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ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生)2 ~サディスト魔女×冷徹な堕天使!相反する二人が狂気の世界を切り裂く!~  作者: たくみふじ
第四章 聖域への侵蝕(デウス・エクス・マキナ)

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神々の憂鬱(ゆううつ)㈡

「混沌」の魔女と「秩序」の堕天使。最悪で最強な二人の狂気の共闘劇!

「本能寺で、貴女とあの『赤い閃光』の同時攻撃が、黒椿の絶対防御シールドを粉砕したあの一瞬。……黒椿のシステムに生じた致命的なエラーの隙間から、私は奴の通信プロトコルに逆ハッキングを仕掛け、奴が帰還した『本拠地』の空間座標を、極めて正確な数値データとしてぶっこ抜くことに成功しました」


「……ほう? 流石はわたくしの『翼』やね。で、その美しくないバグの根源は、どこのゴミ溜めに隠れとんの?」


 凉子が、伊達眼鏡の中指でクイッと押し上げ、モニターのデータに鋭い視線を送る。


「……にわかには信じ難い座標です。私の持つ、天界の天使養成校の禁忌データベースと照合した結果……そこは、日本の神道の頂点、伊勢神宮・内宮の最深部に封印されているとされる、次元の特異点。……古き神々が『始まりの庭』と呼んだ、宇宙の法則が適用されない虚無の領域です」


「伊勢神宮、やて?」


 凉子の美しい眉が、ピクリと動いた。


天照(あまてらす)の膝元……。この日本における『秩序』の最も強力な発信源の直下に、あんな宇宙の法則を書き換えるような巨大なエラーコードが巣食っとう言うのんか。……なんちゅう皮肉。なんちゅう、ザルなセキュリティやの」


 凉子は、心底呆れたように、そして軽蔑するように冷たい溜め息を吐き出した。


「古き神々とやらも、所詮はその程度の不完全なシステムに過ぎへんということやね。自らの足元で増殖するウイルスにも気づかへん、無能な管理者。……ええわ。神が処理できへんのなら、わたくしが自ら出向いて、その『始まりの庭』ごと、塵一つ残さず完全にフォーマット(浄化)したる。この宇宙に、わたくしの論理を脅かすバグの存在は、一ミリたりとも許さへん」


 その日の深夜。

 横浜の北條家と、神戸の高清水家の間に、極めて異常で、そしてこの世界で最も強固なセキュリティに守られた「通信回線」が開かれた。

 詫間亨が構築した、量子暗号化技術を用いた絶対傍受不可能な電子ネットワーク。そして、その電子の網の周囲を、ガーディが地獄の瘴気で何重にもコーティングし、いかなる神や高次元の『観測者』であろうとも、物理的・霊的に絶対に覗き見ることができない完全な「密室」を作り上げたのである。

 横浜の自室のアンティークなモニターの前に座る孝子。

 神戸の地下ラボのクリスタルテーブルの前に座る凉子。

 二人の少女の顔が、画面越しに映し出された。


『……あら。お行儀の悪い、無機質なお人形さん。まだスクラップにならずに、無様に稼働していらっしゃったのね』


 画面越しの凉子を一瞥し、孝子が扇子で口元を隠しながら、相変わらずの毒々しいお嬢様言葉で先制の挨拶を放つ。


『……ダボが。あんたの下品で野蛮な炎の匂いが、画面越しにここまで漂ってきて、私のラボの空気が汚れそうやわ。さっさと本題に入りなさいな、地獄のネズミさん』


 凉子もまた、一切の感情を排した氷のような表情で、容赦のない言葉を叩き返す。

 本能寺での「共闘」は、あくまで互いのサポート役を救出し、共通の敵を退けるための、コンマ一秒の利害の一致に過ぎない。二人の間にある、互いの「美学」への絶対的な嫌悪感と殺意は、一ミリたりとも軽減されてはいなかった。

 だが、今の彼女たちには、互いを殺し合うよりも先に、必ず完遂しなければならない共通の「タスク」があった。


『……お嬢様、凉子様。無駄な舌戦は時間の浪費にございやすぜ。……互いの出した結論は、同じはずだ』


 画面の端で、ガーディの影が低く唸る。


『ええ。私の解析データと、そちらの霊的探知の座標は、完全に一致しています。……目標は、三重県、伊勢神宮・内宮の地下深層。封印された特異点、『始まりの庭』』


 亨が、冷徹な研究者の声で事実を確認する。


『……本当に、笑止千万な話ですわ。神々の聖域のど真ん中に、あのような吐き気を催すバケモノが引きこもっているなんて』


 孝子が、千枚通しの先端を指の腹で弄りながら、残忍に微笑む。


『あんな出処の知れへん巨大なバグ、この宇宙の秩序に対する最大の侮辱やわ。天照とかいう無能な管理者の代わりに、わたくしが自ら管理者権限(ルート)を奪って、システムごと物理的にデリートする』


 凉子が、伊達眼鏡の奥で青い瞳を鋭く光らせる。


『……堕天使様。勘違いなさらないでくださいましね』


 孝子が、画面越しに凉子を真っ直ぐに見据えた。


『わたくしは、あのお高く止まった黒椿の顔を絶望で歪ませ、八つ裂きにするためだけに伊勢へ向かいますの。あなた様と手をつないで仲良くハイキングに行くつもりなど、毛頭ありませんわ。……わたくしの前を歩くなら、その背中に『針』を突き立てますわよ』


『……それはこちらの台詞やわ、地獄のネズミさん』


 凉子もまた、絶対零度の声で応じる。


『伊勢の聖域に向かうのは、あくまで私の論理的判断。あんたの野蛮な炎が私の視界に入ったら、その場で即座に雷で浄化デリートしたるわ。……せいぜい、私の邪魔にならんように、影の中を這いずり回っときなさいな』


 通信は、互いへの強烈な殺意と宣戦布告を残したまま、プツリと無機質に切断された。

 だが、二人の少女の意思は、完全に同じベクトルを向いていた。

 標的は、『神託(オラクル)』。

 戦場は、日本で最も神聖なる領域、伊勢神宮。

 一切の馴れ合いも、協力もない。ただ、「誰よりも先に、あの忌ま忌ましい敵を自らの美学で粉砕する」という、強烈すぎるエゴと傲慢さだけが、二人の少女を同じ死地へと駆り立てていた。


 数時間後の、未明。

 横浜の北條家では、孝子が巨大なクローゼットから、最も深く、最も漆黒の闇色をしたゴシック調の重厚なドレスコートを取り出し、無言で袖を通していた。


「……お嬢様。伊勢の神域は、我々地獄の眷属にとっては、足を踏み入れるだけで魂が焼かれるほどの、猛烈な『浄化』の力に満ちた絶対禁忌の場所ですぜ。……お覚悟は?」


 影の中から問いかけるガーディに対し、孝子はアタッシェケースに電光剣を収め、スカートのガーターに無数の予備の千枚通しを仕込みながら、妖艶に、そして狂気的に微笑み返した。


「覚悟? そんなもの、地獄の底に置いてきましたわ。わたくしにあるのは、わたくしの芸術を愚弄(ぐろう)した者への、究極の『懲らしめ』の欲求だけ。神の領域だろうが何だろうが、わたくしの『苦痛』の美学の前に、ひれ伏させてご覧に入れますわ」


 一方、神戸の地下ラボラトリー。

 凉子は、亨が徹夜で修復し、さらに神域の霊的干渉を物理的に弾き返すための特殊なコーティングを施した、真新しい純白の特殊戦闘スーツに身を包んでいた。


「……凉子様。私の命に代えても、貴女の『論理』のバックアップは最後までやり遂げます。ですが、相手は宇宙の法則の外側から来た存在。……どうか、ご無事で」


 包帯姿の亨が、深く頭を下げる。


「……大げさやわ、亨さん。私の演算に、敗北というエラーコードは存在せえへん。……伊勢の神々も、あの『神託』のバグも、全てまとめてわたくしの雷でフォーマットして、完璧な秩序(コスモス)を取り戻してくるわ」


 凉子は、銀縁の伊達眼鏡をかけ直し、ベルトにショック棒と電流鞭を完璧な配置でマウントした。

 東の魔女と、西の堕天使。

 交わることのない二つの凶刃が、偽りの鎮魂歌の最終楽章を奏でるため、日本の中心、神々の憂鬱が眠る伊勢の聖域へと向け、静かに、そして絶対的な殺意を纏って、その歩みを進めようとしていた。

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

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