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ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生)2 ~サディスト魔女×冷徹な堕天使!相反する二人が狂気の世界を切り裂く!~  作者: たくみふじ
第三章 黒椿の契約

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反逆の狼煙(のろし)㈠

「混沌」の魔女と「秩序」の堕天使。最悪で最強な二人の狂気の共闘劇!

 凍てつくような氷雨が、古都の夜の闇を無慈悲に叩きつけていた。

 京都・中京区、本能寺跡。かつて古い秩序が炎の中で崩壊し、新たな歴史の混沌が産声を上げたこの血塗られた因果の地で、今、二人の少女が互いの命と「愛する家族」の命を天秤にかけた、逃げ場のない究極の殺し合いのステップを踏み出そうとしていた。

 制限時間は、わずか十分。

 上空の近代的なオフィスビルの屋上からは、この狂気のゲームを仕組んだ『神託(オラクル)』の代行者・黒椿(くろつばき)が、感情の欠落した作り物めいた微笑みを浮かべて見下ろしている。そしてビルの壁面に投影された巨大なホログラム映像の中では、孝子のサポート役である元・地獄の番人ガーディと、凉子のただ一人の理解者である天才発明家・詫間亨が、今この瞬間も想像を絶する拷問の苦痛に身悶えし、絶叫を上げていた。


『さあ、始めなさい。生き残ったただ一人の家族だけを、特別に助け出して差し上げましょう』


 黒椿の残酷な宣告が、雨音に混じって本能寺跡の冷たい空気をビリビリと震わせる。


「はぁぁぁぁぁぁッ!!」


「ダァァァァァァッ!!」


 二人の少女は、同時に濡れた石畳を蹴り飛ばした。

 北條孝子の右手から(ほとばし)る電光剣の真っ赤な業火が、雨粒を一瞬で蒸発させながら、空気を切り裂いて迫る。

 高清水凉子の右手に握られたショック棒から放たれる数万ボルトの青白い雷光が、プラズマの尾を引いて夜の闇を鋭く貫く。


 ガガガガガァァァァンッ!!


 赤い地獄の炎と、青い天の雷が、本能寺の記念碑の真上で真っ向から激突した。

 およそ人間が発揮できる物理法則を完全に凌駕した、凄まじいエネルギーの衝突。その余波だけで、周囲に植えられていた数十年の樹齢を誇る木々が根本からへし折れ、重厚な石のベンチがまるで飴細工のように粉々に砕け散る。

 熱風とオゾンの入り混じった致死的な嵐が吹き荒れる中、二人の少女は至近距離で刃を交え、火花を散らしながら互いの顔を凄まじい形相で睨みつけていた。


「どうしましたの、堕天使様! あなた様のご自慢の『論理』とやらは、その程度の出力しか出せませんの!? これでは、あの壁の中で泣き叫んでいる哀れなネズミ男を、救い出すことなど到底できませんわよ!」


 孝子は、燃え盛る電光剣を力任せに押し込みながら、漆黒の瞳に狂気的なサディズムの光を宿して嘲笑した。彼女の言葉は、凉子の心を容赦なく抉るための、鋭く毒を塗った針そのものであった。


「……お黙りなさいな、地獄のネズミ。あんたの下品で無駄だらけの炎なんか、わたくしの演算の前ではただの予測可能な物理現象に過ぎへんわ。……さっさとシステムを強制終了して、その汚らしい命をわたくしの踏み台にしなさい!」


 凉子もまた、氷のように冷たい青い瞳で孝子を射抜き、ショック棒から限界突破の電撃を放ちながら、神戸・播州の言葉を剥き出しにして吠えた。

 互いに、一切の手加減はない。相手の急所を的確に狙い、命を奪うための極限の連撃が、コンマ数秒の世界で繰り広げられていた。

 だが、その圧倒的な殺気と光の奔流の中で刃を交えながら、二人の少女の魂の最も深く、最も冷徹な深層心理の領域においては、全く別の、恐ろしく冷静な「計算」が、猛烈な速度で並列処理されていたのである。


(……ふざけないでちょうだい)


 孝子は、凉子の青い雷を千枚通しでいなしながら、内心で激しく舌打ちをしていた。


(わたくしは、地獄の底で無限の理不尽な苦痛に耐え抜き、誰にも支配されない絶対的な『個』の尊厳を勝ち取った存在。……だというのに、あの屋上から見下ろしている鼻持ちならない女の書いた、安っぽい三文芝居の脚本通りに、このわたくしが操り人形のように踊らされるですって? 愛する家族を守るために、必死になって殺し合いのデータを提供するですって? ……冗談ではありませんわ!)


 孝子にとって、自らの行動を他者に強制されることほど、我慢のならない屈辱はなかった。彼女が他者に苦痛を与えるのは、あくまで自分自身が「お稽古」を楽しみたいという、高慢で身勝手な愉悦(ゆえつ)のためである。他人に命令されて、あるいは脅迫されて行う殺戮(さつりく)など、彼女の芸術には値しない、ただの薄汚い作業でしかないのだ。


(わたくしが本当に絶望させ、そのすまし顔を恐怖と苦痛で醜く歪ませてやりたいのは、目の前のこの血の通わないお人形ではありませんわ。……わたくしの『日常』と『家族』を人質に取り、神の気取りでわたくしを見下ろしている、あの屋上の女……黒椿! あいつの心臓に千枚通しを突き立てない限り、わたくしの気高い魂の怒りは絶対に収まりませんのよ!)


 一方、激しい剣戟の中でステップを踏む凉子もまた、自らの脳内で展開される完璧な論理(ロジック)のシステムに、ある致命的なエラーコードを見出していた。


(……ごっつい、非論理的なゲームやわ)


 凉子は、伊達眼鏡のディスプレイに流れる戦闘データを無意識に処理しながら、冷酷に状況を俯瞰していた。


(相手を殺せば、亨さんが助かる? 相手に負ければ、全てを失う? ……ダボが。そんな二者択一、最初から破綻しとうやんか。私が勝とうが負けようが、私とこのネズミ女が本気で殺し合った『限界突破のデータ』は、全てあの『神託』のシステムに吸収され、奴らの利益になるだけや。……この盤上でどちらかのキングを取ったところで、盤そのものを支配しとうプレイヤーには絶対に勝てへん。こんな構造的欠陥(バグ)を抱えたゲームに、まともに乗ってやる義理なんて一ミリもあらへんわ)


 天界の偽りの秩序を捨て、真の完全なる論理を求めて地上に堕ちた凉子にとって、この不完全で悪意に満ちた実験場は、直ちに粉砕すべき「美しくない」エラー空間であった。


(亨さんを確実に救い出し、私の完璧な秩序を取り戻すための最適解。それは、目の前のこの野蛮なバグをデリートすることやない。……このゲーム盤を外側から支配しとう、あの屋上のメインサーバー……黒椿を、物理的に、そして完全に破壊することや!)

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

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