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ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生)2 ~サディスト魔女×冷徹な堕天使!相反する二人が狂気の世界を切り裂く!~  作者: たくみふじ
第三章 黒椿の契約

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狂気の本能寺㈡

「混沌」の魔女と「秩序」の堕天使。最悪で最強な二人の狂気の共闘劇!

 黒椿が、長い袖から白く細い手を出して、パチン、と乾いた音を立てて指を鳴らした。

 その瞬間、二人の少女の足元、本能寺跡の冷たい石畳の上に、血のように赤く、そして吐き気を催すほどに禍々しい光を放つ、巨大な魔方陣のような幾何学模様が突如として浮かび上がったのである。


「「……っ!?」」


 二人は慌てて飛び退き、その不気味な光から距離を取った。


「あなた様方の『ゲーム』、一週間にわたって、とても楽しく拝見させていただきましたわ」


 黒椿が、冷たく、無慈悲に宣告する。


「ですが、誠に残念な結果です。お二人は、期限であるこの七日目の夜に至るまで、どちらも相手を『生け捕り』にすることができなかった。互いに殺意を募らせるばかりで、我々が提示したクリア条件を満たすための決定的な行動を起こさなかった。……よって、契約は『不履行』と判定されました」


「……なんですって?」


 孝子の声が、低く震えた。


「契約不履行。つまり、ペナルティの執行です。……あなた様方の大切な大切な『家族』には、予定通り、この宇宙から完全に消えていただきますわ」


 黒椿が再び指を鳴らすと、今度は二人の背後にある、巨大なオフィスビルの何もない真っ暗な壁面に、突如として二つの巨大なホログラム映像が、ノイズ混じりに投影されたのである。

 それを見た瞬間、孝子と凉子の心臓が、恐怖と絶望で鷲掴みにされたように凍りついた。

 右側の映像に映し出されていたのは、横浜の北條家の裏路地。

 深い闇の中、ガーディの長身痩躯が、見えない無数の霊的な鎖によって手足を限界まで引き伸ばされ、空中に(はりつけ)にされていた。


『グゥゥゥォォォォッ……!! お、お嬢様ァァァッ! 逃げて、くだせェェッ!』


 あの強大な地獄の番人が、影で構成された自らの肉体を内側からドロドロに溶かされ、千切られそうになりながら、身をよじって凄まじい苦悶の絶叫を上げていた。彼の顔を覆う影が剥がれかけ、その下から、想像を絶する苦痛に歪む真の素顔が露わになりかけている。

 左側の映像に映し出されていたのは、神戸の高清水家の地下ラボラトリー。

 絶対的な秩序であるはずのラボは、あちこちのサーバーから火花が吹き出し、完全に制御不能に陥っていた。その中央で、詫間亨が、ショートして天井から垂れ下がった無数の太い高圧ケーブルに全身を絡め取られ、数万ボルトの電流を直接肉体に流し込まれていた。


『ガァッ……! あァァッ……! 凉子、様……! 私のことは……構わず……っ!』


 執事のような完璧な所作を崩さなかった彼が、白目を剥き、口から泡を吹きながら全身を激しく痙攣させている。肉が焦げる凄惨な光景が、高画質の映像として、残酷なまでに鮮明に映し出されていた。


「ガーディ!! やめなさい! やめなさいあそばせッ!!」


 孝子は、電光剣を振り回しながら、ホログラムの映像に向かって悲痛な絶叫を上げた。彼女の気高いプライドも、お嬢様としての仮面も、完全に崩れ去っていた。


「亨さんッ!! ダボが、そのふざけたシステムを今すぐ止めんかいッ!! ぶっ殺したる!!」


 凉子は、ショック棒を握る手を血が滲むほどに強く握りしめ、ビルの屋上の黒椿に向かって、これまでにないほど声を荒らげて吠えた。


「フフフ……。ああ、なんて美しい絶望の表情。これほどのデータが取れれば、今回の実験は大成功と言えるでしょう」


 黒椿は、二人の少女の魂が崩壊していく様を、まるで極上のワインを味わうかのようにうっとりと眺め、両手を大きく広げた。


「さあ、お二人とも。絶望に沈む前に、特別に、最後に一度だけチャンスを差し上げますわ」


 黒椿の声が、本能寺跡の冷たい空気を一瞬にして凍らせた。


「今、この場で、制限時間十分以内に、互いに全力で殺し合いなさい」


「……ッ!」


「……な、んやて?」


「先ほどまでのように、ためらう必要はありません。相手を確実に、徹底的に、その命の灯火が完全に消えるまで、粉々に破壊し尽くすのです。……そして、生き残った『ただ一人』の方の家族だけを、特別に、その死の淵から助け出してさしあげましょう」


 黒椿は、まるで天使のような優しげな微笑みを浮かべながら、悪魔よりも残酷なルールを提示した。


「ただし、十分経ってもどちらも死ななかった場合、あるいは両方が死んだ場合は、あの二人のサポート役も、即座に完全に消去いたします。……さあ、どうなさいますか? あなた様方の誇り高き『美学』と、ただ一人の愛する家族の『命』。どちらが重いのか、その行動で証明してごらんなさいな」


『神託』の提示した、あまりにも残虐で、悪趣味な最終テスト。

 それは、二人の少女から全ての選択肢を奪い去る、完璧な「絶望の天秤」であった。

 目の前には、自分と同じように激しい怒りと絶望に顔を歪める、最大の宿敵。

 壁面の映像には、今この瞬間も命を削られ、凄まじい苦痛に喘いでいる、たった一人の大切な理解者。

 彼らを救う唯一の道は、目の前の少女を、一切の情けを容れずに殺し尽くすこと。

 相手を殺せば、自分の家族は助かる。

 相手に負ければ、自分も家族も死ぬ。

 戦わなければ、全員が死ぬ。


「……よろしいですわ。どのみち、この女はわたくしの手で、極上の苦痛を与えて壊さなければならないおもちゃでしたもの」


 先に動いたのは、孝子だった。

 彼女は、乱れた呼吸を無理やり整え、漆黒の瞳から一切の感情を消し去り、電光剣と千枚通しを、左右の手に深く握り直した。


「堕天使様。……どうやら、あなた様をここで完全に『お稽古』して解体することが、わたくしのガーディを守る唯一の道のようですわね。恨みっこなしでよろしくてよ」


 地獄の業火が、彼女の周囲でこれまで以上に激しく、そしてどす黒く燃え上がる。


「……上等やわ、地獄のネズミさん。あんたのその汚らしい命、私の論理で塵一つ残さずデリートして、亨さんを取り戻すための踏み台にしたるわ」


 凉子もまた、青い瞳に絶対零度の殺意を再点火させ、ショック棒と電流鞭の出力を、自らの身体が焼け焦げる限界値まで引き上げた。


「あんたみたいな美しくないバグは、わたくしの手で、一瞬でこの宇宙から消去してあげる。……さあ、かかってきなさい」


 天の雷光が、彼女の純白のスーツの周りで、嵐のように荒れ狂う。

 愛する者を人質に取られ、互いを殺すこと以外、全ての選択肢を奪われた二人の少女。

 互いの命を天秤にかけた、逃げ場のない「究極の共食い」が、黒椿の狂気的な微笑みと、壁面で苦しむサポート役の絶叫が交錯する中、今、冷たい雨の降る本能寺跡で、その絶望の幕を再び開けようとしていた。

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

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