表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生)2 ~サディスト魔女×冷徹な堕天使!相反する二人が狂気の世界を切り裂く!~  作者: たくみふじ
第三章 黒椿の契約

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
38/67

反逆の狼煙(のろし)㈡

「混沌」の魔女と「秩序」の堕天使。最悪で最強な二人の狂気の共闘劇!

 炎と雷が激しく交差し、雨粒がジュウッと音を立てて蒸発するその一瞬。

 孝子と凉子の視線が、火花を散らす至近距離で、パチリと合った。

 互いへの憎悪は、消えていない。

 殺意も、嫌悪感も、細胞の隅々まで染み渡るほどに強烈に残っている。

 だが、その漆黒の瞳と、氷のような青い瞳の奥に、全く同じ「傲慢なまでのプライドの高さ」と、「第三者に支配されることへの絶対的な拒絶」の光が宿っているのを、二人は同時に読み取った。

 言葉は、必要なかった。

 通信機を通したやり取りも、事前の打ち合わせも、一切存在しない。

 ただ、この宇宙で最も相容れない不協和音を奏でる二つの魂が、目前の「さらに巨大で美しくない敵」を排除するという一点においてのみ、奇跡的で致命的な、コンマ一秒の「同期(シンクロ)」を果たしたのである。


(……一時的に、あんたのその野蛮な力を、私の論理の踏み台にしたるわ!)


(……ほんの数秒だけ、あなた様のその冷たい光を、わたくしの芸術の導火線に利用してさしあげますわ!)


「「消えなさいッ!!」」


 二人の少女の絶叫が重なった。

 孝子が、電光剣の赤い刃を、涼子の心臓ではなく、彼女の足元の濡れた石畳へと向けてフルパワーで振り下ろした。

 凉子もまた、ショック棒から放たれる雷光の軌道を、孝子の首筋ではなく、孝子が熱した石畳の真上、雨水が溜まった水たまりへと向けて一気に解放した。


 ドバァァァァァァッ!!


 極限まで圧縮された地獄の熱量と、数万ボルトの電流が、足元の大量の雨水と石畳の上で交わった瞬間、凄まじい規模の水蒸気爆発が引き起こされた。

 白く分厚い高温のスモークが、本能寺跡の空間を一瞬にして覆い尽くす。


「……あら? 相打ち、かしら?」


 二十階建てのビルの屋上から見下ろしていた黒椿は、突然視界を遮られた白い爆煙を見て、つまらなそうに首を傾げた。


「これほど早く決着がつくとは。少々、期待外れでしたわね。やはり、人間の器に収まった力など、その程度の……」


 黒椿が、落胆の溜め息を吐き出そうとした、まさにその時であった。


 ドシュゥゥゥッ!!


 分厚い水蒸気の煙を、下から上へと、真っ直ぐに突き破って急上昇してくる「青い光」があった。


「なっ……!?」


 黒椿の無機質な瞳が、驚愕に見開かれる。

 それは、高清水凉子であった。

 彼女は、水蒸気爆発が起こる直前、自らの足元で発生した凄まじい爆風と上昇気流を、完璧な物理演算によって自らの推進力へと変換していた。さらに、彼女の純白のブーツの下には、孝子が電光剣の炎を瞬時に硬化させて作り出した、真っ赤な「地獄の足場」が、空中の階段のように空へ向かって点々と作り出されていたのだ。

 天の論理が推進力を計算し、地獄の混沌が物理法則を無視した足場を創り出す。

 凉子は、孝子の作った炎の階段を、全く躊躇(ためら)うことなく全力で蹴り上げ、重力を完全に置き去りにして、二十階建てのビルの屋上へと、まるで雷光そのもののように一直線に肉薄してきたのである。


「ダボがッ!! 特等席でふんぞり返って、人の日常を泥靴で踏みにじった罪……! わたくしの論理で、今すぐここで完全に清算したるわッ!!」


 凉子の怒りに満ちた絶叫が、夜空に轟く。

 彼女の右手に握られたショック棒は、すでに最大出力の電流鞭(ライトニング・ウィップ)へと形態を変化させていた。青白いプラズマの大蛇が、雨雲を切り裂くようにうなりを上げ、屋上に立つ黒椿の首を狙って、凄まじい速度で放たれる。


「……愚かな。そのような物理的な攻撃が、高次元から『観測』しているこのわたくしに届くとでも?」


 黒椿は、微動だにせず、ただ冷たく微笑んだ。彼女の周囲の空間が、ゆらりと不気味に歪む。

 彼女の持つ『観測者』としての能力。それは、迫り来る事象の座標と因果律を瞬時に書き換え、相手の攻撃を「最初から存在しなかったこと」として次元の裏側へとそらす、絶対的な防御シールドであった。

 凉子の放った電流鞭の青い軌道が、黒椿の顔の数センチ手前で、まるで目に見えないガラスの壁にぶつかったかのように、不自然な角度でヌルリと()れようとした。


「……無駄な足掻きですわ。大人しく、絶望の淵へ沈み――」


 黒椿が勝利を確信した、その瞬間。


 シュゥゥゥゥッ!!


 逸れようとしていた青い電流鞭の光の軌道の「内側」から、もう一つの、毒々しいまでに真っ赤な光が、弾丸のような速度で射出されてきたのである。


「なっ……!?」


 黒椿の顔から、ついに余裕の笑みが完全に()がれ落ちた。

 それは、地獄の鉱石で作られた、北條孝子の『千枚通し』であった。

 孝子は、地上で水蒸気爆発を起こした直後、遠隔でガーディの影の力を自身の右腕に極限まで集中させ、遥か頭上のビルの屋上へ向けて、自らの最強の武器を全力で投擲(とうてき)していたのだ。

 ただの投擲ではない。孝子は、凉子が放つであろう電流鞭の青い軌道を事前に予測し、その雷の磁場の中に、自らの千枚通しを滑り込ませた。

 本来ならば弾き合うはずの、天の雷と地獄の鉱石。だが、孝子は千枚通しに(まと)わせた地獄の炎の波長を、コンマミリ秒単位で凉子の雷の波長と同調させるという、狂気的なまでの感覚と執念で、青い雷の軌道を「レール」として利用したのである。


「わたくしの極上の『針』……! その喉に風穴を開けて、とくと味わいなさいあそばせッ!!」


 地上からの孝子の狂気に満ちた声が、雨の夜空に響き渡る。

 青い雷の推進力を得て、超音速のレールガンと化した赤い千枚通し。

 天の秩序(雷)が持つ「直線的な突破力」と、地獄の混沌(炎)が持つ「空間を焼き切る呪詛」。その二つが完全に融合した一撃は、黒椿が展開していた「事象をそらす絶対防御のシールド」を、論理的なエラーと非論理的なバグの同時攻撃によって、まるで薄い障子紙のように容易く、そして無残に粉砕した。


「ガッ……ァァァッ!?」

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ