表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生)2 ~サディスト魔女×冷徹な堕天使!相反する二人が狂気の世界を切り裂く!~  作者: たくみふじ
第二章 樹海の不協和音(ディスコード)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/67

暴走する融合(フュージョン)㈢

「混沌」の魔女と「秩序」の堕天使。最悪で最強な二人の狂気の共闘劇!

 孝子の目に映ったのは、あの忌ま忌ましいほどに完璧で、鼻持ちならなかった堕天使が、まるで壊れて捨てられたビスクドールのように、無力に、そして無様に生命力を奪われている姿だった。

 凉子の目に映ったのは、あの残忍なまでに傲慢で、常に自分を見下していた地獄の女が、まるで泥水に沈む野良犬のように、哀れに、そして醜く枯れ果てていく姿だった。


(……面白くないですわ)


 孝子の魂の、地獄の業火すらも焼き尽くせなかった最も深く、暗い場所で、たった一つの感情が、小さな火種として消えずに残っていた。


(わたくしが、いつか完全に絶望させて、極上の悲鳴を上げさせて壊すはずだった、極上のおもちゃを……! あんな、薄汚い詐欺師のバケモノに、横取りされてたまるもんですか……!)


(……ごっつい、美しくないわ)


 凉子の魂の、天の論理すらも割り切れなかった最も純粋で、強固な場所で、たった一つの論理が、絶対的なエラーコードとして消えずに残っていた。


(私が、いつかこの手で塵一つ残さず完全に浄化するはずやった、最大の『バグ』を……! あんな、意味不明なオカルト野郎に、勝手に消去されてなるもんか……!)


 それは、決して友情ではない。共感でも、助け合いの精神でもない。

 互いへの、絶対的なまでの「殺意」と「強烈な執着」。

 あいつを殺すのは、自分だ。他の誰にも、あいつの息の根を止める権利など与えない。

 その、あまりにも強大で、身勝手で、歪みきった強烈な負の感情だけが、『虚無』の概念攻撃すらも強引に跳ね返す、唯一にして最強の「自我のアンカー」となったのである。


「「わたくし(私)の獲物えものに、勝手に手を出すな(出さんで)ェェェェッ!!」」


 二人の少女の、魂の底からの絶叫が、地下要塞にビリビリと空気を震わせて響き渡った。

 次の瞬間、絡みついていた『飢餓』の黒い触手が、二人の内側から爆発的に膨れ上がったエネルギーによって、メチャメチャに千切れ飛んだ。

 二人の魂が、互いへの「拒絶」と「憎悪」を最強の触媒にして、最悪の形で、完全に暴走・共鳴したのだ。


「なっ……何事だ!? 虚無の支配を、自力で破っただと!?」


 キジマが、生まれて初めて予測不能な事態に遭遇し、目を見開いて後ずさった。

 孝子の身体から、地獄の混沌(カオス)たる、赤黒い業火のオーラが巨大な火柱となって噴き出した。

 凉子の身体から、天の秩序(コスモス)たる、青白い雷光のオーラが凄まじい竜巻となって噴き出した。

 二つの、決して交わるはずのない力が、互いを強烈に反発し合いながらも、その反発力すらも巻き込んで、巨大な一つの螺旋(らせん)を描き始めたのだ。


「「おおおおおおおおおぉぉぉッ!!」」


 二人の少女を中心に、赤と青の極太の光の柱が、要塞の天井を突き破るほどの勢いで発生した。

 それは、地獄の炎が天の雷を(まと)い、天の雷が地獄の炎を無尽蔵の燃料とする、宇宙の法則を完全に無視した、全く新しい未知のエネルギーの塊。

 孝子の「無限の苦痛を与える」力と、凉子の「瞬時に消滅させる」力が、最悪の形で、足し算ではなく、掛け算となって融合した。

 それは、「相手に極限の苦痛を永遠に与え続けながら、同時にその存在を根源から瞬時に消し去る」という、完全に矛盾した、しかし絶対的な破壊力を持つ、新たなる混沌の力――『混沌の雷火』であった。


「こ、これは……『神託』から与えられた計算データに、ない……! 馬鹿な、こんなデタラメな力が存在していいはずが……!」


 キジマが、慌てて背後の『飢餓』と『虚無』の力を最大に出力し、その巨大な赤と青の竜巻を抑え込もうと両手を突き出す。

 だが、遅すぎた。

 赤と青が入り混じった、直視することすらできないほどに眩い『混沌の雷火』の奔流が、二人の番人を、そして祭壇に立つキジマ本人を、正面から容赦なく直撃した。


「グボァァァァァァァァァァッ!!」


 地獄の番人二柱は、神話クラスの概念体でありながら、その予期せぬ矛盾した破壊エネルギーの直撃に霊体を引き剥がされ、この次元に存在を維持できずに、断末魔の悲鳴を上げて一時的に消滅した。

 キジマ本人もまた、融合した力の直撃を受け、純白のローブを瞬時に灰に変えられ、祭壇から数十メートル後方のコンクリートの壁へと無様に吹き飛ばされた。彼もまた、その一撃で右半身に致命的な大火傷を負い、右腕を肩から完全に喪失して血の海に沈んだ。


『――凉子様! 限界です、これ以上その力を使えば、貴女の魂の構造そのものが崩壊します! 退避ルートの確保は完了しました! 全速力で離脱を!』


 樹海入り口の移動ラボから、亨の悲痛な叫びが通信機に響く。


「お嬢様! 今です! 早く逃げなせえ!」


 ガーディもまた、この千載一遇の好機を逃さず、地下要塞の緊急脱出路の重厚なロックを呪詛で破壊し、外へと続く道を開いた。


「……チッ!」


 孝子は、暴走した力の強烈な反動と余波に、自らもよろめき、咳き込みながら忌ま忌ましげに舌打ちをした。


「……ごっつい、美しくない……!」


 凉子もまた、自らの魂が、地獄の不潔な混沌に汚染されたかのような強烈な不快感と吐き気に、美しい顔を激しく歪めていた。

 二人は、互いを殺してやりたいほどに憎しみに満ちた目で一瞬だけ睨み合うと、重傷を負って瓦礫の中で痙攣しているキジマにとどめを刺すことも忘れ、それぞれのサポート役が示した、全く別々の方向の脱出路へと、全速力で走り出した。

 彼女たちが走り去った後、地盤が崩壊し、コンクリートの天井が次々と崩れ落ちていく地下要塞の奥深くから、右腕を失ったキジマの、苦痛と、それ以上の異常な歓喜が入り混じったような、狂気の笑い声が響き渡った。


「フフフ……ハハハハハ! 成功だ……! これこそが、これこそが『神託』が望まれた、相反する二つの理が交わった、新たなる『神の力』だ……!」


 樹海の入り口、ドライブインの廃墟。

 夜明け前の白み始めた空の下、それぞれ別々の車に乗り込んだ二つのチームは、互いに一言も言葉を交わすこともなく、東の横浜と、西の神戸、それぞれの日常へと猛スピードで帰還していく。

 横浜へと向かう車の後部座席で、孝子は、自らの右手を見つめ、微かに震えていた。

 その白魚のような美しい指先に、青い電撃の残滓が、パチパチと微かに残っている。


(……あの力……。あの、忌まわしいほどに冷たくて、無機質で、清浄な力……。わたくしの中に、入ってきてしまった……)


 自分の魂が、あの憎き堕天使の秩序によって「汚された」という事実が、彼女の誇り高い精神を激しく乱していた。

 神戸へと向かうステルス車の中で、凉子は、純白の戦闘スーツの右腕に残った、赤い炎の醜い焦げ跡を、強烈な嫌悪に満ちた目で見つめ、爪が食い込むほどに拳を握りしめていた。


(……あの熱……。あの、反吐が出るほどに野蛮で、感情的な混沌の熱……。私の完璧な論理の内に、侵入しよった……)


 自分の完璧なシステムが、あの下劣な魔女の混沌によって「致命的なバグを起こされた」という事実が、彼女の冷徹な理性を激しく揺さぶっていた。

 互いの力が混じり合った、あの未知で絶対的な破壊の感覚。

 それは、二人にとって最強の切り札となり得る力であると同時に、自らの美学と存在理由そのものを根底から否定し、汚染する、最大の「禁忌」であった。

 そして、謎のブローカー『神託(オラクル)』の真の目的――「混沌と秩序、二つの力を極限状態で強制的に融合させ、新たなる混沌(カオス)の神をこの次元に降臨させるためのデータ収集」こそが、彼らの壮大な実験の全てであったということを、二人の少女は、まだ知る由もなかったのである。

 二人の少女は、最悪の形で、互いの存在を、その魂の最も深い場所に、永遠の傷跡として深く刻み付けられてしまったのだった。

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ