聖な五十鈴川の川面へと容赦なく注ぎ込まれた。


 ジュウウウウウゥゥゥッ!!


 清流が黒い瘴気に触れた瞬間、川の水がまるで熱した鉄板に落とされたかのように激しく沸騰し、おぞましい赤い蒸気が立ち上った。

 その直後である。

 内宮を覆っていた不可視の絶対防御結界が、侵入してきた規格外の「穢れ」に対して、システム防衛の最大アラートを発した。


 ゴゴゴゴゴゴォォォッ!!


 空間が激しく震動し、五十鈴川の水脈と結界が交差する「排水口」のポイントから、目も眩むような白銀の閃光――『神罰の奔流』が、ガーディの瘴気を押し返そうと、凄まじい勢いで逆流してきたのである。

 それは、触れれば魂ごと消滅させられる、純粋な浄化のエネルギーの塊であった。


「フフフ……素晴らしい! これほどまでに巨大な力の奔流、わたくしの芸術の極上の舞台装置ですわ!」


 孝子は、自らの身体から赤い地獄の業火のオーラを最大まで噴出させ、ガーディの放つ黒い瘴気と完全に同化させた。


「では、お先に行かせていただきますわ。……せいぜい、遅れないでちょうだいね、堕天使様!」


 孝子は、狂気に満ちた高笑いを上げながら、一切の躊躇なく、その猛烈な勢いで逆流する『神罰の奔流』の中心へと、自らの身を弾丸のようにダイブさせた。

 彼女の身体は、地獄の穢れという強固なカプセルに包まれ、結界の防衛システムを欺きながら、濁流を遡る黒い魚のように、結界の「穴」の奥深くへと吸い込まれていった。

 対岸でその狂気的なダイブを静かに見つめていた凉子は、伊達眼鏡のディスプレイに表示される、結界のエネルギー残量の数値を、瞬き一つせずに冷徹に追い続けていた。


『――凉子様! 孝子様の瘴気と神罰の奔流が激突し、結界のエネルギーが急速に消費されています! 5、4、3……』


 亨のカウントダウンが響く。


「……分かっとうよ。私の計算通りや」


 凉子は、ショック棒を握りしめ、全身の筋肉をバネのように収縮させた。


『2、1……今です! 結界の自己修復機能が再起動するまでの、コンマ八秒のラグ! 『浄化の凪』が発生しました!』


「――消去デリート開始」


 凉子の身体が、青白い雷光そのものへと変貌した。

 彼女は、空間の物理法則を演算で完全に書き換え、音速を超える初速で床を蹴った。

 彼女の純白の姿は、神罰の奔流が通り過ぎて一瞬だけ真空状態となった結界の「穴」を、文字通り一筋の「青い稲妻」となって、一切の穢れに触れることなく、完璧なまでに清浄な状態のまま、寸分の狂いもなくすり抜けたのである。


 ドサッ、という極めて軽い着地音。

 ほぼ同時に、伊勢神宮・内宮の、決して人間が立ち入ることを許されない禁足地の深い森の中へ、二人の少女は降り立った。

 外界の雨音も、五十鈴川のせせらぎも、ここでは一切聞こえない。

 そこは、数千年という途方もない時間をかけて蓄積された、重く、そして息を呑むほどに純粋な「神気」だけが充満する、絶対的な聖域であった。

 地獄の瘴気を纏う孝子にとっては、その空間にいるだけで肌がジリジリと焼かれるような息苦しさを覚え、天の秩序を愛する凉子にとっては、かつて知っていた天界の空気とはまた異なる、どこか泥臭くも圧倒的な「古き神々」の重圧に、美しい顔を険しくさせざるを得なかった。


「……なんという、不愉快で、そして吐き気がするほど神聖な場所かしら」


 孝子が、電光剣のグリップを握り直し、周囲の深い闇を漆黒の瞳で睨みつけた。


「……ダボが。油断せえへんことやね。ここには、私たちの論理を大きく狂わせる、とてつもないバグが潜んどる匂いがプンプンするわ」


 凉子もまた、ショック棒を構え、伊達眼鏡のセンサーを最大出力に切り替えた。

 二人の少女殺し屋は、日本の神々の心臓部という、最も場違いで危険な領域へと、ついにその足を踏み入れたのである。

 そして、彼女たちの侵入を待ち受けていたかのように、神域の深い森の奥から、無数の「目」が、静かに、そして冷酷に開かれようとしていた。

 宇宙の外側から来た侵略者『神託』の待つ、真の狂気の舞台への扉が、今、開かれたのであった。

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

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